「お母さんが、私を誘拐した犯人…?」

信じたくない言葉が、ハ・ヨンジュの心をぐちゃぐちゃにかき乱します。空港でチョ・ピルドゥから聞かされた衝撃の事実。それは、育ての母であるト・ヒョンスクが、病気の娘の治療費のためにヨンジュを誘拐し、実の親から大金を受け取ったというものでした。ピルドゥは全ての責任をヒョンスクに押し付け、強引にヨンジュを連れ去ろうとします。

「助けて!」

ヨンジュの悲痛な叫びに警備員が駆けつけ、ピルドゥは追い払われます。しかし、ヨンジュはフランス行きの飛行機には乗りませんでした。柱の陰に隠れ、悪態をつくピルドゥの姿を見つめながら、彼女は決意します。このまま逃げるわけにはいかない、真実を確かめなければ…と。

一方、ミン・チェリンは絶望の淵にいました。愛するチャ・ウニョクが、宿敵ムン・ジェサンの手下として目の前に現れたのです。ジェサンは中国の化粧品会社との大型契約をちらつかせ、チェリンに選択を迫ります。まるでチェリンをあざ笑うかのように、ジェサンはウニョクにネックレスを彼女につけるよう命令。二人の視線が、痛みと複雑な感情を宿して交錯します。その様子を楽しんだジェサンは、今度は自らネックレスをつけようとしますが、チェリンはその手を固く掴み、裏切られたような、助けを求めるような目でウニョクを見つめるのでした。

出国をやめたヨンジュは、遠くから母ヒョンスクの姿を目で追います。近所の人と楽しそうに笑う母。しかし、ピルドゥの言葉が脳裏に蘇ります。「お前はこき使われるために警察にも届けられなかった」「お前は高校も中退して、妹たちの学費のために必死で働いてきたじゃないか」。母の笑顔を見るたびに、ヨンジュの心には疑念という名の毒が広がっていきました。信じたい、でも信じられない…。その葛藤に苦しむヨンジュは、ついに警察署の前に立ちますが、「母が誘拐犯です」と通報することはできず、その場を走り去るのでした。

その頃、チェリンは会社の未来のために、私情を殺してジェサンと契約を結ぶことを決意します。ライバル社に契約を奪われるわけにはいかない。その一心でジェサンの元へ向かいますが、ウニョクは「行くな、また地獄に落ちるだけだ」と必死に止めます。しかし、チェリンは彼の言葉に耳を貸さず、二人の心は無情にもすれ違ってしまいました。

心労がたたり、病に倒れてしまったヨンジュ。そんな彼女の前に、偶然にもやけ酒をあおっていたピルドゥが現れます。一方、ピルドゥは最後の切り札として、チェリンの父にすべてを暴露しようと会社に乗り込みますが、そこでウニョクと鉢合わせに。ウニョクは過去の過ちを盾に脅迫してくるピルドゥに札束を渡し、その場をなんとか収めるのでした。

それぞれの秘密と嘘が絡み合い、登場人物たちは逃れられない運命の渦へと、さらに深く飲み込まれていきます。

『かくれんぼ』第27話の感想

今回のエピソードは、登場人物それぞれの心の奥底にある痛みが、静かに、しかし鋭く描かれていた回でした。特に印象的だったのは、信じていた母への疑念に苛まれるヨンジュの姿です。母の笑顔を見るたびに深まる疑心暗鬼と、それでも母を信じたいと願う心の叫びがひしひしと伝わってきて、胸が締め付けられました。

一方で、愛する人の裏切り(に見える行動)を目の当たりにしながらも、会社のために屈辱的な契約を結ぼうとするチェリンの決断もまた、彼女の強さと脆さを浮き彫りにしています。そして、その間で苦悩するウニョク。彼の沈黙と苦しそうな表情の裏には、どれほどの覚悟が隠されているのでしょうか。

悪役であるジェサンの存在が、物語の不穏さを一層際立たせています。彼の策略によって、登場人物たちの絆は引き裂かれ、それぞれが孤独な戦いを強いられていく。重厚な人間ドラマが、より深みを増したように感じます。

つづく