過去と現在、二つの警察署
物語は、現在と過去、二つの警察署のシーンが交錯するところから始まります。
現在、不当解雇に抗議するデモに参加したジスは、他の主婦たちと共に警察に連行されてしまいます。保護者の連絡先を明かせず、一人留置されるジス。その頃、ジェヒョンは部下のジュヌを使い、必死に彼女の安否を確認しようとしていました。
そして、フラッシュバックするのは20数年前の過去。学生運動に参加したジスが、やはり警察に捕まった日のこと。検事長である父親の力で保釈されたものの、待っていたのは彼の容赦ない平手打ちでした。その光景を物陰から見ていたジェヒョンは、心を痛めます。
その夜、ジェヒョンはジスの家の前をうろつきます。部屋の明かりが灯り、聞き慣れたピアノの音が流れてきたことで、ようやく彼は安堵の表情を浮かべ、その場を去ろうとします。しかし、ジスは彼の気配に気づいていました。パジャマ姿のまま、彼を追いかけるジス。ジェヒョンは自分の上着と帽子を彼女に着せ、さらには自分のスニーカーを脱いで履かせてあげます。そして、しゃがみ込んで優しく靴紐を結ぶジェヒョンに、ジスは思わず手を伸ばし、彼の髪をそっと撫でるのでした。
淡い街灯の下、ジェヒョンはジスに語りかけます。「誰も他人を傷つける権利はない。たとえ家族であっても」。この言葉は、ジスの心に深く、そして強く刻み込まれるのでした。
すれ違う想いと、嫉妬の炎
翌朝、ジスは釈放されます。迎えに来たのは、長年の友人ヨンウでした。その様子を部下からの映像で見ていたジェヒョンは、かつてヨンウが自分に「ジスが好きだ」と泣きながら訴えてきた日のことを思い出します。昔からずっと、ヨンウもまたジスを想い続けていたのです。
一方、ジェヒョンは義父であるチャン会長から、再び厄介事を押し付けられようとしていました。しかし、4年前のようにはいかないと、ジェヒョンは曖昧な態度でかわします。会長は、ジェヒョンがもはや自分の意のままにならないことを感じ取り、「娘(ソギョン)を悲しませるな」と釘を刺すのでした。
会社は世論の批判をかわすため、解雇計画を撤回し、復職の道を開きます。ジェヒョンは復職者リストに必死でジスの名前を探しますが、見つかりません。彼女はすでに、ピアノ教室の先生として新たな一歩を踏み出していたのです。
ジェヒョンはジスを訪ね、なぜ復職しないのかと問い詰めます。ジスは静かに「あなたと再会してから、過去を思い出して毎日が苦しい。私たちのことは思い出にしてほしい」と告げます。しかしジェヒョンにとって、突然姿を消したジスは、心に刺さった棘のような存在。「君を過去になんてできない」と、彼は自分の想いをぶつけるのでした。
屈辱と、守れなかった約束
そんな中、ジェヒョンの息子ジュンソを迎えに行った先で、ジスの息子ヨンミンが倒れるという偶然が起こります。ジェヒョンはヨンミンを病院へ運び、ジスに連絡。駆けつけたジスを待っていたのは、元夫セフンと元姑からの心無い言葉と、頬への平手打ちでした。その光景を目の当たりにしながらも、何もできないジェヒョンは、ただ固く拳を握りしめることしかできません。
この一件は、ジェヒョンの妻ソギョンの耳にも入ります。嫉妬に燃えるソギョンは、ジスを侮辱するため、自身が主催する会社のパーティーでのピアノ演奏を依頼するという残酷な罠を仕掛けます。
パーティー当日、ソギョンはわざとジスのドレスにワインをこぼさせ、彼女に恥をかかせようとします。しかし、ジスの胸には、あの夜ジェヒョンがくれた言葉が蘇っていました。「誰もが平等で、誰にも自分を辱める権利はない」。彼女は演奏を拒否し、「ドレス代は弁償します」と言い残し、毅然とした態度で会場を後にします。その姿を見つめるジェヒョンは、深い罪悪感に苛まれるのでした。
20年前、「先輩は私の信念で、私の世界」と語ったジス。その言葉の意味を、ジェヒョンは今になってようやく理解します。ジスは彼にとって「夢」そのものであり、彼女との再会は、その失われた夢を取り戻すための勇気を与えてくれたのだと気づくのでした。
『花様年華~君といた季節~』第4話の感想
過去の美しく純粋な思い出と、現在のしがらみだらけの現実。この二つが交錯するたびに、胸が締め付けられるような感覚に陥りました。特に、若き日のジェヒョンがジスにかけた「誰も君を傷つけてはいけない」という言葉が、時を経て、最も残酷な形でジスを傷つけるソギョンと対峙する力になるという展開には、脚本の巧みさを感じずにはいられません。愛する人に与えられた言葉が、時を超えてお守りになるなんて、なんてロマンチックで、そしてなんて皮肉なのでしょう。ソギョンの登場により、物語は単なる初恋の再燃ではなく、複雑な人間関係が絡み合う、より深みのあるドラマへと進化しました。二人がこれからどんな選択をするのか、静かに見届けたいと思います。
つづく