王、英祖(ヨンジョ)の新たな婚礼が間近に迫り、宮殿は華やかな準備に追われていました。しかし、その祝賀ムードの裏では、恐ろしい計画が静かに、そして着実に進行していたのです。かつて無念の死を遂げた者たちの無念を晴らすため、ナ・チョルチュ率いる秘密組織ミョンサが、婚礼の行列を襲撃し、英祖を暗殺するという大胆不敵な計画を企てていました。 彼らは画員を買収して行列の詳細な計画図まで手に入れ、着々と準備を進めます。

一方、世子イ・ソンは、父である英祖の婚礼準備と警備の指揮を自ら執り、その熱心な働きぶりは周囲を驚かせます。 これは、老論(ノロン)派が画策する世子廃位の動きを牽制し、父子の絆が揺るぎないものであると示すための、イ・ソンなりの必死の策でした。 しかし、老論派の首長キム・テクや、野心家のホン・ゲヒが、そんなイ・ソンの真意を素直に受け取るはずもありません。彼らはイ・ソンの行動の裏に何かあると睨み、監視の目を一層光らせるのでした。

そんな中、事態を大きく動かす事件が起こります。イ・ソンの師パク・ムンスが、宮中で女官として潜入していたソ・ジダムの正体に気づいてしまったのです。 さらにジダムは、ナ・チョルチュに渡すため、王の行列の経路図を写しているところをパク・ムンスに押さえられてしまいます。

報告を受けたイ・ソンは、ナ・チョルチュたちの計画が王の暗殺であると瞬時に悟ります。 父を、そして逆賊として追われる彼らをも救いたい。その一心で、イ・ソンは危険を顧みず、たった一人で彼らを説得に向かうことを決意します。パク・ムンスに1時間だけ待ってほしいと告げ、彼は闇の中へと消えていきました。

アジトで武器を手に決起を待つナ・チョルチュたちの前に現れたイ・ソン。父を殺して得た王座に意味はないと、血を流さない世を作るという自らの理想を涙ながらに訴えます。 そして、暗殺計画がすでに宮殿に漏れており、追っ手が迫っていることを伝え、彼らを逃がすのでした。

間一髪でナ・チョルチュたちを逃がしたイ・ソンは、駆けつけたホン・ゲヒたちに警備の視察をしていたと嘘をつき、その場を切り抜けます。 英祖からの厳しい追及もなんとかかわしますが、英祖は息子が誰かを庇っているのではないかと、心の奥底で新たな疑念を抱くのでした。

事件は一応の収束を見せましたが、イ・ソンの本当の戦いはまだ始まったばかり。彼は、身分に関係なく学問を修められる秘密の学舎ソジェを関西(クァンソ)の地に設立していたのです。 イ・ソンは、この計画を成功させるため、そしてナ・チョルチュたちを監視するために、側近のミン・ウソプを現地に派遣します。

しかし、キム・テクとホン・ゲヒはこの動きを察知。イ・ソンが王の私財である内帑金(ネタンガム)を関西で使っていること、そしてナ・チョルチュ一味の拠点が関西であることから、両者の繋がりに確信を深めていきます。

イ・ソンは、自らの理想を実現するため、最大の政敵である老論派の重鎮であり、師でもあるパク・ムンスにソジェの師になってほしいと、驚くべき依頼をするのでした。

『秘密の扉』第21話の感想

父と子の間の、息が詰まるような信頼と不信の駆け引きが、今回も見事に描かれていました。息子を信じたいと願いながらも、王として冷徹な判断を下さなければならない英祖の苦悩。そして、父を欺いてでも自らの理想と民を守ろうとするイ・ソンの悲壮な覚悟。二人の心が通じ合いそうで決して交わらないもどかしさが、物語に深い奥行きを与えています。

特に印象的だったのは、イ・ソンが理想のために始めたソジェという計画です。彼は血を流さない改革を目指していますが、そのために父を欺き、秘密裏に事を進めなければならない。その姿は、かつて秘密の盟約によって王座に就いた父・英祖の姿と皮肉にも重なります。高潔な理想を抱けば抱くほど、現実の政治の濁流にのまれ、策謀を用いざるを得なくなる。この矛盾こそが、本作の持つ人間ドラマとしての深みなのでしょう。登場人物たちの心理描写が巧みで、それぞれの正義と苦悩に感情を揺さぶられました。

つづく