鬼谷で執り行われる顧湘(グー・シアン)と曹蔚寧(ツァオ・ウェイニン) の盛大な婚礼。誰もが二人の未来を祝福するはずだったその日は、思いもよらぬ人物の裏切りによって、一瞬にして血塗られた惨劇の舞台へと変わります。鬼谷に鳴り響く鼓の音は、江湖全体を巻き込む巨大な陰謀の始まりを告げる合図でした。愛する者たちを襲う突然の悲劇に、溫客行(ウェン・コーシン)と周子舒(ジョウ・ズーシュー)は絶体絶命の危機に直面します。幸せの絶頂から突き落とされた登場人物たちの運命と、明らかになる黒幕の存在。物語が大きく動く、衝撃のエピソードです。

「山河令」あらすじネタバレ35話

今回はハンカチ必須、いや、バスタオルを用意した方がいいかもしれない…。幸せの絶頂から地獄の底へ突き落とされる、あまりにも過酷なエピソードです。

幸せが一転、血塗られた婚礼

鬼谷での顧湘(グー・シアン)と曹蔚寧(ツァオ・ウェイニン) の婚礼の日。誰もがこの日を祝福していました。そこへなんと、曹蔚寧(ツァオ・ウェイニン) の師匠である清風剣派の莫懐陽(モー・ホワイヤン)が弟子を連れて現れます。曹蔚寧(ツァオ・ウェイニン) は師匠が許してくれたのだと大喜び。顧湘(グー・シアン)も、これでやっと堂々と夫婦になれると笑顔を見せます。

しかし、その笑顔は一瞬にして凍りつきました。莫懐陽は顧湘(グー・シアン)を妖女と罵り、曹蔚寧の純粋な愛を踏みにじります。生涯、阿湘を裏切りませんと師匠に誓う曹蔚寧。その覚悟を褒めるかのように彼の顔を撫でた莫懐陽の手が、次の瞬間、無慈悲にも曹蔚寧の首をへし折ったのです。

愛する人が腕の中で息絶え、顧湘の絶叫が鬼谷に響き渡ります。しかし、これは惨劇の序章に過ぎませんでした。莫懐陽の合図で清風剣派の弟子たちは祝い客である鬼衆に襲いかかり、さらに谷の外に潜んでいた江湖の各門派もなだれ込んできて、鬼谷は一瞬にして血の海と化します。

散りゆく命、復讐の連鎖

涙を拭い、復讐の鬼と化した顧湘は莫懐陽に斬りかかりますが、無情にも斬りつけられ重傷を負ってしまいます。そこへ駆けつけたのが、我らが溫客行(ウェン・コーシン)。愛する妹が血の海に倒れているのを見て、彼の怒りは頂点に。

戦いは激化し、柳千巧(リウ・チェンチャオ)は憎き于丘烽(ユー・チウフォン)を討ち取りますが、自身もまた背後から刺され、その生涯を閉じました。

この地獄絵図を仕組んだのは、なんと蝎王(さそりおう)でした。彼は高みの見物を決め込み、おぞましい薬人軍を投入。鬼衆も江湖の門派も、まとめて始末しようというのです。

絶体絶命の中、莫懐陽は顧湘を人質に取り、溫客行(ウェン・コーシン)に武庫の鍵と琉璃甲を要求します。溫客行(ウェン・コーシン)が応じようとしたその時、薬人軍の接近に焦った莫懐陽は顧湘を投げ捨てて逃亡。

溫客行に抱きかかえられた顧湘は、尽きかけていく命の灯火の中で兄さん、私の代わりに曹兄さんの仇を討って…と最後の願いを託し、静かに息を引き取りました。溫客行は愛する妹と、その夫となった青年の亡骸を並べ、彼女の頭にそっと鳳冠を載せるのでした。その悲しみは、見ているこちらの胸を張り裂けさせます。

鬼神と化した溫客行、そして知己の覚悟

怒りと悲しみの全てを力に変えた溫客行は、逃げる莫懐陽を追跡。壮絶な死闘の末、その両目を潰し、とどめを刺して顧湘の仇を討ちました。しかし、溫客行自身も深手を負い、倒れ込んでしまいます。

そこへ現れた蝎王(さそりおう)が莫懐陽の懐から琉璃甲を奪い、溫客行に手をかけようとした瞬間、周子舒(ジョウ・ズーシュー)が颯爽と登場。彼の剣が蝎王(さそりおう)の喉元に突きつけられます。周子舒(ジョウ・ズーシュー)は琉璃甲を渡す代わりに溫客行の身柄を要求。蝎王はその取引に応じ、周子舒(ジョウ・ズーシュー)は意識を失った溫客行を抱えてその場を去るのでした。

その後、大巫(ダーウー)の助けで顧湘と曹蔚寧の亡骸は手厚く葬られます。しかし、周子舒の様子がおかしいことに気づいた大巫が脈を診ると、驚愕の事実が発覚します。周子舒は、力を取り戻すために自ら体内の七竅三秋釘をすべて抜いていたのです。それは、己の命を削る行為。周子舒は残り少ない命を懸けて、晋王(しんおう)の陰謀を阻止する覚悟を決めていたのでした。

『山河令』第35話の感想

このエピソードは、物語全体の中でも特に感情を激しく揺さぶる回でした。顧湘と曹蔚寧の純粋な愛が、最も幸せであるべき瞬間に無残に踏みにじられる様は、あまりにも痛ましく、言葉を失います。特に、師匠に認められたと信じた曹蔚寧の喜びが一瞬で絶望に変わるシーンは、本作屈指の悲劇的場面と言えるでしょう。

しかし、この悲劇は単なる絶望だけを描いているわけではありません。顧湘の最期の願いを受け、復讐の鬼神と化す溫客行の姿は、彼の深い愛情の裏返しであり、その怒りと悲しみには心を打たれます。そして、どんな状況でも溫客行を救うために現れ、己の命さえも顧みない周子舒の行動は、知己という二人の絆の究極の形を見せてくれました。

多くの命が失われ、物語は取り返しのつかない領域へと突入しましたが、それによって主要人物たちの覚悟と関係性がより一層際立ち、物語の核心へと迫っていく重要な転換点となった回でした。

つづく