いやあ、『秘密の扉』第20話、今回もまた息をのむ展開の連続でしたね。父子の深い愛情と、決して交わることのない信念がぶつかり合い、見ているこちらの胸が締め付けられるようでした。それでは早速、怒涛の第20話の世界に飛び込んでいきましょう!

父子の埋まらない溝と、恵慶宮の覚悟

物語は、英祖(ヨンジョ)が息子である世子イ・ソンとの面会を10日間も拒絶し続ける、重苦しい雰囲気から始まります。イ・ソンが平民にも科挙の道を開こうとした一件以来、父子の溝は深まるばかり。英祖は、イ・ソンが理想を捨てていないことを見抜いており、警戒を解いていませんでした。

そんな中、イ・ソンの妻である恵慶宮(ヘギョングン)が、夫に厳しい現実を突きつけます。平民も王族も平等になるべきだというイ・ソンの理想は、この国では妄想でしかないと。彼女は、夫と、そして自分たちの息子の未来を守るため、イ・ソンにその危険な思想を捨てるよう必死に説得します。しかし、イ・ソンの信念は揺らぎません。この夫婦の間の断絶もまた、見ていて辛いものがありました。

一方、老論派のキム・テクらは、イ・ソンを廃位に追い込む次なる一手を探していました。彼らが目をつけたのは、宮中に女官として潜んでいるソ・ジダムの存在。彼女が逆賊の娘であることが明るみに出れば、イ・ソンを失脚させる絶好の口実になります。しかし、この動きを察知した恵慶宮が機転を利かせ、ジダムの正体が暴かれるのを寸でのところで防ぎます。恵慶宮の、静かながらも凄みのある策略家としての一面が際立った瞬間でしたね。

涙の訴えと、王の決断

理想のために動こうとしないイ・ソンに業を煮やしたのが、元刺客のナ・チョルチュです。彼は剣で王冠を奪うべきだとイ・ソンに迫りますが、イ・ソンは剣で得た権力は剣でしか維持できないと、暴力による革命をきっぱりと否定します。この言葉は、彼の民を思う優しさと、王族としての苦悩を象徴していました。しかし、この答えに失望したナ・チョルチュは、イ・ソンに代わって自らが英祖を暗殺することを決意してしまいます。

その夜、英祖は密かに宮殿を抜け出したイ・ソンと対峙します。英祖は、政治的には敵対しながらも、息子への愛情を捨てきれずにいました。お前は悪い息子だ。だが、それでも父は…お前を諦めることができない。涙ながらにそう訴え、危険な夢を捨ててくれと懇願する英祖。しかし、イ・ソンは民との約束を裏切ることができず、父の願いに考えさせてくださいとしか答えられません。この父子の涙のシーンは、本作屈指の名場面と言えるでしょう。

すれ違う想い。ついに英祖は、老論派の要求を受け入れ、新たな王妃を迎えることを公式に発表します。これは、新たな世継ぎを儲ける可能性を示唆し、イ・ソンの立場を危うくする非情な決断でした。

女たちの戦いと、新たなる陰謀

王妃選びが始まると、宮殿では女たちの静かな戦いが勃発します。老論派は息のかかったムン昭媛を王妃にしようと画策。これを阻止するため、恵慶宮は大胆な策を打ちます。占い師を宮中に呼び、ムン昭媛は世継ぎを産めない運命だという不吉な噂を流させたのです。この噂は瞬く間に広がり、英祖はムン昭媛ではなく、公募で新しい王妃を選ぶ揀択(カンテク)を行うことを決定します。

恵慶宮はさらに、揀択の候補者の一人であるキム・ハングの娘に自ら会いに行きます。彼女は王の妃になることを恐れていましたが、恵慶宮はあなたの選べる未来は限られていると現実を突きつけ、私が宮殿であなたの味方になると説得。心を決めた彼女は揀択に臨み、見事、新しい王妃(後の貞純王后)に選ばれるのでした。

すべてが終わり、安堵したのも束の間。イ・ソンは父を裏切る罪悪感に苛まれながらも、密かに新たな計画を始動させます。それは、身分に関係なく学べる学堂書斎を設立するという、彼の理想の第一歩でした。

そして、物語の最後。ナ・チョルチュは、英祖と新しい王妃の婚礼儀式の日を、暗殺決行の日と定めます。王の行列を丘の上から見下ろす彼の冷徹な眼差しで、第20話は幕を閉じました。

『秘密の扉』第20話の感想

今回のエピソードは、登場人物それぞれの守るべきもののための覚悟が、複雑に絡み合う重厚な回でした。特に印象的だったのは、英祖が王としての冷徹さと、息子を愛する父親としての情の間で引き裂かれる姿です。涙ながらにイ・ソンに訴える場面は、彼の人間的な弱さと愛情が溢れ出ており、胸に迫るものがありました。一方で、夫と息子の未来を守るため、非情な策略も厭わない恵慶宮の変貌ぶりも見事です。彼女の行動は、決して単純な悪意からではなく、愛する者を守りたいという切実な願いから生まれています。理想を追い求めるイ・ソン、父としての愛に苦しむ英祖、そして現実的な方法で家族を守ろうとする恵慶宮。三者三様の正義と愛情が衝突し、物語に深い奥行きを与えていました。

つづく