19-20話 逆転の一手と新たな火種

物語は、元敬王后(ウォンギョン)が国に蔓延する不正を夫である王に知らせるため、密かに手紙を寺の僧侶に託す場面から始まります。しかし、この動きはすでに敵の知るところでした。

王族の重臣は、元敬の実家ミン氏が謀反を企てているという偽りの情報を掴みます。もちろん、これは真っ赤な嘘。元敬は弟たちからの反乱の誘いをきっぱりと断っていました。しかし、敵はそんなことお構いなし。王后の手紙を運ぶ僧侶を襲撃させ、口を封じてしまいます。そして王には「ミン一族と王后が謀反を企てていますぞ!」と吹き込み、まんまと王后を追い詰めることに成功するのです。

王命と偽って寺に幽閉されてしまう元敬。まさに絶体絶命のピンチです。その裏では、側室のチェリョンが内医院の要職に自分の息のかかった人物を送り込もうと画策するなど、宮殿内は不穏な空気に満ちています。

しかし、我らが元敬はただでは転びません!僧侶襲撃の際に生き延びた若い僧侶から真相を聞くと、すぐさま寺を脱出。刺客に襲われながらも、命からがら都にたどり着きます。そして彼女が打った次の一手は、民が直接王に訴え出るための「申聞鼓(シンムンゴ)」を鳴らすことでした。王后は世子嬪(セジャビン)を動かし、王を申聞鼓の場所へと導きます。

そこで王が目にしたのは、救済米の横領という不正の実態と、王后が命の危険に晒されていたという衝撃の事実でした。全ての悪事が暴かれた王族の重臣は逃亡しますが、彼の悪政に苦しめられていた民衆の怒りの手にかかり、哀れな最期を遂げます。

事件は一件落着したかに見えましたが、本当の悲劇はここからでした。元敬は宮殿の秩序を乱したチェリョンを追放。時を同じくして、王は元敬の兄たちに自決を命じるという非情な決断を下します。実家に戻った王后は、王が即位してから「世の中は確かに変わってしまった」と、その変化の重さを噛みしめるのでした。

そして、物語は一気に数年後へ。

元敬が武芸の稽古に励む中、聡明で王の器量を感じさせるチャンニョン大君が成長した姿で登場します。一方、皇太子は叔父たちを逆賊呼ばわりし、生き残っていた元敬の弟たちと口論になるなど、その未熟さを露呈。王も皇太子の軽率な言動には頭を悩ませています。

元敬は、かつて賄賂を要求した役人たちを厳しく罰した記録を見せ、王としての心構えを皇太子に説きます。しかし、その言葉が息子の心に響くことはありません。皇太子は母が去るやいなや、その役人たちに接触し、自分の欲しかった珍しい弓を手に入れようとするのです。

物語の最後、追放されたチェリョンが今も王の情けを乞い続けている様子が描かれます。そして、元敬が皇太子ではなく、チャンニョン大君こそ王にふさわしいと呟く、不穏な一言で幕を閉じるのでした。

『元敬(ウォンギョン)~欲望の王妃~』第19-20話の感想

前半の不正追及劇は、元敬の知略と行動力が見事に炸裂し、見ごたえがありました。絶体絶命の状況から、民衆を巻き込んで形勢を逆転させる手腕は、まさに圧巻の一言です。しかし、その勝利の代償として兄たちを失い、夫との間にも決定的な亀裂が入ってしまう展開は、非常に重く心にのしかかります。権力を手にしたことで、かつて理想を語り合った夫婦が、互いを警戒し、傷つけあう関係へと変貌していく様は、見ていて胸が痛みました。後半、時が流れても息子の皇太子にその思いが届かない母親としての苦悩、そして聡明なチャンニョン大君の存在が、新たな王位継承問題という火種を生んでおり、物語に一層の深みと緊張感を与えています。彼女が本当に求めていたのは権力ではなく、民が安らかに暮らせる世の中だったはず。その理想と現実の狭間で苦しむ元敬の姿から、目が離せません。

つづく