あらすじ

長年の確執を経て、帝家と韓家はついに和解の道を歩み始めます。任安楽(じんあんらく)は皇帝と和解し、行方不明の韓燁(かんよう)を探すことを約束しました。一方、皇帝は息子をおびき出すために一計を案じ、その策は見事に成功します。しかし、都に戻ってきた韓燁は以前とは違う姿になっており、安楽との再会を拒んでしまいます。愛する人のために、安楽はある大胆な決断を下すのですが、その裏では彼女を想う別の人物が静かに苦しんでいました。

ネタバレ

長きにわたる帝家と韓家の確執に、ついに終止符が打たれる時が来ました。皇帝・韓仲遠(かんちゅうえん)が自ら任安楽(じんあんらく)を召し出し、10年前の帝家滅亡事件について、韓家の過ちを認めて深く頭を下げたのです。「これより君臣、互いに疑うことなし」という皇帝の言葉を受け、安楽もまた謝罪を受け入れました。そして、行方不明の韓燁(かんよう)を必ず探し出すと固く誓うのでした。帝家と韓家、二つの名家の間に、ようやく和解の光が差し込んだ瞬間でした。

その一方で、洛銘西の身体は限界に近づいていました。頻繁に血を吐く彼の姿を、琳琅(りんろう)はただ痛ましげに見守ることしかできません。何も知らない安楽が彼を訪ねてくると、洛銘西は自身の衰弱を隠し通します。安楽が薬を飲ませながら、これまでの彼の献身に感謝を述べると、洛銘西の胸には複雑な想いが込み上げるのでした。

さて、息子・韓燁(かんよう)の遺体が見つからないことから、その生存を信じる皇帝は一計を案じます。自らが病に倒れたという偽の情報を流し、韓燁をおびき出す作戦です。この策は功を奏し、父の危篤を知った韓燁は都への帰還を決意。彼の目を治せなかった莫霜(ばくそう)も、引き留める理由はありませんでした。

しかし、都に戻ってきた韓燁の姿に、誰もが息をのみます。彼は光を失っていたのです。変わり果てた息子の姿に心を痛めながらも、皇帝は必ず最高の御医に治させると約束します。そして、安楽との関係について、「自分の心に正直になれ。後悔するな」と、父として優しく諭すのでした。

韓燁は、自分が失明したことを理由に安楽に会うことを頑なに拒みます。彼女の重荷になりたくない、その一心からでした。そんな中、彼は帝家の生き残りである帝盛天(ていせいてん)と出会い、治療のかすかな望みを見出します。しかし、帝盛天(ていせいてん)が安楽に知らせようかと提案しても、韓燁は首を横に振るばかり。「もし彼女が都に残るなら、我らは君臣。もし靖南に帰るなら、我らは君民。もはや太子と太子妃の関係ではない」と、冷たく言い放つのです。

この韓燁の悲痛な決意を知った安楽は、彼のあまりの悲観に胸を痛めます。そして、愛する人のそばにいるため、彼女は大胆な行動に出ました。口のきけない侍女「子規(しき)」になりすまし、韓燁の世話を始めたのです。しかし、ぎこちないお茶の淹れ方から、韓燁はすぐにその正体を見破っていました。

そんな二人のもとを、洛銘西や溫朔が訪れます。溫朔は韓燁の無事を涙ながらに喜び、束の間、韓燁の顔にも笑みが戻りました。安楽が楽しそうに韓燁との幼い頃の思い出を語る姿を、洛銘西は静かに見つめています。安楽の幸せを誰よりも願う彼は、彼女を笑顔にするために育ててきた貴重な花「長思花」を、韓燁の治療のために使うことを決意します。この花こそが、彼の目を治す唯一の希望だったのです。

しかし、その決意を固めた直後、洛銘西は激しく喀血し、その場に倒れ込んでしまうのでした。

『安楽伝』第37話の感想

今回は、登場人物それぞれの愛の形が、あまりにも切なく胸に迫る回でした。韓燁が失明という重い現実を背負い、愛する安楽を突き放そうとする姿には、彼の深い愛情と自己犠牲の精神が痛いほど伝わってきます。そんな彼を想い、侍女にまでなって寄り添おうとする安楽の一途さもまた、心を打ちます。しかし、この二人の物語の陰で、静かに命を削っているのが洛銘西です。安楽の幸せだけを願い、自らが育てた希望の花を恋敵のために捧げようと決意した矢先に倒れるとは、あまりに悲痛です。三者三様の想いが複雑に絡み合い、物語に深い奥行きとやるせなさを与えていました。それぞれのキャラクターが抱える痛みに、ただただ引き込まれるばかりです。

つづく