物語は、意外なところから動きます。世間から「脱税女」と罵られ孤立するガンジュの母ジヨン。そんな彼女に唯一優しく接したのが、なんとダリムの母ボンヒでした。息子と娘の交際には大反対という点で意気投合する二人ですが、その裏ではとんでもない真実が隠されていました。
一方、ガンジュとダリムのカップルは相変わらずラブラブ。ダリムの祖父母に交際を反対されても、ダリムは「ガンジュをポケットに入れて持ち歩きたいくらい可愛い!」と一歩も引きません。ガンジュもまた、ダリムの家族に気に入られようと、クリーニング店を手伝ったり、ダリムの祖父と銭湯に行き背中を流したりと、涙ぐましい努力を続けます。その献身的な姿に、タリミファミリーも少しずつ心を開き始めていました。
しかし、その幸せな光景を、母ジヨンは苦々しい思いで見ていました。自分は世間から石を投げられ、孤独に耐えているというのに、息子は敵であるはずの家族に尽くしている…。そんな中、ジヨンはボンヒが自分の盗まれたお金と同じ「AA」から始まる通し番号の50ドル札を持っていたこと、そしてガンジュがボンヒの釈放のために動いていたという断片的な情報を掴みます。
疑惑が確信に変わったのは、ガンジュの携帯を盗み見た時でした。そこには、ダリムに宛てた「お互いの母親が安心して眠れるように、僕がお金を埋めてきた」という決定的なメッセージが残されていたのです。
息子の裏切りを知ったジヨンの怒りは頂点に達します。ゴルフパターを手にクリーニング店へ乗り込み、ガンジュを激しく問い詰めるジヨン。「お前はもう私の息子じゃない!」「あの家族を全員刑務所に入れてやる!」と泣き叫ぶ母親を前に、ガンジュはすべてを終わらせるための、あまりにも辛い決断を迫られます。
「別れます…」
母親の剣幕に押され、ダリムとその家族との縁を切ることを約束させられてしまうガンジュ。愛する家族を守るため、今度は愛する恋人を手放さなければならないという、絶望的な状況に追い込まれてしまったのでした。
『タリミファミリー~恋もお金もクリーンに!』第32話の感想
今回のエピソードは、登場人物たちの感情が複雑に絡み合い、観ているこちらの胸が締め付けられるような回でした。特に印象的だったのは、ガンジュの純粋な愛情が引き起こした悲劇です。彼はただ、愛するダリムとその家族を、そして自分の母親をも守りたかっただけなのでしょう。しかし、その優しさと献身が、結果的に母親の激しい嫉妬と孤独感を煽り、最悪の形で裏目に出てしまいました。息子の裏切りを知り、泣き崩れながらガンジュを罵るジヨンの姿は、母親としての愛情が歪んでしまった悲しさを物語っており、非常に心を揺さぶられました。二つの家族の対立はもはや修復不可能なレベルに達してしまい、登場人物たちの誰の視点に立っても、やるせない気持ちでいっぱいになります。
つづく