いやはや、今回の『病院船』は、これでもかというくらい試練が押し寄せてきましたね…。正義を貫こうとすればするほど、事態が悪化していく展開には、思わず「そんな…」と声が漏れてしまいました。
新生児の治療の真相を明らかにするため、警察に出頭したクァク・ヒョン。彼の誠実な行動が、まさか最悪の事態を招く引き金になるなんて、誰が想像したでしょうか。この情報を掴んだ斗星(トゥソン)グループは、ここぞとばかりに病院船廃止を目論む陸上部門と手を組み、メディアを操作。あっという間に、病院船は世間から猛烈なバッシングを浴びることになってしまいます。
ネットニュースには心ない言葉が溢れ、病院船のスタッフたちは不安と悔しさで胸がいっぱい。特に、発端となった手術を執刀したソン・ウンジェは、自責の念に駆られて甲板で一人、冷たい風に当たります。そんな彼女に事務長が寄り添い、「自分の責任だ」と謝罪しますが、ウンジェは彼を責めることなく、ただ病院船がなくなることで医療を受けられなくなる島の人々を案じていました。
警察から戻ったヒョンは、待っていたウンジェと二人で市場へ。そこで野菜を売るおばさんと楽しそうに笑い合うウンジェの姿を見て、ヒョンは彼女が病院船という大きな家族にすっかり溶け込んでいることを感じ、穏やかな気持ちになるのでした。この束の間の平和が、余計に切ないんですよね…。
その夜、宿舎に集まった一同に、船長から病院船の運航停止という非情な通告が下されます。誰もが病院船を離れたくない、最後まで戦いたいと願いますが、船長と事務長は、公衆保健医であるヒョン、キム・ジェゴル、チャ・ジュニョンたちを「兵役代替服務中の身分を失い、軍に戻されれば患者に会えなくなる」と、この問題から遠ざけようとします。若者たちの未来を守ろうとする、大人たちの苦渋の決断でした。
翌朝、修理と検査のために牽引されていく病院船を、一同はただ黙って見送ることしかできません。いつまた、あの船の上でみんなと笑い合える日が来るのか…。
船長と事務長、そして看護師長は道庁へ乗り込み、知事に直談判しようとしますが、門前払い。一方、巨済(コジェ)第一病院の救急室で働くウンジェもまた、斗星グループの圧力に屈した院長のキム・スグォンから突然の解雇通告を突きつけられます。納得できず食い下がるウンジェですが、院長はすでにソウルの大韓病院から後任の医師を呼んでいました。
病院船を降りたヒョン、ジェゴル、ジュニョンは、やり場のない日々を過ごしながらも、かつての患者たちのことを気にかけていました。そんな中、ヒョンは保健所長から「遠隔診療は、お年寄りには難しくて使えない」という現実を聞かされます。それを知ったヒョンとジェゴルは、仕事終わりに往診へ向かう約束を交わすのでした。
その頃、道庁で粘り続けていた事務長の元へ、彼の妻が血相を変えて駆け込んできます。「船のことばかりで、子供はどうでもいいの!」と、息子が学校で起こしたトラブルをまくし立てる妻。しかしその直後、彼女は突然めまいに襲われ、夫の腕の中で吐血し、意識を失ってしまうのでした。
『病院船〜ずっと君のそばに〜』第35話の感想
今回は、登場人物たちの絆の強さと、それに立ちはだかる社会の理不尽さが色濃く描かれた回でした。ヒョンの正義感あふれる行動が、巨大な権力によっていとも簡単に捻じ曲げられ、彼らが大切にしてきた病院船そのものを存続の危機に追いやってしまう展開は、見ていて非常にもどかしい気持ちになりました。しかし、そんな絶望的な状況でも、誰一人として諦めていません。公衆保健医という立場を失うリスクを負ってでも患者のもとへ向かおうとするヒョンとジェゴル、未来ある若者たちを守るために自ら盾となる船長や事務長。それぞれの場所で、自分たちの信じる医療を守ろうとする姿に胸を打たれます。特に、最後の事務長の妻が倒れるシーンは衝撃的で、公私の両面から襲いかかる困難が、物語に一層の深みと緊張感を与えています。守るべきものが多すぎて、彼らがどう乗り越えていくのか、目が離せません。
つづく