第3話は、一見すると単純な交通事故。でもその裏には、人間の心の複雑さが渦巻いていました。早速、あらすじとネタバレからいってみましょう!
物語は、ヒョミンの過去の回想から始まります。蝶がサナギから羽化する姿に人生を重ねる彼女。しかし、その美しい比喩とは裏腹に、彼女が心因性失読症と診断される辛い過去が明かされます。この冒頭シーンが、今回のエピソード全体のテーマを暗示しているんですよね。
そして現代。アイリッシュコーヒー(ウイスキー入りのコーヒーです!)を飲んでいい気分で配達中だったドライバーのトクホが、公園のそばで急ブレーキ!目の前では、少年ミングクが脚を押さえて泣き叫んでいます。駆けつけた警官による飲酒検査でアウトとなり、トクホは逮捕。ミングクは母親のイ・サンミに連れられて病院へ運ばれます。
ところが、診断の結果、ミングクの脚には衝突による外傷がないことが判明。監視カメラの映像も、トクホの車が彼に接触していないことを裏付けていました。しかし、現にミングクは歩けない。一体どういうことなのか?
この奇妙な事件、原告側、つまりミングク側の代理人は、なんと大手法律事務所のイ&ソ。大した事件でもないのに、なぜ?どうやらミングクの家族が裕福で、楽な示談金狙いのようです。
これに対し、我らがソクフンが面白そうだとばかりにトクホの弁護を引き受けます。そして、ヒョミンを連れて精神科医のもとへ。そこで出てきたのがノセボ効果という言葉。ミングクは車に轢かれたと強く思い込むことで、実際に体に症状が現れてしまったのではないか、というのです。物理的な証拠はないけれど、精神的なダメージは確かにある。これは一筋縄ではいかない裁判になりそうです。
一方、法律事務所ユルリムでは、新人たちが夜通しの雑務でヘトヘト。ヒョミンなんて、新聞に顔を押し付けて寝てしまったらしく、頬にインクをつけたまま会議に出席する始末。これにはソクフンも呆れ顔です。
そのソクフン自身も、大きな転機を迎えていました。引退を決意したコ弁護士から、後継者として事務所の経営パートナーにならないかと打診されるのです。しかしソクフンは、これを毒杯だと一蹴。彼は、CEOや古い付き合いに頼りきりで、実力のないパートナーたちが寄生している事務所の現状を冷静に見抜いていました。彼らを切り捨てなければ未来はない。コ弁護士が自分をそのための処刑人として利用しようとしている魂胆を見抜き、きっぱりと断るのでした。
さて、事件に話を戻しましょう。相手方との示談交渉の日、ヒョミンとソクフンは、元カレでもあるソンチャン弁護士の汚い手口にはめられます。わざと会議時間を30分早く伝えられ、大遅刻。相手のペースで話は進み、なんと2億ウォンもの示談金と、トクホへの重い処罰が要求されます。
しかし、ここで黙っているソクフンとヒョミンではありません。遅れて登場した二人は、準備不足のソンチャンを因果関係は常識の問題だという曖昧な主張で追い詰め、形勢を逆転させます。さらにソクフンは、ヒョミンに公判前整理手続での代理人を任せるという大胆な采配を見せます。
ヒョミンは、持ち前の細やかさで、ミングクの精神鑑定を提案。これが認められ、ソクフンからもよくやったと褒められます。彼女の調査は止まりません。ミングクが週に5、6回も通院しているのに、処方箋の記録がないことを突き止めます。
この事実からソクフンが導き出した仮説は、母親イ・サンミによる代理ミュンヒハウゼン症候群。過度な不安が、息子の健康に対する異常な執着を生み、無意識に病気を作り出しているのではないか、というのです。ソクフンは、母親の責任を徹底的に追及する方針を決めます。
このやり方に、ヒョミンはどこか納得がいきません。そんな中、彼女の母親がアパートに押しかけてきて、少し欠けているという理由だけでお皿を捨ててしまうという出来事が。障害を持つ双子の妹のこともあり、母親との根深い確執が爆発。ヒョミンはソンチャンと別れたことも母親に告げ、親子関係はさらにこじれてしまいます。
法廷では、衝撃の事実が明らかになります。なんと、4歳を過ぎたミングクに対し、母親のサンミがまだ授乳を続けていたのです。幼稚園に通い始めてわずか1週間。母親からの自立に苦しむミングクの姿が、事件の背景にある依存関係を浮き彫りにしました。
ソクフンは、サンミを法廷で容赦なく切り捨てます。この世には、母親になりたくない人もいれば、母親になるべきでない人もいる。その冷徹な言葉は、サンミだけでなく、ヒョミンの心にも突き刺さりました。
法廷の後、ヒョミンはソクフンに、自分の家族…特に、自分を助けるためにキャリアを犠牲にした母親と双子の妹の話を打ち明けます。ソクフンの言葉が、まるで自分の家族を攻撃しているように感じられた、と。
そして、エピソードの最後。なぜソクフンが母親という存在にこれほどまでに冷淡なのか、その理由が示唆されます。5年前、彼は同棲していた恋人の妊娠検査薬を見つけ、喜びます。しかし、彼女は結婚するまで子供は作らない約束でしょと冷たく否定。彼が席を外した隙に、その検査薬を隠すのでした。この辛い過去が、彼の心に深い影を落としていたのです。事件の行方と、二人の弁護士の心の傷。物語は、ますます深みを増していきます。
『エスクワイア: 弁護士を夢見る弁護士たち』第3話の感想
今回のエピソードは、単なる法廷ドラマの枠を超え、母と子という普遍的でありながら、非常にデリケートなテーマに深く切り込んでいました。物理的な証拠がないノセボ効果による傷害と、目に見えない代理ミュンヒハウゼン症候群という精神的な問題。これらを法廷でどう扱うのか、非常に見応えがありました。
特に印象的だったのは、ソクフンとヒョミンの対立です。事実と論理で母親を追い詰めるソクフンの冷徹な弁護スタイルと、被告人や関係者の感情に寄り添おうとするヒョミンの人間的なアプローチ。この対比が鮮やかでした。しかし、物語が巧みなのは、彼らの対立が単なる手法の違いではなく、それぞれが抱える個人的な傷に根ざしていることを明らかにした点です。ソクフンの過去の恋愛における裏切り、ヒョミンの母親や妹との複雑な関係。他人の事件を通して、自分自身の過去と向き合わざるを得なくなる二人の姿に、物語の奥行きを感じました。弁護士である前に一人の人間である彼らの葛藤が、このドラマを単なる勧善懲悪ではない、深みのある人間ドラマに昇華させていると感じます。
つづく