愛する人を想うとき、人はどこまで強くなれるのでしょうか。第9話は、離れ離れになったギルチェとジャンヒョンが、それぞれの場所で想像を絶する困難に立ち向かい、逞しく成長していく姿が描かれました。
物語は、ギルチェが見る切ない夢から始まります。夢の中のジャンヒョンは、心をくれるなら瀋陽には行かないと囁きます。ギルチェは必死に行かないで、私の心を差し上げますと懇願しますが、目を覚ますとそこには彼の姿はなく、頬を濡らす涙だけがありました。
その頃、本物のジャンヒョンは遠い異国の地、瀋陽でスパイの嫌疑をかけられ投獄されていました。しかし、清の皇帝ホンタイジは彼の価値を見抜き、処刑するどころか釈放。そして、逃亡した朝鮮人捕虜を捕らえるという、あまりにも酷な任務を与えるのでした。味方でも敵でもない、その立場を利用して生き延びるしかないジャンヒョン。彼の胸には、常にギルチェの面影がありました。
一方、漢陽ではギルチェが一家の危機に瀕していました。戦後の混乱で食うにも困る日々。そんな中、偶然再会した武官ウォンムの協力を得て、使われなくなった鍛冶場で青銅の器を作るという商売を思いつきます。かつては恋にしか興味のなかったお嬢様が、泥にまみれ、男たちの侮蔑の視線にも耐えながら、必死に事業を軌道に乗せようと奮闘します。その姿に心打たれた親友のキョン・ウネも、彼女を手伝い始めます。
ギルチェの知恵はそれだけにとどまりません。完成した器が盗まれるという危機に見舞われながらも、彼女は残った器を元手に、妓生たちから清の兵士が欲しがる品物の情報を聞き出します。かつてジャンヒョンが教えてくれた商売の極意――敵と商売をすることを思い出し、清の兵士に生姜を高く売りつけて米を手に入れることに成功。その米を職人たちに分け与えることで彼らの信頼を勝ち取り、ついに事業を安定させるのでした。
さらにギルチェは、流刑になったヨンジュンを救うため、有力者であるチャンチョルに取り入るなど、その行動力と知略は留まるところを知りません。
瀋陽のジャンヒョンもまた、その知略で皇太子を助け、清の重臣ゴルテと手を組んで商売を始めます。そしてついに、皇太子が一時的に朝鮮へ帰国する許可を取り付け、自身もまた漢陽へ帰る機会を得るのでした。彼はリャンウムにギルチェに、俺が帰ると伝えてくれと託します。
漢陽では、ギルチェと彼女を支えるウォンムの仲が噂になっていました。そしてウォンムはついにギルチェに求婚します。しかし、ギルチェは彼の想いを断り、ジャンヒョン様は死んだというウォンムの言葉に心を痛めながらも、夜空を見上げ、遠い未来で再会する日まで強く生きることを誓うのでした。
その翌日。ギルチェの家に婚礼用品を売る商人がやってきます。家の外に出てきたギルチェが私が花嫁よと告げた、まさにその瞬間。彼女の視線の先に立っていたのは、死んだはずの男、イ・ジャンヒョンでした。時が止まったかのような二人の再会で、第9話の幕は閉じます。
『恋人~あの日聞いた花の咲く音~』第9話の感想
今回のエピソードで最も心に響いたのは、ユ・ギルチェという女性の驚くべき変貌と、その内面からあふれ出る強さでした。かつては美しい着物をまとい、男性たちの注目を集めることだけが世界のすべてだった彼女が、今や家族と仲間を守るために自ら事業を興し、泥と汗にまみれながらも決して屈しない姿には、胸を打たれずにはいられません。特に、清の兵士を相手に商売を成功させる場面では、ジャンヒョンから学んだ知恵を自分の力として昇華させており、彼女の成長がはっきりと見て取れました。
一方で、ジャンヒョンもまた異国の地で苦悩しながら、知恵と度胸で生き抜いています。二人がそれぞれの場所で逞しくなり、互いを想う心がその原動力となっている構図が非常に巧みに描かれていました。ラストの再会シーンは、これまでの苦労が報われるかのような劇的な演出で、二人の運命が再び交差する瞬間を見事に捉えていました。
つづく