法務部長官チャ・ギョンヒが自ら命を絶つという衝撃的な事件で幕を開けた第12話。現場に居合わせたキム・ガオンは、彼女が隠し持っていた財団の不正ファイルを探そうとしますが、駆けつけた幼なじみの刑事ユン・スヒョンに見られてしまいます。スヒョンはガオンを逃がすため、とっさにガオンの指紋を拭き取り、彼をその場から去らせるのでした。
チャ・ギョンヒの死に罪悪感を抱き、打ちひしがれるガオン。カン・ヨハンは彼を慰めますが、二人の間には見えない溝が生まれ始めていました。スヒョンはガオンの行動を激しく非難し、平手打ちを食らわせます。正義を信じる彼女にとって、証拠隠滅に加担したガオンの姿は許しがたいものだったのです。
失意のガオンは、ついにヨハンの家を出ていくことを決意します。彼を兄のように慕っていたエリヤは必死に引き留めますが、ガオンの決心は固いものでした。ガオンが去った屋敷には、かつてないほどの静寂と寂しさが漂います。ヨハンもまた、ガオンが作った料理を一人で食べながら、彼とエリヤがいた賑やかな日々を思い出し、胸を痛めるのでした。家族のような温かさを知り始めたヨハンとエリヤにとって、ガオンの不在はあまりにも大きなものでした。
一方、目の上のたんこぶだったチャ・ギョンヒがいなくなり、社会的責任財団の面々は祝杯をあげていました。大統領ホ・ジュンセは財団の不正ファイルを手に入れ、独裁者としての野望をむき出しにし始めます。そして、彼らの次のターゲットはカン・ヨハン。チョン・ソナはヨハンを懐柔しようと提案しますが、ホ・ジュンセはそれを一蹴。ソナとヨハンの過去の関係を疑い、彼女を牽制します。
ヨハンを止めるため、スヒョンはガオンの師であるミン・ジョンホ教授に助けを求めます。ミン・ジョンホは記者会見を開き、ヨハンの手法を公然と批判。しかし、その直後、彼は何者かに襲われ、拉致されてしまいます。
そして、物語は最悪のクライマックスへ。ソナはヨハンの腹心である部下Kを人質に取り、ヨハンを呼び出します。同時に、ミン・ジョンホが監禁されているという偽の情報を流し、ガオンを貧民街へとおびき寄せました。
ソナはヨハンに対し、自分と手を組む最後のチャンスを与えますが、ヨハンはこれを拒絶。その瞬間、ソナは部下に命じてKを殺害させようとします。ヨハンはKを庇い、腹部に銃弾を受けてしまいます。満身創痍でKを助けようとするヨハンでしたが、ソナは非情にもKを繋いでいたロープを切り、彼はヨハンの目の前で命を落としました。愛するものを再び失ったヨハンは、ソナへの凄まじい復讐を誓います。
時を同じくして、貧民街に到着したガオンは、防疫を名目に住民たちへ無差別な暴行を加える「竹槍部隊」と対峙。彼もまた、絶体絶命の危機に陥っていたのでした。
『悪魔判事』第12話の感想
今回は、これまで築き上げてきたものが次々と崩壊していく、まさに「決別」の回でした。特に印象的だったのは、ガオンがヨハンの家を出ていくシーンです。あれほどヨハンを疑いながらも、いつしか彼とエリヤと共に過ごす日々に安らぎを見出していたガオン。そして、人間らしい感情を取り戻しかけていたヨハンとエリヤ。束の間の「家族ごっこ」が終わりを告げた時の、屋敷に漂う空虚感が胸に迫りました。
また、チョン・ソナの恐ろしさが際立った回でもあります。彼女のヨハンへの感情は、単なる愛情や憎しみでは言い表せない、歪んだ執着そのものです。自分の思い通りにならないと分かると、彼の最も大切な部下を、彼の目の前で惨殺するという行為は、彼女の狂気をまざまざと見せつけました。
正義を信じるスヒョンやミン・ジョンホの行動が、結果的に彼ら自身を危険に晒し、悪に利用されるという皮肉な展開も、このドラマの深さを物語っています。それぞれの正義がぶつかり合い、誰もが傷つき、追い詰められていく。物語は最大の悲劇を迎え、果たしてこの暗闇に光は差すのでしょうか。
つづく