あらすじ
北西の戦場でついに再会を果たした任安楽(じんあんらく)と韓燁(かんよう)。しかし、敵の巧妙な計略により、安寧(あんねい)公主(あんねいこうしゅ)が守る青南城が予期せぬ危機に陥ります。もたらされた悲報は味方の陣営に大きな衝撃と混乱を巻き起こし、その責任を巡って仲間内に深刻な亀裂が生じる事態に。軍の統率と仲間への情の間で、韓燁は苦渋の決断を迫られます。一方、安楽もまた、友のためにある覚悟を決め、大胆な行動に出るのでした。
ネタバレ
ついに北西の地で再会を果たした任安楽(じんあんらく)と韓燁(かんよう)!お互いに傷を負いながらも、その顔には安堵の色が浮かびます。韓燁(かんよう)は、帝家の恨みを乗り越えて国のために駆けつけてくれた安楽に、素直な感謝の言葉を口にするのでした。そう、二人の間には血の仇という深い溝があるけれど、それ以上に守るべき国がある。この大靖がなくなれば、二人の居場所すら失われてしまうのですから。
その様子を遠くから見ていた溫朔(おんさく)と苑琴(えん きん)も、「やっと二人の間のわだかまりが解けた」と感慨深げ。韓燁(かんよう)もまた、安楽と再び会えたことを心から喜んでいました。
しかし、そんな束の間の平穏は、洛銘西(らくめいせい)の到着によって打ち破られます。彼がもたらした密報を皆で確認した瞬間、全員の顔色が変わりました。これは罠だ…!彼らが北秦の主力と戦っている間に、本命の敵が別の場所を狙う「調虎離山(ちょうこりざん)の計」にまんまとハマってしまったことに気づいたのです。
その頃、敵の真の狙いである青南城では、安寧(あんねい)公主(あんねいこうしゅ)が絶望的な戦いを強いられていました。圧倒的な兵力差の中、兵たちを城内へ退かせ、自らは血染めの鎧をまとって城門に立ちはだかります。鬼神のごとき強さで敵兵を次々となぎ倒す安寧(あんねい)。しかし、衆寡敵せず、次第に追い詰められていきます。
敵将・冷北(冷北 (れい ほく))は降伏を促しますが、安寧はそれを一蹴。彼女の覚悟は、死をもってこの城を守り抜くことでした。ついに無数の矢が彼女の体を貫き、その命を奪います。しかし、安寧は絶命の瞬間まで大靖の軍旗を固く握りしめ、天に掲げたままでした。その瞳には、死してなおこの地を守るという、燃えるような決意が宿っていたのです。
「もしあの時、静心堂に行かなかったら…帝家の滅亡の真相を知ることもなく、罪悪感からこの北西の地に来ることもなかったかもしれない。そうすれば、冷北と出会い、この青南山を失うことも…」。薄れゆく意識の中、安寧は自分の運命を呪います。父が願った「安康長寧(安らかで穏やかな人生)」とは、あまりにもかけ離れた壮絶な最期でした。
「青南城、陥落!安寧公主(あんねいこうしゅ)、戦死!」――その報は、韓燁たちの陣営に絶望をもたらしました。韓燁は、援軍を率いるはずだった洛銘西がなぜここにいるのかと激しく問い詰めます。部下の将軍も「洛銘西が勝手に進路を変えたせいで、安寧様は見殺しにされた!」と告発。兵士たちの怒りは頂点に達し、「安寧様の無念を晴らすため、洛銘西を処刑しろ!」という声が巻き起こります。
軍機を誤らせた罪はあまりにも重い。韓燁は軍の統率を保つため、苦渋の決断を下します。軍法に則り、洛銘西を牢へ入れ、後日斬首に処す、と。
安楽は「今は人手が必要な時です。彼に罪を償う機会を与えてください」と必死に助命を嘆願しますが、韓燁は首を縦に振りません。数万の将兵の心を繋ぎとめるには、これ以外の選択肢はなかったのです。
その後、安楽は安寧が遺した手紙を読み、涙に暮れます。
「青南城のそばには、帝家の冤罪で死んだ八万の魂が眠っている。だから、帝家のことが片付いたら、必ずここへ戻って彼らを弔うつもりだった。けれど、北秦に阻まれ、もはや戦死することでしか彼らに会いに行く勇気が出ない。青南から始まった私の贖罪は、この青南で終わらせる」
安楽は、必ず安寧の亡骸を故郷へ連れ帰ると、固く誓うのでした。
牢にいる洛銘西を訪ねた安楽は、自分の計画をほのめかし、「必ずあなたを助け出す」と約束します。そして翌朝、彼女は一通の書置きだけを残し、単身、青南城へと向かっていきました。溫朔はすぐにその跡を追いかけます。
事態を知った韓燁は、すぐさま軍を招集し青南城への進軍を命じますが、将軍たちは「まず洛銘西を斬らねば兵は動かない」と抵抗。韓燁は「私怨のために民を見捨てるのか!」と彼らを一喝。その気迫に過ちを悟った将軍たちは、韓燁と共に青南城へ向かうことを決意します。
道中で安楽に追いついた溫朔は、その勇気と見識に感銘を受け、同行を許されます。一行は夜陰に乗じて青南城へ奇襲をかけ、陽動部隊が敵の注意を引いている隙に、安楽は冷北の居場所を探し当てました。
「安寧の亡骸を渡しなさい!」
そう迫る安楽に対し、冷北は安寧が生前どれほど苦しんでいたかを語り、彼女の心を揺さぶります。そして、安楽が動揺した一瞬の隙を突き、毒の粉を投げつけました。絶体絶命!――その時、韓燁が駆けつけ、身を挺して安楽を守ります。形勢不利と見た冷北は、深手を負いながらも逃走。韓燁は、毒で意識を失った安楽を抱きしめ、追撃を諦めるのでした。
『安楽伝』第33話の感想
今回は、物語全体を通しても特に胸が締め付けられる回でした。安寧公主(あんねいこうしゅ)の退場はあまりにも突然で、悲壮感に満ちています。彼女が最後まで守ろうとしたもの、帝家への贖罪の念と大靖への忠誠心が、その壮絶な最期に凝縮されていました。彼女の死は単なる悲劇ではなく、残された者たちの関係性を根底から揺るがし、物語を新たな局面へと突き動かす大きな力となっています。特に、軍の規律と仲間への情の間で苦悩する韓燁、そして友の遺志を継ぎ単独で行動を起こす安楽の姿は、それぞれの正義と覚悟を浮き彫りにしました。この重い出来事を経て、彼らがどのような道を選択していくのか、その行方を静かに見守りたいと思います。
つづく