科挙の試験場に響き渡る怒号と熱気。世子イ・ソンは、身分の差なく誰もが試験を受けられる機会を、と宣言しました。 彼の決断で、平民たちが続々と試験場へなだれ込みます。 この前代未聞の光景に、両班の受験者たちは平民と一緒に試験など受けられるか!と猛反発。 しかし、イ・ソンは彼らを一喝します。自信がないのか?百姓や商人に負けるのが怖いのか? ならば筆を取り、誰にも負けない見事な答えを書け。それこそが彼らをこの場から追い出す唯一の方法だと。
この知らせはすぐに父である王、ヨンジョの耳にも届きます。 イ・ソンが緻密な計画のもとにこの事態を引き起こしたと確信したヨンジョは激怒。 重臣キム・テクはここぞとばかりに世子を廃位すべきです!と進言し、宮殿に緊張が走ります。 ヨンジョはついに、武力をもって試験を中止させるよう命令を下しました。
試験場の外では、軍が民衆を容赦なく鎮圧し始め、阿鼻叫喚の地獄絵図と化します。 イ・ソンは、この惨状をあえて民に見せつけ、王の非情さを知らしめるという苦渋の選択をします。 そこへ駆けつけたパク・ムンスの尽力により、なんとか鎮圧は一時中断され、試験は最後まで行われました。
そして発表された合格者。驚くべきことに、合格者の半数は平民でした。 イ・ソンはこの結果こそが民の力を示す証拠だと、答案をヨンジョに突きつけます。 しかし、ヨンジョは身分制度の崩壊こそが国の崩壊に繋がると信じ、その考えを微塵も変えません。 そして、冷酷にも答案をすべて燃やすよう命じます。
この者たちの合格を取り消し、首謀者であるイ・ジョンソンを自らの手で処刑せよ
ヨンジョの非情な命令に、イ・ソンはできませんと真っ向から反抗します。
ならば、私は息子を失い、この国は世子を失うことになる
ついにヨンジョは、イ・ソンの廃位を宣言します。 しかし、イ・ソンは臆することなく言い放ちました。忠臣と民の志を捨てるくらいなら、私は喜んで王位を失いましょうと。
世子自らが王位を放棄するという衝撃的な事態に、臣下たちは動揺します。特に、イ・ソンの師であり、彼の理想を誰よりも理解するパク・ムンスは、地下書庫でイ・ソンを厳しく叱咤します。ここで全てを投げ出すのは、ただの自己満足だ! 今は屈辱に耐えて負けろ。生き延びて、力をつけ、王になれ! あなたのやり方で国を治めるのだ。それこそが、世子としての真の誇りを守る道だ!と。
パク・ムンスの魂の叫びに、イ・ソンはついに決断します。彼はヨンジョの前に進み出て、自らの敗北を宣言しました。 イ・ジョンソンの流罪と、平民合格者の資格剥奪を、自らの口で告げたのです。
牢にいるイ・ジョンソンに、イ・ソンは涙ながらに別れを告げます。あなたを守れなかった…しかしイ・ジョンソンは、どうか、この国の22代目の王となってくださいと彼を励ますのでした。
失意のイ・ソンの元に、合格した平民たちが現れます。彼らは自ら官服を差し出し、こう言いました。世子様が王になる日を、我々は待ち続けます。 その日にもう一度、我々をお呼びくださいと。 彼らの揺るぎない忠誠心に触れたイ・ソンは、涙をこらえ、固く誓います。
約束する。 どんな困難にも打ち勝ち、必ずこの国の王になる。 そして王になった日には、真っ先に君たちを呼び戻そうと。
今はただ、耐え忍ぶ時。未来の勝利のために、イ・ソンはあまりにも大きな代償を払い、痛恨の敗北を受け入れたのでした。
『秘密の扉』第19話の感想
理想を追い求める若き世子が、巨大な権力という現実の壁に打ちのめされる姿が、あまりにも痛々しく描かれた回でした。民のためにと信じた行いが、結果的に民を傷つけ、忠臣を切り捨てることにつながってしまう矛盾。イ・ソンが味わった無力感と絶望は、画面越しにも深く伝わってきます。しかし、これは単なる挫折の物語ではありません。パク・ムンスの叱咤激励や、自ら官服を返しに来た民たちの健気な忠誠心は、暗闇の中の確かな光でした。この苦い敗北を糧にして、彼が真の君主へと成長していく未来を予感させます。父子の対立という縦軸だけでなく、臣下や民との絆という横軸が豊かに描かれた、非常に重厚で見応えのあるエピソードでした。
つづく