まるで家族のように大切に思ってきた養父、チ・チョンドゥクが殺人容疑で逮捕されるという、衝撃的な知らせから幕を開ける第35話。オクニョの心は激しく揺さぶられます。信じられるはずもない報せに、彼女はすぐさま真相究明へと乗り出します。
被害者は、なんとあのチョン・ナンジョンの商団で資金を管理していたチン・スミョン。この事実が、事件の裏に潜む巨大な陰謀を予感させます。
一方、チョン・ナンジョンとユン・ウォニョンの一派も、オクニョとソン・ジホンが手を組み、自分たちの商圏を脅かしていることに気づき、警戒を強めていました。そんな中、自分たちの裏金管理人であるチン・スミョンが殺されたことで、彼らの間にも動揺と不協和音が生じ始めます。特に、チン・スミョンと共謀して私腹を肥やしていたミン・ドンジュ夫妻の焦りは頂点に達していました。
捕盗庁(ポドチョン)で過酷な尋問を受けるチ・チョンドゥクは、絶体絶命の危機に立たされていました。チン・スミョンと賭場でトラブルがあったこと、借金があったこと、そして事件当夜に口論していたという目撃証言まで現れ、状況は彼にとって圧倒的に不利でした。
オクニョは、宮殿で文定(ムンジョン)王后大妃から、かつて母の形見として見つけたかんざしが、先代の王・中宗(チュンジョン)が寵愛した女性に与える特別な品であったことを知らされます。自分の出生の秘密に繋がる衝撃の事実に驚きを隠せません。
時を同じくして、王は、母である文定(ムンジョン)王后大妃の権力の源泉となっている昭格署の廃止を宣言し、母子の対立は決定的なものとなります。
養父を救いたい一心で奔走するオクニョ。彼女を助けるため、仲間のチョンドゥンたちは危険を冒してチン・スミョンの家に忍び込み、裏帳簿を盗み出すことに成功します。さらに、ユン・テウォンはオクニョに、かつて朝鮮王朝に存在した「外知部(ウェジブ)」という弁護士のような存在について教えます。それは、法を知らない民に代わって訴訟を引き受け、無実を証明するために闘う者たちのことでした。
しかし、外知部は十数年前に都から追放されており、今では誰も見つけることができません。すべての道が閉ざされたかのように思われたその時、オクニョは一つの決断を下します。
捕盗庁に忍び込み、拷問で弱り果てたチ・チョンドゥクと涙の再会を果たしたオクニョ。「自分は殺していない」と訴える養父の言葉を信じ、彼女は固く誓います。
「私が、外知部になる。私がアジョシ(おじさん)を救う」と。
昭格署の役人という立場を捨ててでも、愛する養父の無実を証明するため、自らが弁護人となって巨大な権力に立ち向かうことを決意したのです。
『オクニョ 運命の女』第35話の感想
今回は、オクニョの人生における大きな転換点を描いた、非常に密度の濃い回でした。物語の冒頭から、親代わりだったチ・チョンドゥクが殺人犯として捕らえられるという衝撃的な展開に引き込まれます。彼の無実を信じ、必死に奔走するオクニョの姿には胸を打たれました。一方で、チョン・ナンジョン一派の内部で不信感が渦巻き始める様子や、王と文定(ムンジョン)王后大妃の政治的対立が激化していく様も描かれ、物語に一層の深みを与えています。様々な陰謀が複雑に絡み合う中、最後にオクニョが下した「自ら外知部になる」という決断は、彼女の強さと正義感を象徴するものでした。絶望的な状況から新たな道筋を見つけ出し、巨大な権力に挑もうとする彼女の姿は、今後の物語への期待を大きく抱かせるものでした。
つづく