あらすじ
嵇煬(けいよう)は、仰月宗に残ることを決めた。南顔(なんえん)が例の丹薬を作り終えるまで、そばにいるらしい。
彼は霊犀印(れいさいいん)の力で、南顔(なんえん)の心の声が聞こえるようになった。それをいいことに、とんでもない嘘をつく。南顔(なんえん)に呪いをかけたと言うんだ。俺から10里以上離れたら、お前の体は爆発するなんて脅し文句までつけて。
南顔はすっかり信じ込んで、一睡もできなかった。次の日、穆戦霆(ぼくせんてい) に助けを求めた。彼は南顔のために呪いを解こうと張り切る。でも、そのやり方がどう見ても怪しい祈祷にしか見えない。南顔は呆れて、彼に頼るのをやめた。
その後、穆戦霆(ぼくせんてい)とばったり会う。彼は嵇煬(けいよう)の正体に気づかない。それどころか、自分と同じ帝君・少蒼(しょうそう)の熱烈な信者だと勘違いする。嵇煬は話を合わせ、見事な演技で信者のフリをした。南顔は、その変わり身の早さにただ驚くばかりだった。
ネタバレ
穆戦霆(ぼくせんてい) が去った後、嵇煬の態度は元に戻った。彼は南顔に釘を刺す。もう呪いを解こうなんて考えるな。穆戦霆の命が惜しければ、大人しく俺の言うことを聞け。南顔は、帝君・少蒼が世間で大魔頭と恐れられていることを思い出す。彼女は逆らえなくなった。嵇煬は、そんな彼女の反応を見て、からかいが成功したと心の中で喜んでいた。
そんな中、南顔に恨みを持つ符浪(ふろう)が、彼女が大切に育てていた萆荔(ひれい)の木を全てダメにしてしまう。南顔は悲しみに暮れた。自分の力で木を救おうとしたが、どうにもならなかった。
その様子を見ていた嵇煬は、南顔の心の声を聞く。彼女の母親を思う気持ちに心を動かされた。彼はこっそりと術を使い、枯れた萆荔の木を生き返らせた。南顔が振り返ると、少し離れた場所に嵇煬が立っていた。彼女は彼に心からの笑顔を見せた。感謝の気持ちでいっぱいだった。
場面は変わり、峡谷の市場に浮かぶ一艘の画舫(がほう)。ここの主は蝶綰(ちょうわん)という女。彼女は天邪道の長老で、情報屋だ。美しい男たちを周りにはべらせている。
そこに狐族の太子、殷琊(いんや) が現れる。彼は自分の美しさを武器に蝶綰に取り入った。若さを保つ回霊果を贈り、穢谷(わいこく)で生き延びる方法を聞き出すのが目的だ。
蝶綰が言うには、穢谷の本当の恐ろしさは地形ではない。陰祝(いんしゅく)という化け物がいることだ。陰祝は人の顔と魔物の体を持ち、生き物の精気を吸う。一度狙われたら逃げられない。谷に入るなら、気配を消す宝物が必須だという。殷琊(いんや) はその話から、妖族の至宝銀蛟珠(ぎんこうじゅ)を思い浮かべた。
蝶綰が殷琊(いんや) を引き留めようとした瞬間、彼の姿は消えていた。手土産の回霊果は、ただの狐の毛に変わっていた。蝶綰は一杯食わされたことに気づき、怒りに震えた。
一方、仰月宗では嵇煬が南顔に新しいルールを課していた。毎朝の挨拶と、豪華な食事の用意だ。南顔は不満だったが、彼の力を考えると逆らえない。その夜、嵇煬は萆荔の木を壊した罰として、符浪を謎の力で襲い、恐怖のどん底に突き落とした。
次の日、嵇煬は南顔を無理やり市場へ連れ出す。彼は偃甲蝶(えんこうちょう)というカラクリの蝶に興味を示した。南顔は、木を助けてくれたお礼として、なけなしの120霊石でそれを買う。すると嵇煬は、その偃甲蝶をお前の護衛だと言って南顔に渡した。南顔はそこで初めて気づく。彼は自分のためにプレゼントを選んでくれていたのだと。
感想
今回の嵇煬、やってることが小学生みたいで笑える。俺から離れたら爆発するぞって、どんな呪いだよ。でも、そのおかげで二人がずっと一緒にいることになるんだから、うまい口実を考えたもんだ。南顔が本気で信じちゃうところも、彼女の素直さが出てていい。穆戦霆のポンコツな呪い解除シーンは、完全にコメディパートだったな。彼が出てくると話が明るくなる。
でも、ただの意地悪じゃないのが嵇煬のいいところだ。南顔の親孝行な心に打たれて、こっそり木を生き返らせてあげるなんて、優しすぎるだろ。市場で偃甲蝶を買わせる流れも最高だった。遠回しにプレゼントするなんて、不器用なりの愛情表現なんだろうな。こういうツンデレっぷりが、見ていて飽きない。
新しく出てきた狐族の殷琊も気になる存在だ。自分の美貌をフル活用して目的を達成するあたり、なかなかの策士。彼が物語にどう絡んでくるのか、すごく楽しみだ。全体的に、コメディとシリアスな伏線がうまく混ざり合って、どんどん面白くなってきた回だった。
つづく