あらすじ

失明した韓燁(かんよう)を献身的に支える任安楽(じんあんらく)。しかし、韓燁は彼女の身を案じるあまり、わざと冷たい態度で突き放そうとします。一方、自らの死期を悟る洛銘西は、安楽と共に、宿敵である冷北(冷北 (れい ほく))を追い詰めるための危険な策を講じることに。愛する人を守りたいと願う者、復讐を誓う者、それぞれの覚悟と想いが交錯し、物語は悲劇的かつ重大な局面を迎えます。登場人物たちの運命が大きく動く、見逃せないエピソードです。

ネタバレ

自らの命が尽きかけていることを悟り、すべてを諦めたかのように見える洛銘西。そんな彼に、侍女の琳琅(りんろう)は「必ず治せる方法が見つかる」と励ましの言葉をかけ続けます。彼女は洛銘西の命を受け、安寧(あんねい)公主(あんねいこうしゅ)を死に追いやった冷北(冷北 (れい ほく))の行方を追っていました。

一方、任安楽(じんあんらく)は失明した韓燁(かんよう)を献身的に介護していました。しかし、韓燁(かんよう)はわざと安楽に辛くあたり、彼女を自分から遠ざけようとします。安楽が心を込めて焼いた魚を差し出しても、癇癪を起して膳をひっくり返す始末。それでも安楽の決意は揺らぎません。黙って床を片付け、「何があってもあなたのそばにいる」と心に誓うのでした。その夜、泥酔した韓燁を介抱しながら、安楽は「普段はあんなに穏やかなのに…帝家の当主であるこの私を侍女のようにこき使うなんて」と、どこか楽しむように微笑むのでした。

翌日、韓燁は安楽を梅見に誘います。そして、彼女が本当は帝梓元(ていしげん)であると認めた上で、自分はもう君を守れない、だから靖南へ帰ってほしいと告げます。さらに、溫朔を通じて、以前死を覚悟した際に書いたという「絶筆信」を安楽に渡しました。そこには、国と民のために戦う太子としての覚悟、そして安楽への断ち切れない想いが綴られており、彼女の心を強く打ちます。

その頃、安楽と洛銘西は、いまだ野望を捨てない冷北(冷北 (れい ほく))を完全に排除するため、そして韓燁の本心を探るために、ある計画を立てます。それは、二人が結婚するという偽の知らせを流すことでした。

婚礼の噂はすぐに韓燁の耳に入り、彼の心をかき乱します。そして、洛銘西と安楽の祝宴の席。琳琅(りんろう)は、長年想い続けてきた洛銘西への別れの気持ちを込めて、最後の舞を捧げます。その舞が最高潮に達した瞬間、卑劣にも冷北が乱入。琳琅は咄嗟に洛銘西を庇い、その胸に剣を受けてしまいます。洛銘西の腕の中で、琳琅は最期の言葉を伝えきれぬまま、静かに息を引き取りました。最愛の人を失った洛銘西は、悲しみと怒りに燃え、冷北への壮絶な復讐を誓います。

安楽は、安寧(あんねい)と琳琅の仇を討つため、冷北を公主府におびき寄せる罠を仕掛け、ついに彼を包囲することに成功します。捕らえられてもなお、冷北は一切の反省を見せず、安寧の死にも何の罪悪感も感じていませんでした。その醜い姿に、洛銘西は彼を牢獄で永遠に苦しめることを命じます。

宿敵・冷北は捕らえられましたが、韓燁の目を治すための重要な薬草「長思花」がまだ手に入っていません。しかし、まるで奇跡のように、冷北が捕まったその日、琳琅が丹精込めて育てていた長思花が見事に開花したのです。

洛銘西は長思花を手に韓燁のもとを訪れ、自分と安楽の祝宴に来てほしいと伝えますが、韓燁はそれを断り、二人の幸せを祈るのでした。時を同じくして、安楽が婚礼衣装に身を包んでいると、長思花が手に入ったという朗報が届き、彼女の顔に驚きと喜びの色が浮かぶのでした。

『安楽伝』第38話の感想

今回は、登場人物たちの覚悟と犠牲が胸に突き刺さる、非常に重いエピソードでした。特に、洛銘西への一途な想いを胸に秘め、最期は彼を守って命を落とした琳琅の姿には、言葉を失います。彼女の死はあまりにも悲しく、洛銘西の慟哭がその悲しみを一層深いものにしていました。愛する人を失った彼の復讐の誓いは、物語の大きな原動力となるでしょう。一方で、互いを想いながらもすれ違い続ける安楽と韓燁の関係も、もどかしくも切ないです。韓燁が安楽を突き放すのは、愛しているからこそ守れないという苦悩の表れ。その不器用な優しさが痛いほど伝わってきました。多くの犠牲の上に、ようやく韓燁の治療の光が見えてきましたが、その代償の大きさに複雑な気持ちを抱かせる回でした。

つづく