第10話は、もう何と言っていいのか…。父と子というテーマが、これでもかというほど様々な形で描かれ、胸が締め付けられる回でした。それでは早速、怒涛の展開を振り返っていきましょう!
后の覚悟と王の取引
前回、夫イ・ソン(イ・ジェフン)の無実を証明するため、決死の覚悟を決めた世子嬪ヘギョングン(パク・ウンビン)。彼女はなんと、幼い息子(後の正祖イ・サン)を連れて王宮の庭でひれ伏し、夫の事件の再調査を王ヨンジョ(ハン・ソッキュ)に直訴します。泣きじゃくる孫の姿に、さすがのヨンジョも折れ、再調査を約束しました。ヘギョングンの機転と母としての強さ、見事でしたね。
しかし、その裏でヨンジョは、老論派の領袖キム・テク(キム・チャンワン)に非情な提案を持ちかけます。事件の真相に繋がる暗殺者と、王座を揺るがす盟約書を交換しろ、と。その暗殺者が、キム・テクがひた隠しにしてきた実の息子キム・ムだと知りながら…。ヨンジョ、恐ろしい男です。
明かされる暗殺者の正体と父の苦悩
一方、イ・ソンを救うため奔走するパク・ムンス(イ・ウォンジョン)とソ・ジダム(キム・ユジョン)。ジダムの推理により、一連の事件の実行犯である暗殺者が、キム・テクの庶子キム・ムであることが判明します。
キム・テクは、王の命令と息子の命の間で激しく苦悩します。これまで冷酷非道な策略家として君臨してきた彼が見せた、一瞬の父としての顔。逮捕の手が迫る直前、彼はキム・ムに父とは呼んでやれなかったが、命だけは助けたいと告げ、逃亡を促します。このシーンには、思わずグッときてしまいました。
しかし、これもすべては仕組まれた罠。キム・ムは捕らえられ、キム・テクはパク・ムンスとの取引に応じます。息子の身柄と引き換えに、パク・ムンスは血眼で探していた盟約書をキム・テクに渡してしまうのです。そして、人質だったナ・チョルチュは解放されますが、片手を切り落とされた痛々しい姿で…。
偽りの自白と隠蔽された真実
釈放されたイ・ソンが見守る中、キム・ムの尋問が始まります。ヨンジョもキム・テクも、すべてをキム・ム一人の罪として終わらせる算段でした。しかし、イ・ソンは諦めません。自分の息子にこんな仕打ちをするとはとキム・ムに語りかけ、真実を明かすよう迫ります。
その言葉に心が揺れたキム・ムが口を開こうとした瞬間、事態は誰もが予想しなかった方向へ。なんと、父であるキム・テクがすべての罪は私が命じたと名乗り出たのです!衝撃の展開に、法廷は騒然。
…と思いきや、今度は息子キム・ムが父は無実だ!と叫び、父をかばうために、すでに死んでいる人物を黒幕に仕立て上げる嘘の証言をします。この歪んだ、しかし強烈な父子の絆。見事な連携プレーで、事件はならず者同士の抗争として、すべての真実が闇に葬られたまま強引に幕引きされてしまいました。
父とは何か、子とは何か
釈放されたものの、無力感に苛まれるイ・ソン。彼は独房のキム・ムを訪ね、なぜ自分を駒としか思っていない父親のために命を捨てるのかと問います。キム・ムの答えは、あまりにも哀しく、そして純粋でした。父だからだ父との思い出がなければ、あの世への道が寂しいではないか。
この言葉は、父ヨンジョとの関係に苦しむイ・ソンの心を深くえぐります。
そして迎える、キム・ムの処刑。彼は最期の瞬間、民衆の中に解放された友人ナ・チョルチュの姿を見つけ、かすかに微笑みます。しかし、観ている我々には残酷な真実が明かされます。キム・テクは、息子が情に厚い性格であることを見越し、父をかばうことまで計算に入れてこの計画を立てていたのです。父の愛情を信じて死んでいったキム・ムが、あまりにも哀れでなりません。
事件は解決(したことにされ)、イ・ソンは再び盟約書の謎を追い始めます。署名者リストの最後に残された謎の人物、竹坡(チュクパ)とは一体誰なのか?物語は新たな謎を残して、次週へと続きます。
『秘密の扉』第10話の感想
今回は父と子という普遍的なテーマが、幾重にも重なって描かれた非常に見応えのある回でした。理想を追い求める息子イ・ソンと、王座を守るため非情になる父ヨンジョ。そして、最も印象的だったのが、策略家の父キム・テクと、彼に利用されながらも最後まで父を信じ続けた息子キム・ムの関係です。彼らの関係は歪んでいましたが、そこには確かに親子の情愛が存在し、それが最大の悲劇を生むという皮肉な結末には言葉を失いました。イ・ソンがキム・ムとの対話を通じて、父という存在について深く思い悩む姿は、このドラマの核心に迫る重要な場面だと感じます。権力闘争の裏で交錯する人間ドラマの深さに、改めて引き込まれました。
つづく