あらすじ

10年間、玳山に幽閉されていた帝梓元(ていしげん)が、ついに都へ帰還するという知らせが届きます。しかし、その帰還には「帝承恩(ていしょうおん)」への改名という屈辱的な条件が課されていました。一方、皇太子の韓燁(かんよう)は、勝ち気な女海賊・任安楽(じんあんらく)の中に、かつての許婚の面影を強く感じ、心を揺さぶられます。帝家の旧屋敷である靖安侯府を巡っては、皇帝と皇子たちの間にも亀裂が生じ始めます。そんな中、安楽は自らの目的を果たすため、そして帝家の誇りを取り戻すため、大胆な行動で周囲を翻弄していきます。偽りの姫の帰還が、都に新たな波乱を巻き起こすのでした。

ネタバレ

ついに玳山(たいさん)に幽閉されていた「帝梓元(ていしげん)」が、10年の時を経て都へ帰ってくるという知らせが舞い込みました。しかし、その帰還は誰もが予想しなかった形で幕を開けます。今回は、偽りの姫の登場によって、登場人物たちの心が大きく揺れ動く第12話の展開を、ブロガー目線で熱く語っていきます!

偽りの姫、帝承恩(ていしょうおん)の誕生

太后からの聖旨は、帝梓元の帰京を許すというものでした。しかし、そこには「帝承恩(ていしょうおん)」へと改名するという、帝家にとってこれ以上ない屈辱的な条件が付けられていたのです。

驚くべきことに、玳山にいた偽物の帝梓元は、この条件をあっさりと受け入れます。彼女にとって「帝梓元」という名前は、10年間自分を山に縛り付けた鎖でしかありません。権力と自由を手に入れるためなら、帝家から受けた恩も、その名が持つ誇りも、彼女はためらいなく捨て去るのでした。彼女の世話役である慕青(ぼせい)は、その恩知らずな態度に怒りを感じつつも、8歳まで温かい食事も知らず、その後は身代わりとして幽閉されてきた彼女の境遇に同情し、共に山を下りることを決意します。

揺れる韓燁(かんよう)と安寧(あんねい)の心

一方、皇太子の韓燁(かんよう)は、記憶の中の帝梓元を頼りに肖像画を描いていました。しかし、不思議なことに、完成したその顔は任安楽(じんあんらく)にそっくりだったのです。彼は、誇り高かったはずの梓元が改名という屈辱を受け入れたことに、言葉にできない複雑な感情を抱きます。それでも、彼女が山を下りるための苦渋の決断だったのだろうと、自分を納得させようとします。

妹の安寧(あんねい)公主(あんねいこうしゅ)は、兄よりもずっとストレートに怒りを爆発させます。父である皇帝・韓仲遠(かんちゅうえん)に猛抗議しますが、皇帝は聞く耳を持ちません。それどころか、子供たちが帝家のために自分に逆らうことに激怒し、帝家の旧屋敷である靖安侯府を、なんと刑部の大牢に変えるという非道な命令を下してしまうのです。

靖安侯府での密会と鉢合わせ

その頃、任安楽(じんあんらく)は洛銘西(らくめいせい)と共に、思い出の地である靖安侯府を訪れていました。そこで皇帝の新たな命令を聞いた安楽は、自嘲の笑みを浮かべます。韓家から立て続けに受けた屈辱に、彼女の復讐心はますます燃え上がります。

そこへ、韓燁(かんよう)と安寧がやってくる気配が。安楽と洛銘西は慌てて假山の後ろに身を隠します。兄妹は、変わり果てた屋敷を前に、帝家への罪悪感と後悔を口にしていました。安寧は、韓燁が10年も会っていない許婚に固執するのは、帝家の悲劇そのものが彼の血肉となっているからだと語ります。

静かに立ち去ろうとした二人ですが、うっかり物音を立ててしまい、韓燁たちに見つかってしまいます。絶体絶命のピンチ!しかし、ここで安楽はその度胸を見せつけます。「皇太子妃の座を争う“恋敵”の帝梓元さんがどんな人か知っておこうと思って」と、刑部の大牢(になる場所)を見に来たのだと、しれっと言い放つのです。

翎湘楼での探り合いと、偽りの姫の都入り

気まずい雰囲気の中、4人は翎湘楼(れいしょうろう)で酒を酌み交わすことに。安楽の提案で始まった琴の音に合わせて花を回すゲームでは、彼女が韓燁や安寧に鋭い質問を投げかけ、場の空気がピリつきます。花が洛銘西に渡った際には、彼がなぜ頻繁にこの店を訪れるのかという話になり、皆は花魁の琳琅(りんろう)が彼の想い人だと察しますが、彼はそれを否定しませんでした。

数日後、ついに帝承恩(ていしょうおん)を乗せた馬車が都に到着します。華やかな街並みを見つめ、彼女は二度とあの山には戻らないと心に誓うのでした。しかし、宮中での扱いは冷たく、用意された住まいで役人たちから侮辱的な態度を取られます。それでも帝承恩は意に介さない素振りを見せますが、慕青は「殿下(韓燁)が愛しているのはあくまで帝梓元だ」と釘を刺します。

そこへ洛銘西が現れ、彼女の化けの皮を剥がそうと試すような会話を仕掛けます。帝承恩は完璧な受け答えで乗り切りますが、洛銘西は彼女が囲碁の定石で一つだけ間違いを犯したことを見抜いていました。彼は慕青を呼び出し、「帝承恩に何かあればお前の命はない」と、冷徹に警告するのでした。

『安楽伝』第12話の感想

偽の帝梓元、帝承恩の登場で、物語は一気に複雑さと深みを増しました。彼女が背負ってきた境遇には同情の余地があるものの、その野心としたたかさは、今後の大きな波乱を予感させます。本物の帝梓元である安楽が、自分の家だった靖安侯府で、韓燁と安寧の帝家を想う会話を隠れて聞くシーンは、非常に切なく胸が締め付けられました。自分の正体を明かせないもどかしさと、復讐という重い使命の間で揺れる彼女の心情が痛いほど伝わってきます。

また、すべてを裏で操る洛銘西の冷徹な計画も恐ろしいです。彼は帝承恩と慕青を駒として使い捨てにする覚悟であり、その非情さが際立っていました。一方で、韓燁の純粋な想いや安寧の正義感が、この偽りの帰還によってどう変化していくのか。それぞれのキャラクターの思惑が緻密に絡み合い、物語から目が離せない緊張感を生み出しています。単純な善悪では割り切れない、人間ドラマの妙が光る回でした。

つづく