英祖(ヨンジョ)と世子イ・ソン(思悼世子)、そして彼らを取り巻く者たちの思惑が激しくぶつかり合う第21話。今回は、息子のために心を砕く父と、父の愛を知りながらも理想のために突き進む息子の、切なくも緊迫した頭脳戦が繰り広げられます。
王の婚礼の裏で進む暗殺計画
英祖が新たな王妃を迎えることになり、宮殿は祝賀ムードに包まれていました。世子イ・ソンは自ら婚礼の儀式を取り仕切り、父のために奔走します。その姿は、老論(ノロン)派を牽制し、父との関係を修復しようとする必死の表れのようにも見えました。
しかし、その華やかな儀式の裏では、恐ろしい計画が進行していました。ナ・チョルチュ率いる秘密組織ミョンサが、王が宮殿の外に出る婚礼行列を狙い、英祖の暗殺を企てていたのです。彼らは宮中に潜入したソ・ジダムに情報収集を依頼。ジダムは危険を顧みず、行列の経路図を写し取ろうとします。
その動きを察知したのは、世子イ・ソンその人でした。女官となったジダムが地図を写している現場を押さえたイ・ソンは、彼女からナ・チョルチュの暗殺計画を知らされます。
父を救うため、逆賊と対峙する世子
彼らがなぜ逆賊になったか、私にはわかる。イ・ソンは、武力で彼らを制圧しようとする臣下を止め、自らナ・チョルチュを説得するため、夜の闇に紛れて宮殿を抜け出します。臣下のパク・ムンスは、1時間だけ猶予を与え、もし戻らなければ軍を動かすと告げ、万一に備えて行列の経路を変更するのでした。
一方、イ・ソンの動向を常に監視していた老論派のホン・ゲヒも、この不穏な動きを察知。彼はすぐさま英祖に謁見し、まるで世子が暗殺計画に関わっているかのように匂わせ、英祖の心を揺さぶります。
アジトに到着したイ・ソンは、武装したナ・チョルチュたちと対峙します。父を殺して王座を得れば、私も父と同じだ。民の血と涙の上に築かれた王座に、何の意味があるというのだ!と、イ・ソンは涙ながらに訴えます。 さらに、計画がすでに露見しており、すぐに都を去らなければ全員捕らえられると警告。彼の必死の説得と警告により、ナ・チョルチュたちは間一髪で追っ手から逃れることに成功します。
新たな火種、関西の書斎
暗殺計画は未遂に終わったものの、イ・ソンと英祖、そして老論派の間の溝はさらに深まります。英祖はイ・ソンの行動に疑念を抱きながらも、決定的な証拠がないため、ホン・ゲヒを叱責するに留めました。
そんな中、イ・ソンは新たな計画を始動させます。それは、ナ・チョルチュたちのような、体制から疎外された者たちに学びの場を与えるため、関西(クァンソ)地方に秘密の学堂書斎(ソジェ)を設立することでした。 これは、身分に関係なく人材を登用し、公平な世の中を作るという、彼の理想を実現するための大きな一歩でした。
しかし、この動きもまた、老論派の知るところとなります。キム・テクとホン・ゲヒは、イ・ソンが側近を関西に送るたびに、王の私財である内帑金(ネタンガム)から多額の金が引き出されていることを突き止め、世子と関西の反乱分子との繋がりを確信するのでした。
物語の終わり、イ・ソンはかつて老論派の重鎮でありながら、信念を貫き辞職したホ・ジョンウンのもとを訪れ、この書斎の指導者になってほしいと頼み込みます。老論派の彼が、世子の危険な理想に乗るのか?父子の絆、そして理想と現実の狭間で、イ・ソンの孤独な戦いはさらに激化していきます。
『秘密の扉』第21話の感想
血を流さずに世を変えたいと願うイ・ソンの理想は、あまりにも純粋で崇高です。しかし、その理想を追い求めるあまり、彼は常に危うい綱渡りを強いられています。父である英祖を暗殺の危機から救うため、自ら逆賊と対峙する姿には、彼の持つ優しさと正義感、そして深い苦悩が表れていました。一方で、その行動が父や臣下たちに更なる疑念を抱かせるという皮肉な結果を生んでしまうのが、この物語の切ないところです。
父・英祖もまた、息子を信じたい気持ちと、王として国を揺るがす火種を消さねばならないという立場の間で揺れ動いています。互いを想いながらもすれ違っていく父子の姿は、観ていて胸が締め付けられます。理想を実現するためには、清い道だけを歩むことはできないのかもしれない。そんな厳しい現実を突きつけられた回でした。
つづく