前回、世子イ・ソンを助けるフリをして、まんまと裏切ったキム・テクとその一派。彼らの策略は、清国の使節団に贈るはずだった最高級の高麗人参を、見るも無残な腐った代物に入れ替えるというものでした。もちろん、使節団がこれを見て黙っているはずがありません。
このとんでもない策略を思いついたのは、まさかのチョルチュ(チョルチュ)だったことが回想で明かされます。それにしても、もっと簡単なやり方があったのでは?なんて野暮なツッコミは置いておきましょう。悲劇の王子・思悼世子(サドセジャ)の物語で、なぜ高麗人参ごときでこんなにハラハラさせられるのか…まあ、それもこのドラマの味なのかもしれません。
侮辱されたと感じた清の使節団は激怒し、交渉決裂を宣言して即刻国へ帰ると言い出します。イ・ソンはすぐさま行動に出て、贈り物について謝罪し、すぐに代わりの品を用意すると約束しました。
しかし、それでも彼らの怒りは収まりません。するとイ・ソンは、なんとその場で膝を突き、土下座をしたのです! これは国の代表である世子として、ありえない行為。宮廷中が騒然となり、臣下たちは一斉にひれ伏し、おやめくださいと叫びます。
この予想外の行動には、怒り心頭だった使節団も度肝を抜かれました。平和のため、どうか考え直してほしいと必死に訴えるイ・ソンの真摯な姿に、ついに使節団も折れ、もう一度だけチャンスを与えることに。 与えられた猶予は3日間。今度は皇帝の心を動かすような、特別な贈り物を見つけなければなりません。もはや完璧な高麗人参を用意したところで、意味はないのです。
この土下座事件は、新たな火種を生みます。イ・ソンの行動は朝鮮の誇りを著しく傷つけるものだと、国中から非難の声が上がり始めました。父である王ヨンジョ(ヨンジョ)も、王たる者、目先の危険を回避するためにプライドを捨てるなとイ・ソンを激しく叱責。 この問題を解決できなければ廃位だと、最後通告を突きつけます。 失敗を待ち望んでいるヨンジョですが、その指摘は的を射ており、彼の老獪さを感じさせます。
しかし、イ・ソンも一歩も引きません。私の行動が戦を防ぎ、民の命を守れるのなら、これ以上のことでもすると断言します。
そんな中、イ・ソンはキム・テクの裏切りに気づいていました。彼は何も知らないフリをしてキム・テクを油断させつつ、忠臣ミン・ウソプ(ミン・ウソプ)に密かに彼の監視を命じます。 さらに、使節が落とした数珠を手がかりに、それがカトリックのロザリオであることを突き止め、反撃の糸口を探し始めます。
一方、イ・ソンの失脚は時間の問題だと考えたキム・テクは、次の王として王族のイ・ギョ(イ・ギョ)に接触するという、大胆な行動に出ます。
報告を受けたイ・ソンは、キム・テクの野心を利用した罠を仕掛けることを決意。わざと軍事演習に明け暮れ、まるで戦争を準備しているかのように見せかけます。 そして、ミン・ウソプを通じて、自身が3年間書き溜めたという軍事戦略書をキム・テクに渡させるのです。 これはもちろん、イ・ソンが仕掛けた罠。ウソプが裏切るはずがありません。
まんまと罠にかかったキム・テクは、イ・ソンが交渉の失敗を口実に清国との戦争を企んでいると確信。 深夜、密かに使節と会い、その軍事戦略書を証拠として突きつけます。 さらに莫大な銀塊を賄賂として渡し、清の皇帝にイ・ソンの世子としての地位を取り消すよう要請するのです。
そして運命の日。使節団はイ・ソンを呼び出し、征服によって王位を維持するつもりかと問い詰めます。息をのむ一同の前で、イ・ソンはそれをはっきりと認めました。
その頃、キム・テクはほくそ笑んでいましたが、そこに兵士たちが現れ、謀反の罪で彼を捕らえます。証人として連れてこられたのは、なんと彼が次の王にしようとしたイ・ギョでした。
イ・ソンは使節団の前で、自らの征服が意味するものを語り始めます。それは武力によるものではなく、文化による征服だと。 彼はラテン語で書かれた一節とロザリオを取り出し、彼らの信仰を理解し、友好を深めたいと訴えます。彼が目指すのは、西洋の科学や医学といった知識を共有する文化交流であり、それこそが平和への道だと説いたのです。
では、あの軍事戦略書は何だったのか?イ・ソンは、それこそが皇帝への贈り物だと言い放ちます。朝鮮が強くなることは、日本からの侵略に対する清国の盾となること。この情報は、皇帝自身の軍隊を強化することにも繋がるのだと。 見返りを求めず、これほど貴重な情報を差し出したイ・ソンに、使節団は完全に心を動かされます。
こうして、絶体絶命の危機は見事に乗り越えられました。使節団はヨンジョに、イ・ソンのあまりの素晴らしさに感動したこと、そして王の家臣が彼を陥れようとしたことを報告します。 謀反人の名として挙げられたのは、もちろんキム・テクでした。
自分が完全にイ・ソンの罠にはまったと悟ったキム・テクは、狂ったように笑い出します。
ヨンジョの前に引き出されたキム・テクは、自分は王と同じことをしたまで。世子は昔の罪を忘れておらず、我々にとって危険な存在だ。だから先手を打ったのだと主張します。 ヨンジョは冷ややかに、彼を斬れるのも、王にするのも、廃位させるのも、私だけだと告げます。
そして裁きの時。ヨンジョはキム・テクの処刑を命じ、その役目をイ・ソンに与えます。これが権力を守る方法だと。
イ・ソンは剣を抜き、キム・テクの前に立ちます。誰もが息をのみ、剣が振り下ろされるのを待ちました。
しかし、剣が断ち切ったのは、キム・テクを縛っていた縄だけでした。 イ・ソンは彼の命を奪わず、官職を剥奪し都から追放するという罰を下します。
情けは無用だ!殺せ!と叫ぶキム・テクに、イ・ソンは静かに告げます。
それはあなたのやり方だ。私には私のやり方がある
お前を殺さずに生かしておく。もし私を討ちたいのなら、いつでも来るがいい。私は私のやり方で、あなたを止め続ける
これは殺すことで支配する殺人の政治ではなく、人を生かすことで国を治める活人の政治。これこそが、私の再入政治(再出発の政治)なのだと、イ・ソンは父ヨンジョにはっきりと宣言するのでした。
『秘密の扉』第16話の感想
今回は、まさにイ・ソンの独壇場でした。キム・テクの周到な罠によって絶体絶命の淵に立たされながらも、それを逆手に取って敵を一網打尽にする様は、見事としか言いようがありません。特に印象的だったのは、彼が示した活人の政治という信念です。力でねじ伏せ、敵を殺すことで権力を守ろうとする父ヨンジョに対し、イ・ソンは敵さえも生かし、自らのやり方で向き合う道を選びました。この決断は、単なる甘さではなく、困難な道を選ぶという彼の強い覚悟と人間的な成長を感じさせます。父子の政治理念の違いが明確になり、今後の対立がより一層深まることを予感させる、非常に重厚なエピソードでした。
つづく