妖化の危機が天都城全土を覆う中、文瀟(ぶんしょう)は民を救うため、自らの命を懸けた究極の術を使う決意をします。一方、卓翼宸(たくよくしん)と趙遠舟(ちょうえんしゅう) もまた、逃れられない過酷な宿命と向き合い、重大な選択を迫られていました。愛する者、そして守るべき天下万民のために、彼らが最後に選んだ道とは。それぞれの想いが交錯し、悲しくも美しい愛と犠牲の物語が、ついに完結します。
「大夢帰離~明かせぬ想い、宿命の朱~」あらすじネタバレ最終回・34話
ついに迎えた最終回。それぞれの想いと宿命が交錯し、物語は誰も予想しなかった結末へと突き進みます。
あまりにも哀しい別れ、白玖(はくきゅう)の微笑み
物語は、卓翼宸(たくよくしん)が崇武営の地牢に駆けつけるシーンから始まります。そこで彼が目にしたのは、変わり果てた白玖(はくきゅう)の姿でした。いつも怯え、暗闇を怖がり、兄のように慕ってくれた幼い少年。その白玖(はくきゅう)が、命を賭して卓翼宸(たくよくしん)を守り、すべての闇を払い除けてくれたのです。白玖の顔には安らかな微笑みが浮かび、その手には卓翼宸(たくよくしん)から贈られた鈴が固く握りしめられていました。きっと、最期の瞬間に敬愛する彼の姿を思い浮かべ、大きな力をもらったのでしょう。卓翼宸は張り裂けそうな心を抑え、自らのマントでそっと白玖を包み込むと、その亡骸を抱きしめ、静かに崇武営を後にするのでした。
父の愛と決断、文瀟(ぶんしょう)の涙
一方、父である范瑛(はんえい)は体内の妖力に完全に支配され、娘の文瀟(ぶんしょう)の首を締め上げていました。文瀟(ぶんしょう)が必死に呼びかけると、その声に一瞬我に返った范瑛。その隙をついて文瀟は父を押さえつけますが、妖力に蝕まれ苦しむ父の姿に涙を止められません。その一粒の涙が范瑛の瞳に落ちた瞬間、彼は正気を取り戻しました。
文瀟は白澤の神力が父を救ったのだと信じましたが、范瑛はそれが一時的なものに過ぎないと悟っていました。彼は文瀟に、自分にかまわず天都の民を救うよう諭します。そして、文瀟がためらうのを見かねた范瑛は、再び妖力が暴走する中、自らの内丹を破壊。娘に民を救う使命を託し、そして自分が誰かを傷つける前にと、自ら命を絶ち、魂は霧散してしまったのです。
趙遠舟(ちょうえんしゅう) の覚悟と、避けられぬ宿命
父を失い、悲しみにくれる文瀟の元に、趙遠舟(ちょうえんしゅう) が現れます。天都の民は皆昏睡状態にあり、このままでは目覚めた時に妖と化してしまう絶体絶命の状況でした。文瀟は、白澤神女に伝わる最後の術帰離を使い、自らの神力を雨に変えて人々を救う覚悟を決めていました。
しかし、趙遠舟(ちょうえんしゅう) はそれを止め、彼女に一つの腕輪を贈ります。自分の代わりに、永遠にそばにいると、まるで最後の別れを告げるかのような彼の言葉に、文瀟は不安を覚えます。
趙遠舟は、衝撃の真実を語り始めます。白澤の神力の源は、この世の負の感情である戾気(れいき)であり、かつて応龍(おうりゅう)が予言した通り、自分は雲光剣によって命を落とす運命にあると。そして、その死こそが白澤令を循環させ、世を救う唯一の方法なのだと。文瀟の反対を押し切り、彼は法術で彼女の動きを封じ、悲壮な決意を胸にその場を去るのでした。
究極の選択、愛と犠牲の果てに
趙遠舟が向かった先は、白玖の亡骸のそばで悲嘆に暮れる卓翼宸のもとでした。趙遠舟は静かに語りかけます。英磊(えいらい)が命を賭して白玖を救い、白玖と離崙(りろん)が卓翼宸を救ったように、今度は自分が天下万民を救う番なのだと。そして卓翼宸には、かつて応龍(おうりゅう)を斬った氷夷(ひょう い)と同じ、愛する者を手にかけなければならない自責と苦しみを背負う宿命があるのだと告げます。
あまりにも過酷な運命に、卓翼宸は生きた心地がしません。しかし、趙遠舟の覚悟に満ちた眼差しを受け、彼はついに剣を手に取ります。
その頃、術が解けた文瀟が部屋に駆け込むと、そこにはすでに倒れている趙遠舟の姿が。文瀟が抱き起こすと、彼は微笑みながら、彼女の体内にあった全ての毒を自分が吸収したことを明かします。私のために涙を流さないで。その涙は、民を救うために使ってくれそう言い残すと、彼の体は光の粒子となり、天へと昇っていきました。
趙遠舟の尊い犠牲によって、都の人々は妖化の危機から救われました。人々はまるで長い夢から覚めたかのよう。誰かがその夢を守るために命を捧げたことなど知る由もありません。かつて文瀟は趙遠舟に尋ねました。もし生まれ変わるなら何になりたい?と。彼は答えました。雨になりたい。雨が降るたびに、君のそばにいるよと。
『大夢帰離~明かせぬ想い、宿命の朱~』最終回 第34話の感想
壮大な物語の終着点は、決して手放しで喜べるハッピーエンドではありませんでした。しかし、そこには深い感動と静かな救いが確かに存在していました。主要な登場人物たちが、愛する者や民のために自己犠牲という最も重い選択をする姿は、胸が締め付けられる思いです。特に、趙遠舟が自らの死をもって世界を救済し、同時に文瀟の命をも救うという結末は、彼の愛の深さを物語っており、涙なしには語れません。また、その引き金を引かねばならなかった卓翼宸の苦悩も、痛いほど伝わってきました。悲劇的な出来事が続く中で、それでも残された者たちは前を向き、その犠牲の上に成り立つ未来を生きていく。視聴後、すぐには言葉が出ないほどの重厚な余韻が残る、見事な最終回だったと感じます。