あらすじ
韓燁(かんよう)を失った悲しみから長い眠りについていた任安楽(じんあんらく)が、ついに目を覚まします。しかし、彼女を待っていたのは過酷な現実でした。帝家の未来を背負い、皇帝と直接対決する安楽。そこで彼女は、帝家と韓家の間に横たわる根深い確執の真実に迫ります。一方、崖から転落し、誰もが死んだと思っていた韓燁の意外な安否が明らかに。彼の身に起きたこととは?そして、長年皇帝を苦しめてきたある秘密が明かされ、物語は大きな転換点を迎えます。
ネタバレ
韓燁(かんよう)を失った深い悲しみから、任安楽(じんあんらく)は長い間眠り続けていました。ようやく目覚めた彼女の姿に、苑琴(えん きん)たちは息をのみます。なんと、彼女の髪は一夜にして真っ白に変わってしまっていたのです。しかし、安楽の瞳に宿る光は消えていませんでした。彼女はすぐさま皇帝・韓仲遠(かんちゅうえん)のもとへ向かいます。
皇帝の猜疑心に満ちた視線を受けながらも、安楽は毅然と言い放ちます。「帝家の罪は過去にはない。いずれ起こるかもしれない未来、それこそが陛下の恐れる罪でしょう」と。皇帝は、溫朔(おんさく)が帝家の血を引く帝烬言(ていじんげん)だと知り驚愕しつつ、洛銘西(らくめいせい)と溫朔の名誉回復を認めます。しかし、その条件は、溫朔を人質として都に留め、安楽は二度と都の土を踏まないことでした。皇権に目がくらんだ皇帝は、かつての親友であった帝家を、今や韓家の天下を脅かす存在としか見ていなかったのです。
安楽は怒りを押し殺し、帝家が大靖に永遠の忠誠を誓うことを約束します。しかし、「我々の去就を陛下が決める権利はない」と、皇帝の理不尽な要求をきっぱりと拒絶しました。
その後、安楽は溫朔を連れて伏翎山にいる帝家の先代家主・帝盛天(ていせいてん)を訪ね、溫朔を正式に帝家の一員として認めさせます。そして、安楽自身が帝家の新たな家主となることを宣言するのでした。帝盛天は、自らと先帝・韓子安(かんしあん)の悲しい過去を語り、安楽と韓燁(かんよう)には同じ道を歩んでほしくないと切に願います。
一方、崖から落ちた韓燁(かんよう)は生きていました。北秦の莫霜(ばくそう)に助けられたものの、毒の影響で両目の光を失っていたのです。莫霜は献身的に彼を看病しながら、安寧(あんねい)公主(あんねいこうしゅ)を死に追いやったのは自分だと自責の念に駆られていました。しかし韓燁は、彼女が自国のために行動したまでだと、優しく彼女を許すのでした。そして、自分が生きていることは誰にも伝えないでほしいと頼みます。
その頃、皇帝は安楽が伏翎山へ向かったと聞き、自らも山へ駆けつけます。長年、彼の心を苛んできた一つの疑問を帝盛天にぶつけるためでした。それは、先帝が帝家のために「皇帝を廃する」という聖旨を残したのではないかという疑いでした。しかし、帝盛天はその問いを一笑に付します。そんな聖旨は存在しない、と。そして、韓仲遠に宮殿にある「墨緑の鉄剣」を調べるよう促します。「お前の求める答えは、その中にある」と。
言われた通り剣を調べた皇帝は、その中に隠されていた本当の聖旨を発見します。それは、彼を廃するどころか、彼の即位を確固たるものにするためのものでした。長年の誤解が解けた瞬間、韓仲遠は自らの愚かさと猜疑心が生んだ悲劇の大きさに気づき、ただただ後悔の涙を流すのでした。
遠く離れた北西の地では、莫霜が作った天灯に、韓燁が願いを書き込んでいました。目は見えなくとも、彼の心はただ一人を想っています。夜空に高く昇っていく灯籠には、はっきりと「帝」の一文字が浮かび上がっていたのです。
『安楽伝』第36話の感想
今回は、物語の根幹を揺るがす大きな真実が明かされる、非常に重厚な回でした。韓仲遠が抱き続けてきた帝家への猜疑心、その原因が完全な誤解であったことが判明し、彼の後悔と絶望には胸が締め付けられます。この一つの誤解が、どれほど多くの人々の運命を狂わせ、悲劇を生んできたのかと思うと、言葉を失います。
一方で、白髪となりながらも帝家の家主として毅然と立ち向かう任安楽(じんあんらく)の姿は、痛々しくも力強く、彼女の覚悟のほどが伝わってきました。そして、韓燁の生存は一筋の光ですが、失明という新たな試練が待ち受けています。彼が莫霜と心を通わせ始めている様子も描かれ、安楽との関係がどうなっていくのか、複雑な思いで見ていました。登場人物それぞれの感情が深く掘り下げられ、見ごたえのある人間ドラマが展開されたと感じます。
つづく