親友シン・フンボクの死の真相を追う世子イ・ソン。前回、父である王・英祖(ヨンジョ)の命令で、事件を不正に処理したホン警視を不問に付すという、屈辱的な結末を迎えました。しかし、これで終わるソンではありません。今回は、さらに巨大な陰謀の核心へと迫っていきますが、そこには新たな悲劇と、父・英祖の恐るべき帝王学が待ち受けていました。
不正役人にまさかの大出世!?イ・ソンの怒りと屈辱
物語は、英祖がイ・ソンに対し、不正捜査を行ったホン警視をなんと兵曹判書(国防大臣にあたる役職)に任命せよ、と命じる衝撃的な場面から始まります。心の中では怒りに燃え、ホン警視に掴みかからんばかりのソンでしたが、王の命令は絶対。表向きは笑顔で承諾し、自ら昇進の辞令を書くと約束します。しかし、その目が笑っていないことは、英祖も気づいていたかもしれません。
宮殿に戻ったソンは、すぐに側近のチェ・ジェゴンに調べはついたか?と確認。そう、ソンの反撃はすでに始まっていたのです。
一方、老論派の領袖キム・テクは、まんまと兵曹判書になったホンを仲間に引き入れ、英祖が心血を注いだ民のための税制改革均役法を廃止させようと企みます。これぞまさしく、悪のフルコース。自分たちの特権を守るためなら、民の暮らしなどお構いなしです。
盟約書の呪いと、すれ違う父子の正義
この老論派の動きに、ソンの師であるパク・ムンスは激怒。すぐさま英祖に危機を訴えますが、英祖はお前があの盟約書をきちんと処分しなかったからだと、逆にムンスを責め立てる始末。
ここで、過去の回想が挟まれます。英祖はかつて、老論派に命を脅され、彼らを王にするという不本意な盟約書に署名させられていました。王になった後も、その盟約書が弱みとなり、思うような政治ができないことに苦しんでいたのです。英祖はムンスに盟約書の捜索と破棄を命じていましたが、ムンスは破棄には同意できないと、たとえ国の停滞を招いても、不正な方法で解決すべきではないと主張します。
王座を守るためだという英祖と、政治を正すべきだというムンス。二人の正義は、決して交わることはありません。
天才少女の協力!偽造文書の謎を追え
イ・ソンは、親友フンボクが残したとされる誹謗中傷の手紙が、巧妙に偽造されたものではないかと疑っていました。そこで、天才的な観察眼を持つ貸本屋の娘ソ・ジダムに協力を要請します。ジダムの父は娘の身を案じながらも、彼女の意志を尊重し、ソンは必ず彼女の安全は守ると固く誓うのでした。
ジダムの鑑定は的確でした。手紙は、何年も前に書かれたように見せかけた、達人による偽造品だと見抜きます。そして、これほどの技術を持つ偽造職人として3人の名を挙げますが、その中にいたチュン・スンセという名に、ソンは息を呑みます。彼は、フンボクの事件で偽の目撃証言をした男だったのです。
新たな犠牲者と、忍び寄る刺客の影
ソンたちがチュン・スンセの行方を追うと、時を同じくして、キム・テクの命を受けたソンの護衛官ピルジェも彼を探していました。ピルジェこそが、これまで暗躍してきた刺客影(シャドウ)だったのです。
ソンたちは一足先にチュン・スンセを追い詰めますが、彼が何かを語ろうとした瞬間、どこからか矢が飛んできます。ソンはとっさにジダムをかばい、腕を負傷。混乱の中、逃げようとしたチュン・スンセは、刺客の放った第二の矢に胸を貫かれ、絶命してしまいます。彼は死の間際にカ…カ…という謎の言葉を残しました。
そこにパク・ムンスと、彼と協力する東側の頭領チョルチュが駆けつけ、刺客と対峙。チョルチュと刺客影の激しい戦いが繰り広げられますが、惜しくも取り逃がしてしまいます。しかし、チョルチュは刺客が落とした血の付いた布を手に入れていました。
父の教え。完璧な臣下より、必要な臣下を使え
傷を負い、重要な証人を目の前で殺されたソンは、怒りと無力感に苛まれます。一人の命を失ったことが悔しい。これ以上、誰も失いたくないと。
宮殿に戻ると、父・英祖が待っていました。ソンの血に染まった袖を見るや、父の顔で心配し、誰にやられたのかと問い詰めます。しかし、ソンはその答えは父上、あなたがすべきものですと返し、なぜ父が命を狙われるのか、なぜホンを兵曹判書にしたのかと問い詰めます。
英祖はソンを兵曹判書になったホンが働く職場へ連れて行きます。そこには、ホンが寝る間も惜しんで記録を調べ、不正を洗い出している姿がありました。英祖は言います。私は彼が、この職務に必要な人間だと判断したのだと。
そして、王座にソンを座らせ、隣に並んでこう諭しました。
完璧な臣下より、必要な臣下を使え。これが父のやり方であり、お前が学ばねばならぬ政治の現実だ
英祖はソンの秘密捜査を続けることを認め、何か分かったら、真っ先に私に知らせよと告げます。その言葉は息子の身を案じる父のようにも、全てを掌握しようとする王のようにも聞こえ、彼の真意は深い闇に包まれたままでした。
一方、刺客ピルジェは、殺した偽造職人に作らせていた盟約書の写しを手に、不気味に微笑むのでした。主であるキム・テクをも裏切るつもりなのでしょうか。謎はさらに深まっていきます。
『秘密の扉』第5話の感想
今回は、英祖という人物の多面性が際立つ回でした。老論派の言いなりになっているかと思えば、彼らを牽制するような人事を断行する。息子を心配する父親の顔を見せたかと思えば、冷徹な王として非情な政治哲学を説く。彼の行動原理は一体どこにあるのか、その底知れなさが物語に強烈な緊張感を与えています。イ・ソンが父の教えを受け、政治の現実を知りながらも、なお失われない民への思いと正義感が、観る者の心を強く打ちます。証人を目の前で殺され、自らも傷を負うという過酷な状況で彼が流した涙は、単なる悔しさだけでなく、為政者としての責任の重さを自覚した者の涙だったように感じました。複雑に絡み合う登場人物たちの思惑と、歴史の大きなうねりの中で、父と子がどう対峙していくのか、目が離せない展開です。
つづく