ついに悪の根源、チョン・ナンジョンが捕らえられ、多くの視聴者が「これで一件落着か!」と胸をなでおろしたことでしょう。しかし、このドラマはそんなに甘くありませんでした。第31話は、一筋縄ではいかない権力の恐ろしさと、それに翻弄される人々の姿が描かれた、息をのむ回となりました。
ついに捕らえられたチョン・ナンジョン!しかし…
疫病をでっちあげ、薬草を買い占めて暴利をむさぼった罪で、チョン・ナンジョンとその一味は義禁府(ウィグムブ)に捕らえられます。厳しい尋問と拷問が始まりますが、ナンジョンは「私は知らない」の一点張り。そのふてぶてしい態度は、さすが稀代の悪女といったところです。
夫のユン・ウォニョンは慌てて妻に面会しようとしますが、門前払い。権勢を誇ってきた彼も、王命の前ではなすすべがありません。
一方、オクニョは、王の密使だと信じている明宗(ミョンジョン)と再会します。やつれたオクニョを心配する明宗(ミョンジョン)に、彼女はついに打ち明けます。自分の母親ガピが、ユン・ウォニョンが送った刺客に殺されたという衝撃の事実を。軽率な行動は慎むようオクニョを諭す明宗(ミョンジョン)の言葉には、彼女を案じる温かさがにじみ出ていました。
新たな謎を呼ぶ「母のかんざし」
そんな中、オクニョの養父チ・チョンドゥクが、重大な告白をします。オクニョの母の形見は、実は指輪だけではなかった。青い宝石が輝く、それは見事なかんざしもあったというのです。しかし、そのかんざしは典獄署の役人だったユ主簿(ユ・ジョンヒ)の手に渡り、なんと彼が出世のためにチョン・ナンジョンに献上してしまったというのです!
なんという運命のいたずらでしょうか。母を殺したであろう女の元に、母の大切な形見がある。オクニョは母の友人だったハン尚宮に相談し、ユン・ウォニョンの娘シネを介して、そのかんざしを一時的に手に入れることに成功します。チ・チョンドゥクに見せると、間違いなく母の物だと確認が取れました。このかんざしが、オクニョの出生の秘密を解く新たな鍵となることは間違いありません。
政治取引の犠牲となった正義
さて、典獄署に収監されたチョン・ナンジョン。彼女に恨みを持つユ主簿はここぞとばかりに冷遇しますが、典獄署の署長たちは、いずれ権力の座に返り咲くことを見越してナンジョンに媚びへつらいます。この対比がなんとも滑稽でした。
そして、最悪の事態が起こります。明宗(ミョンジョン)は、母である文定(ムンジョン)王后と叔父ユン・ウォニョンとの政治取引に応じ、チョン・ナンジョンを釈放してしまうのです。明宗(ミョンジョン)は、ナンジョンの釈放と引き換えに、人事権を握る重要な役職「吏曹正郎(イジョチョンナン)」の任命権を手に入れ、今後の政権運営を有利に進めようとしたのでした。
あっけなく釈放され、屋敷に戻ったチョン・ナンジョン。彼女を出迎えるユン・ウォニョンや家族の姿を見て、無力感に打ちひしがれた視聴者も多いのではないでしょうか。
この事実を知ったユン・テウォンとオクニョは、すぐに明宗(オクニョにとっては王の密使)の元へ駆けつけます。なぜ、あれほどの罪を犯した悪人を罰しないのかと。明宗(ミョンジョン)は二人に対し、「罰するのを諦めたわけではない。延期しただけだ」と苦しい胸の内を明かします。しかし、彼の言葉は、巨大な権力の前にもろくも崩れ去った正義を目の当たりにした二人には、空しく響くだけだったのでした。
『オクニョ 運命の女』第31話の感想
悪事が暴かれ、チョン・ナンジョンが捕らえられた時には、ようやく正義が果たされるのだと安堵しました。しかし、その期待はあまりにも脆く崩れ去りました。王でさえも、母である文定(ムンジョン)王后とユン・ウォニョンが築き上げた巨大な権力の前では、思うように事が運べない。政治という名の非情な取引によって、民を苦しめた大罪人がいとも簡単に解放されてしまう現実に、深い無力感を覚えました。オクニョとユン・テウォンが直面している壁がいかに高く、厚いものであるかを改めて痛感させられます。一方で、母の形見である「かんざし」という新たな謎が提示され、物語に一層の深みを与えています。このアイテムが、今後の展開でどのようにオクニョの運命を導いていくのか、目が離せません。
つづく