あらすじ
都に凱旋した鎮西軍の将軍、李嶷(りぎょく)。彼はただ愛する崔琳(さいりん)と静かに暮らすことだけを願っていた。しかし、崔琳は天下泰平という大きな目的のため、李嶷に別の道を歩むよう促す。そんな二人の想いがすれ違う中、朝廷では崔家の力を抑え込むための政略結婚が画策される。崔琳を皇子の一人と結婚させようというのだ。この動きに対し、崔琳は誰もが予想しなかった大胆な一手で応じる。彼女の行動は宮廷に大きな波紋を広げ、皇子たちの間で彼女をめぐる激しい争奪戦が始まった。
ネタバレ
すれ違う想い、それぞれの覚悟
李嶷(りぎょく)の願いはすごくシンプルだ。天下の主が誰かなんて、もうどうでもいい。ただ崔琳(さいりん)へ帰りたい。そこで静かに暮らしたい。崔琳(さいりん)だって、本当はそうしたいに決まってる。 でも彼女は分かっている。この乱れた世の中には、ちゃんとしたリーダーが必要だってことを。そして、その器があるのは李嶷(りぎょく)だけだと信じている。
だから、彼女は彼の申し出を断るしかない。お互いのために、少し距離を置いて冷静になろうと告げる。 李嶷(りぎょく)が背を向けて去っていく。その姿が見えなくなった途端、崔琳(さいりん)は声を上げて泣き崩れた。 言えなかった本心と、どうしようもない現実が、涙になって溢れ出す。
都に渦巻く新たな火種
鎮西軍が都に帰ってきた。役人たちは盛大な歓迎式典をやろうと張り切る。でも李嶷は、そういうのが嫌いだ。きっぱりと断った。 一方、都のお嬢様たちは大騒ぎ。あの李嶷が帰ってきた。一目見ようと、道端に群がっている。
その様子を見て、顧丞相(こしょう)に耳打ちする。他の女に先を越されるなと。でも、顧婉娘はとっくに自分の考えを持っていた。彼女は三日後に李嶷を訪ねるつもりだ。ある人物を連れていくために、その到着を待っていた。
そして約束の日、彼女は李嶷の乳母を連れて現れた。 李嶷は驚き、大喜びする。これは効いた。彼は顧婉娘の気遣いに、すっかり感謝してしまう。
崔琳、逆転の一手
その頃、宮廷では新皇が頭を悩ませていた。崔家の功績にどう報いるべきか。良い案が浮かばない。そこへ皇子の一人、李崶(リーリー)が進み出る。自分が崔家の娘、崔琳を娶るのはどうかと提案した。政略結婚で崔家を味方につければ、彼らも大人しくなるかもしれない。 新皇は、この提案に飛びついた。
この話はすぐに崔琳たちの元へ届く。父の崔倚(つい より)は激怒した。でも崔琳は、これをチャンスだと捉える。逆手にとって、こっちの土俵で戦ってやろうと。
彼女は大胆な行動に出た。新皇へ手紙を送る。皇子に嫁いでもいい。ただし、相手は私が選ぶ。 この一言が、朝廷を真っ二つに割る。崔琳は皇室にふさわしいのか、大論争が巻き起こった。皇子たちは皇子たちで、崔琳をめぐる争奪戦を開始する。都は一気にきな臭くなった。
鎮西軍の仲間たちは、これを崔琳から李嶷へのメッセージだと解釈する。お前が立候補しろと李嶷をけしかける。でも李嶷は、まったく浮かぬ顔。心ここにあらずといった様子だ。
楽游原での約束
ある日、老鮑(おうぼう)が興奮して駆け込んでくる。崔琳が城外で会いたがっている、と。李嶷の表情は、それでも晴れない。むしろ、深いため息をついた。もし彼女が本当に自分と結婚する気なら、こんな風にこっそり会うはずがない。彼には分かっていた。
楽游原で、二人は向き合う。李嶷はまっすぐに聞いた。俺と結婚してくれるか。崔琳は答える。心からそうしたい。でも、今の状況では気持ちを隠さないといけない。 李嶷には理解できない。お互い好きなのに、なぜ一緒になれないのか。
崔琳は静かに彼に告げる。あなたはもう、ただの十七郎じゃない。牢兰关に帰りたくても、帰れない立場なんだ。皇太子になるしかない。李嶷は彼女の手を握り、問い詰める。俺が皇太子になったら、結婚してくれるのか。崔琳は、仕方なくはいと答えた。
その直後、信王(しんおう)府が火事だという知らせが届く。李嶷は、ただの火事ではないと直感する。李崶は、これを信王(しんおう)の自作自演だと推測した。崔琳を娶るために、邪魔な自分の妃を殺したのではないか、と。
感想
いやあ、今回は崔琳の覚悟が凄まじかった。好きな男を天下のために突き放して、さらに皇太子への道へと焚きつけるなんて、並大抵の精神力じゃできない。李嶷のただ一緒にいたいっていう純粋な気持ちが、見ていて本当に切ない。権力なんて興味ないのに、運命が彼をその渦中に引きずり込んでいく。
一方で、顧婉娘の動きもいやらしい。乳母を連れてくるなんて、人の心の弱点を知り尽くしたやり方だ。ああいう静かな策略家が一番怖い。
でも、一番スカッとしたのは、崔琳の結婚相手は私が選ぶ宣言。男たちの権力争いの駒になることを拒否して、逆に彼らを手玉に取る。この強さこそ彼女の魅力だ。最後の皇太子になったらという約束は、二人の関係を新しい段階に進めたけど、これがとんでもなく辛い道のりの始まりなんだろうなと感じさせる。信王府の火事も不穏で、一気にサスペンスの色が濃くなってきた回だった。
つづく