父の遺影の前で、たった一人残された悲しみにくれるユン・ジス(学生時代)。その姿を、ハン・ジェヒョン(学生時代)はただ黙って見つめることしかできません。彼女の涙が、彼の心にも突き刺さります。

一方で、ジェヒョンの義父であるチャン会長は、ジスの父が亡くなったと聞き、ほくそ笑んでいました。これで過去の秘密はすべて闇の中へ葬り去られると。しかし、そうは問屋が卸しません。ジスは父の遺品の中から一冊の日記を見つけます。そこには、娘への謝罪の言葉と共に、チャン会長の悪事を記した衝撃的な内容が綴られていたのです。

時を同じくして、ジェヒョンもまた、親友のトンジンから驚くべき事実を知らされます。ジスの父親こそ、かつてジェヒョンの父を冤罪に陥れた担当検事だったというのです。しかし、ジェヒョンはこの事実をすでに5年前に突き止めていました。それでもなお、彼はジスを愛し続けていたのです。

チャン会長への反撃の準備も着々と進みます。会長が自分に罪をなすりつけようとした借名口座を逆手に取り、ジェヒョンは税金を納めた上でその口座をすべて自分のものにしてしまいます。これで、会長と対等に渡り合うための力が彼の手に入りました。

しかし、事態はさらに複雑に絡み合っていきます。ジェヒョンから離婚協議書を突きつけられた妻のソギョンは、父であるチャン会長に助けを求め、そこで二人の父親の間にあったおぞましい因縁を知ってしまいます。怒りに燃えるソギョンはジスを呼び出し、「絶対に離婚はしない」と宣言。ジェヒョンとジスの父親同士がどんな関係だったかを暴露し、離婚協議書をずたずたに破り捨ててジスの顔に投げつけるという、壮絶な修羅場が繰り広げられました。

あまりの事実に打ちのめされ、ジェヒョンのもとを去ろうと考えるジス。しかし、彼女の親友であるヨンウが、見かねてジェヒョンにすべての真相を伝えます。真実を知ったジェヒョンは、ジスの家の前で彼女を待ち続けます。

ついに姿を現したジスは、震える手で父の日記をジェヒョンに手渡しました。もう逃げるのはやめよう、と。すべてを知ったジェヒョンは、しかしジスを責めることはありませんでした。彼は、父の悲劇のきっかけは、学生時代に自分がジスを連れて駆け落ちしようとしたことにあると言い、自分を責めたのです。そして、すべての元凶は、自分たちの純粋な愛憎を利用したチャン会長にあるのだと、怒りを露わにしました。

さらにジェヒョンは、ジスの父が亡くなる直前に自分と会い、ジスの幸せだけを願っていたことを伝えます。「君は僕たちの指だ。心につながっている指なんだ。もう指が痛むのは見たくない」。父と愛する人、二人の男性からの深い愛を知ったジスは、ついに決意します。「私、幸せになる」。過去のすべてを受け入れ、愛する人と共に生きることを選んだのです。ようやく想いが通じ合った二人は、固く抱き合い、深いキスを交わしました。

新しいピアノ教室を開くため、物件を探し、中古のピアノを二人で選ぶ。ささやかだけれど、かけがえのない幸せな時間。しかし、彼らの穏やかな日々を、世間は許してはくれませんでした。

引っ越したばかりのジスの新しい家のドアに、誰かが赤いスプレーで「拆除(取り壊し)」と大きく書きなぐっていたのです。ようやく掴みかけた幸せが、またしても無残に引き裂かれようとしていました。

『花様年華~君といた季節~』第12話の感想

今回は、これまで断片的に描かれてきた過去の謎が、一本の残酷な線で繋がった回でした。ジェヒョンの父の死と、ジスの父の罪。その二つの悲劇が、実はチャン会長という一人の人間の欲望によって仕組まれていたという構図には、ただただ言葉を失います。あまりにも重く、逃れられない因縁を知った時、二人がどのような選択をするのか固唾をのんで見守りました。しかし、ジェヒョンはジスを許し、自分自身をも許し、すべての元凶である巨悪に立ち向かうことを決意します。彼の成熟した愛の深さに、強く心を打たれました。ようやく互いのすべてを受け入れ、幸せになることを誓った二人のキスシーンは、これまでの苦しさを知っているからこそ、本当に美しく、そして切なかったです。しかし、ラストの不穏な展開が、この先の道のりが決して平坦ではないことを物語っています。二人が掴んだ小さな光が、どうか消えないでほしいと願わずにはいられません。

つづく