病院船が廃止され、島民たちの医療は遠隔診療システムに切り替わりました。しかし、その矢先に大変な事態が発生します。病院船の皆の父親的存在である事務長の奥さんが、突然倒れてしまったのです!

解雇されたばかりのソン・ウンジェは、荷物をまとめて病院を去ろうとしていたまさにその時、救急車で運び込まれる事務長の妻に遭遇します。医師としての使命感が、彼女の足を止めさせました。すぐに病院へ引き返し、診察を始めるウンジェ。しかし、そこにキム・スグォン院長が現れ、ウンジェを制止します。後任として新しく赴任してきたミョン・セジュン医師に担当させるよう命じるのでした。院長室の机には、斗星(トゥソン)グループが投資する新しい病棟の設計図が置かれており、院長の苦しい立場がうかがえます…。

診断の結果は、劇症肝不全。一刻も早い肝移植手術が必要です。しかし、新任のミョン医師は、自身に肝移植の執刀経験がないこと(以前いたソウルの大韓病院では助手を務めていただけでした)を理由に、危険な状態の患者を転院させようと提案します。これに対しウンジェは、「今の状態で動かすのは危険すぎる」と猛反対。医師たちの意見は真っ向から対立します。

一方、クァク・ヒョン、キム・ジェゴル、チャ・ジュニョンの3人は、遠隔診療が始まった島を訪れていました。病院船の看護師たちも駆けつけ、老人たちが不慣れなパソコンを操作するのを手伝おうとしますが、システムはうまく機能せず、現地の保健所と巨済(コジェ)病院の医師を繋ぐことすらままなりません。結局、ヒョンたちが一人ひとりの患者を直接診察することに。最新技術が導入されたはずなのに、かえって多くの不便を生み出しているという皮肉な現実が、そこにはありました。

巨済第一病院では、事務長が自らの肝臓を妻に提供したいと申し出ますが、血液型が異なり移植は不可能。絶望に打ちひしがれる事務長のもとに、看護師長のピョ・ゴウンがやってきます。そして、自分の血液型が適合すること、そして生まれつき肝臓が大きいからドナーになれると告げるのです。

その頃、ウンジェは覚悟を決めていました。再び手術着を身にまとい、院長室のドアを開け、肝移植手術の執刀を強く要求します。院長がためらうその瞬間、部屋に斗星グループの会長が入ってきました。会長は冷たく言い放ちます。「手術はさせん。その患者はすぐに他の病院へ移せ」と。最大の障壁が、ウンジェたちの前に立ちはだかります。

『病院船〜ずっと君のそばに〜』第36話の感想

今回は、医療の理想と現実が非常にシビアな形で描かれた回でした。病院船という「現場」を失ったことで、二つの大きな問題が浮き彫りになります。一つは、遠隔診療という最新システムが、必ずしも患者のためになっていないという現実です。ヒョンたちが島で直面したトラブルは、機械だけでは埋められない「人の手」による医療の重要性を改めて感じさせました。もう一つは、病院経営という大きな壁です。患者の命を最優先したいウンジェの信念と、病院の未来のために大手資本の意向を無視できない院長の苦悩が痛いほど伝わってきます。そんな絶望的な状況の中、事務長の妻を救うために看護師長がドナーに名乗り出るシーンは、本作が描いてきた仲間との絆の強さを示す、感動的な場面でした。しかし、それすらも権力によって阻まれようとするラストは、理不尽さへの強い憤りを感じさせます。それぞれの正義がぶつかり合う、非常に見ごたえのあるエピソードでした。

つづく