宿敵・温宗瑜(おんそうゆ)との決戦は最終局面へ。妖力を失い絶体絶命の趙遠舟(ちょうえんしゅう) たちを救うため、仲間の一人、離崙(りろん)が自らの命を懸けた壮絶な作戦に打って出ます。一方、温宗瑜の隠された秘密に気づいた白玖(はくきゅう)は、彼の力の源を断つべく、一人で危険な結界へと足を踏み入れます。離れた場所で繰り広げられる二つの死闘。仲間を想うそれぞれの覚悟が、絶望的な戦況に一筋の光をもたらす、手に汗握るエピソードです。

「大夢帰離~明かせぬ想い、宿命の朱~」あらすじネタバレ33話

悲しき姉弟の結末

物語は、白玖(はくきゅう)によって幻境から現実に引き戻された裴思婧(はいしせい)のシーンから始まります。彼女の目に飛び込んできたのは、もはや虫の息となった弟・裴思恒(はいしこう)の姿でした。傍らには冷たい人形の腕が転がっており、彼がもう二度と蘇らないことを物語っています。

姉さんを守る鎧になるんだ。鎧はいつか壊れる運命なんだよ…

かつて弟が口にした言葉が、裴思婧(はいしせい)の胸に突き刺さります。大切な姉を守るため、自らの命を鎧として捧げた裴思恒。その悲しい覚悟に、胸が締め付けられますね。

離崙(りろん)、命を懸けた最後の策

その頃、趙遠舟(ちょうえんしゅう) 、そして離崙(りろん)の三人は、宿敵・温宗瑜(おんそうゆ)を前に絶体絶命のピンチに陥っていました。特に妖力を失った趙遠舟(ちょうえんしゅう) は、立っているのもやっとの状態です。

この状況を打開するため、離崙(りろん)が驚くべき作戦を口にします。彼の正体は槐(えんじゅ)の木の妖怪。その身を囮にして温宗瑜が操る不燼木(ふじんぼく)の力をすべて引き受け、敵が消耗した隙を卓翼宸(たくよくしん)に突かせるという、まさに命を懸けた作戦でした。

やめろ!と叫ぶ卓翼宸(たくよくしん)を制し、離崙は自らの妖力を半分ずつ、卓翼宸と趙遠舟(ちょうえんしゅう) に分け与えます。槐の力と氷夷(ひょう い)の力が合わされば、奴を倒せるはずだと。そして、親友でありライバルでもあった趙遠舟には、そんな半死半生の姿は見ていられないと、最後の友情を示しました。

準備を終えた離崙は、残ったわずかな力で空へと舞い上がり、無数の槐の枝を広げます。案の定、温宗瑜は不燼木の力で猛攻撃を仕掛け、離崙の体はみるみるうちに燃え上がっていきます。彼はその身を焦がしながらも、故郷である大荒を守るという誓いを、命と引き換えに果たしたのでした。

不死身の温宗瑜

離崙の犠牲を無駄にはしない。趙遠舟は卓翼宸の翼を解放し、二人は最後の決戦に挑みます。趙遠舟の分身の助けも得て、卓翼宸の刃はついに温宗瑜の弱点である肘の内丹を捉えました!

温宗瑜は断末魔と共に灰と化し、誰もが勝利を確信した、その時でした。崑崙山から脱出しようとする卓翼宸の前に、見えない結界が立ちはだかります。そして、死んだはずの温宗瑜の声が響き渡るのです。

私は鳳凰の涅槃の如く、この不燼木の灰の中から何度でも蘇る

その言葉通り、灰の中から伸びた手が卓翼宸の喉を掴み、再び絶望の淵へと突き落とします。

逆転の鍵を握る白玖(はくきゅう)

一方、地下牢にいた白玖(はくきゅう)は、温宗瑜が決して誰も近づけなかった結界を発見します。甄枚(しん ばい)が死に際に遺した温宗瑜は灰から蘇る不死身の体を手に入れたという言葉を思い出し、彼女は卓翼宸を救うため、たった一人で結界を破ることを決意します。

温宗瑜が灰を吸収し、みるみる力を取り戻していく中、卓翼宸もまた最後の賭けに出ます。自分と離崙から受け継いだ妖力のすべてを趙遠舟に託し、結界ごと自分を攻撃するよう頼むのです。結界が壊れれば自分も死ぬ。その非情な選択に、趙遠舟は引き金を引けずにいました。

その瞬間、地下牢で信じられないことが起こります。白玖が結界による腐食の痛みに耐えながら祭壇にたどり着き、温宗瑜復活の源である香炉の灰をぶちまけたのです!

それと同時に、趙遠舟も渾身の力を解放。爆発の後、趙遠舟は二人とも死んでしまったと絶望しますが、目の前には無傷の卓翼宸が立っていました。温宗瑜の復活を阻止した者がいる…。二人の脳裏に、一人の人物が浮かび上がります。そう、白玖です。

趙遠舟は、白玖からお守りとして渡されていた畢方(ひっぽう)の羽を卓翼宸に託し、彼女の元へ急ぐよう促します。白玖の安否は?そして、今度こそ温宗瑜を完全に倒すことはできたのか?物語は、新たな謎を残して幕を閉じました。

『大夢帰離~明かせぬ想い、宿命の朱~』第33話の感想

今回のエピソードは、離崙の生き様に深く心を揺さぶられました。彼が自らの命を賭して仲間と世界を守ろうとする姿は、単なる戦闘シーンを超えた、キャラクターの魂の叫びのように感じられました。特に、趙遠舟と卓翼宸に力を分け与える場面での彼の言葉は、彼が抱いてきた友情の深さを物語っており、非常に印象的です。また、絶望的な状況下で、別の場所で戦っていた白玖の行動が逆転の鍵となる構成も見事でした。それぞれのキャラクターが自分の役割を全うしようと必死に行動し、その想いが交錯することで物語に強い結束感と感動が生まれています。力だけでなく、知恵と勇気、そして仲間を信じる心が勝利をたぐり寄せた、見応えのある回でした。

つづく