いやあ、今回の『秘密の扉』第12話は、父と子の間に流れる複雑な感情がこれでもかと描かれた回でしたね。信じたい気持ちと、拭いきれない疑念。その狭間で揺れ動くイ・ソンの姿に、見ているこちらも胸が締め付けられるようでした。

父の涙と計算、揺れる世子イ・ソン

前回、父ヨンジョこそが、30年前の謀反を記した盟約書にチュクパ(竹坡)の名で署名した張本人だと知ってしまったイ・ソン。彼は厳しい表情で父の元へ向かいます。この事実を突きつければ、父子の関係は終わる…。そんな覚悟を決めたのかもしれません。

ところが、ヨンジョは一枚も二枚も上手でした。彼は何も知らないふりをしてイ・ソンを亡き母の墓へと誘います。そこで語られるのは、低い身分の母を持ったがゆえの辛い過去、そして王になるしかなかった苦悩。さらには、民の負担を軽くするための均役法という改革を成し遂げたいのだと、涙ながらに訴えるのです。

このヨンジョの言葉は、嘘と真実が巧みに織り交ぜられた見事なものでした。民を思う気持ちは本心でしょう。しかし、それは息子の追及をかわすための計算ずくの行動でもあるのです。純粋なイ・ソンは、父のこの姿に心を揺さぶられます。父を信じたい、この改革が終わるまで判断を待ちたい…。そう決意し、ヨンジョが代理聴政を中断し、自ら政治の表舞台に戻ることを受け入れるのでした。

束の間の共闘と老論派の逆襲

こうして、ヨンジョとイ・ソンは均役法実現のために力を合わせることになります。王自ら貧しい民の声に耳を傾け、彼らの手を取り涙する姿に、イ・ソンは深い感銘を受け、父への尊敬の念を新たにするのです。この父子の姿は、本当に感動的でした。

しかし、この改革は特権階級である両班(ヤンバン)の利益を損なうもの。元宰相のキム・テク率いる老論(ノロン)派が黙って見ているはずがありません。彼らは大勢の学者たちを動員し、王宮の前で斧を担いで抗議するという過激な手段に出ます。これは我々の屍を越えて行けという、まさに命がけの反対表明です。

この光景にヨンジョは激怒のあまり卒倒。イ・ソンは怒りに震えながらも父を気遣い、自ら背負って宮殿へと戻るのでした。

暴露本の流出、そして父子の対決へ

一方、物語は新たな局面を迎えます。かつて姿を消したソ・ジダムが再登場し、彼女の父が、ヨンジョの秘密を知る人物として少論(ソロン)派から接触を受けます。依頼されたのは、ヨンジョが兄である景宗(キョンジョン)を暗殺したという疑惑を記した画家の記録を写本し、世に広めること。

葛藤の末、ジダムの父は写本を決意。その本は貸本屋のネットワークを通じて瞬く間に都中に広まり、民衆の間に大きな波紋を呼びます。

この事態に、ヨンジョは理性を失います。本を読んだ者は、関わった者すべてを処刑せよと狂気的な命令を下すのです。イ・ソンは必死で父を止めようとしますが、もはや言葉は届きません。

そして、ついにイ・ソンは最後のカードを切ります。

なぜ、この本をそれほどまでに恐れるのですか?書かれていることが…すべて真実だからですか?

凍りつくヨンジョに、イ・ソンは静かに、しかしはっきりと問いかけます。

チュクパ(竹坡)。30年前に署名された盟約書…署名されたのは、父上ですか?

父が最も恐れていた一言が、息子の口から放たれた瞬間でした。父子の間に走った決定的な亀裂。物語は、最も緊迫した場面で幕を閉じます。

『秘密の扉』第12話の感想

今回のエピソードは、ヨンジョという人物の多面性が見事に描かれていました。民を思い、理想の政治を目指す慈悲深い王の顔と、自らの権力を脅かす者には一切の情けをかけない冷酷な策略家の顔。その二つの顔を巧みに使い分ける姿は、まさに圧巻です。そして、そんな父に翻弄されるイ・ソンの苦悩が痛いほど伝わってきました。父を信じたいという純粋な願いと、次々と明らかになる酷薄な真実との間で、彼の心は引き裂かれそうになっていたことでしょう。特に、ヨンジョが民と触れ合う姿に感動し、涙ぐむイ・ソンの表情は、この父子に訪れる悲劇を思うと非常に切ないものがありました。最後の対決シーンは、静けさの中に凄まじい緊張感がみなぎっており、息をのむほどの迫力でした。二人の俳優の演技が光る、重厚な一話だったと感じます。

つづく