ついに、王であるフォンが気づいてしまいましたね! 自分の健康を守る厄除けの巫女としてそばに置いた女性ウォルが、先日偶然出会った、亡き初恋の人ヨヌに瓜二つの顔を持つことに。
まさか…と愕然とするフォン。目の前の彼女が、死んだはずのヨヌであってほしい。しかし、そんなはずはない。ヨヌは8年前に確かにこの世を去ったのだから。ならば、この女は何者だ? なぜ自分の前に現れた? これは、自分を陥れようとする者たちが送り込んだ罠に違いない。心を揺さぶられてはならぬ、断じて! フォンは激しい葛藤に苦しみます。
一方、ウォル(ヨヌ)は王の怒りに触れたとして捕らえられ、密室で重い罰を待つ身に。
その光景を目撃したのが、フォンの兄である陽明君(ヤンミョングン)でした。ウォルの行方を追い、王宮にたどり着いたヤンミョン。ついでに弟のフォンを見舞おうとしますが、そこで待っていたのは大妃からの冷たい言葉。王位に欲を出すなと釘を刺され、もともと権力に興味のなかったヤンミョンもついに堪忍袋の緒が切れます。痛烈な皮肉で大妃に一撃を食らわせるのでした。彼にとって、この世で執着するものはヨヌただ一人。そのヨヌがいない今、生きる意味さえ見失いかけています。出家しようとする母・禧嬪(ヒビン)に対し、もし王に何かあれば、母上が大妃になれるかもしれませんよと、冗談とも本気ともつかぬ言葉で引き止めるヤンミョンの姿は、あまりにも切ないですね。
宮殿では、フォンと領議政(ヨンイジョン)ユン・デヒョン一派との権力闘争が激化。フォンが手強い相手だと悟ったユン・デヒョンは、さらなる策略を巡らせます。しかし、ユン一派も一枚岩ではありません。大妃は権力を手放したくないものの、孫であるフォンの命まで奪うつもりはなく、ユン・デヒョンとの間に溝が生まれ始めていました。
そんな中、フォンの忠実な護衛武官ウン(ウン)が、ウォルの身元を調査。彼女がユン・デヒョン一派の手先ではないことを突き止め、フォンに報告します。これを受け、フォンはウォルへの罰を取り下げ、再び厄除けの巫女としてそばに置くことを許すのでした。
解放されたウォルは、ヤンミョンと再会します。ウォルは、ヤンミョンの心の中にも、おぼろげな過去の記憶の断片を読み取ります。心の中の想いを手放し、悲しみを隠さないでくださいと彼を慰めるウォル。ヤンミョンは、この不思議な巫女が何者なのか、ますます混乱を深めていきます。
そして、この厄除けの巫女の噂は、正室であるポギョン王妃の耳にも届いていました。女の直感が、この巫女が自分の地位を脅かす巨大な存在だと告げています。それと同時に、死んだはずのヨヌがすぐそばにいるような、奇妙で不気味な感覚に襲われるのでした。その感覚は、ポギョンだけでなく、ヨヌの家族たちも同様に感じ始めており、物語は新たな波乱の予感に満ちていきます。
『太陽を抱く月』第9話の感想
今回のエピソードは、登場人物それぞれの心の奥底にある渇望と苦悩が、静かに、しかし深く描かれた回でした。王としての威厳を保とうとしながらも、亡き初恋の人の面影に心をかき乱されるフォンの人間らしい脆さ。そして、唯一の光であったヨヌを失い、生きる意味さえ見失いかけているヤンミョンの孤独が胸に迫ります。彼が母にかけた言葉は、彼の絶望の深さを物語っているようでした。
記憶を失ったウォル(ヨヌ)が、その純粋さゆえに、無意識のうちに二人の王族の心を揺さぶり、宮殿の勢力図にまで影響を与え始めている構図が見事です。彼女の存在が、止まっていた人々の時間を再び動かし始めたかのよう。登場人物たちの感情の機微が丁寧に紡がれており、物語の深みにさらに引き込まれました。
つづく