悪夢の桐康村…そこに広がっていた地獄絵図
物語は、我らが名探偵・狄仁傑(てき じんけつ)が、新たな手がかりを掴んで桐康村へ向かうところから始まります。しかし、彼がそこで目にしたのは、信じがたい光景でした。
なんと、村人たちが互いに殺し合い、村中が死体で埋め尽くされていたのです!?
一体何が起きたのか?狄仁傑(てき じんけつ)が呆然とする中、錯乱した一人の婦人が襲いかかってきます。彼女が何かを知っているのかと思いきや、あたり一面に火の手が上がり、夜空には無数の花火が…。血の海と化した村を照らし出す花火の美しさが、逆に不気味で、黒焰の異常なまでの悪意を感じさせます。
この惨劇こそ、黒焰が仕組んだ壮大な罠の始まりだったわけです。
曹安(そう あん)の告白と、引き裂かれる二人の心
一方、黒焰に囚われていた曹安(そう あん)も、無事に(?)狄仁傑(てき じんけつ)のもとへ。しかし、彼女の口から語られたのは、衝撃の事実でした。
なんと、曹安(そう あん)は過去に黒焰と面識があり、彼から歌を習っていたというのです。今まで黙っていたのは、黒焰はてっきり海に飛び込んで死んだものだと思っていたから…。
この告白は、狄仁傑の心に深い疑念の影を落とします。愛する人が、自分を追い詰める宿敵と過去につながりがあったなんて…。信じたい、でも信じきれない。この一件で、狄仁傑と曹安の間に、修復困難な亀裂が生じてしまうのです。ああ、切なすぎる…?。
【ネタバレ】桐康村大虐殺の恐るべき真相
さて、ここからが核心のネタバレです。なぜ村人たちは殺し合ったのか?牢に入れられた唯一の生存者・郎夫人の口から、そのおぞましい手口が語られます。
事の発端は、一枚の貼り紙でした。
「お前たちが飲んでいる井戸水には、毒が盛られている」
最初は誰も信じませんでしたが、一人が苦しみだして死亡(※実はこれは別の殺人事件)。村はパニックに陥ります。そこへ、第二の貼り紙が。
「解毒薬は木の上の壺の中。ただし、二日後までに村の人口が半分になっていなければ、手に入れることはできない」
…ヤバくないですか?この一文で、昨日までの隣人が、生き残りをかけた敵に変わるわけです。人々は疑心暗鬼にかられ、たった一つの解毒薬(と信じ込まされたもの)を奪い合うために、殺戮を始めました。
そして、狄仁傑が突き止めた真実はさらに残酷なものでした。
そもそも、井戸に毒など盛られていなかったのです。
黒焰は、村で起きた一つの殺人事件を利用し、巧みな心理操作で村人たちを操り、自滅させただけ。人間の「生きたい」という欲望を極限まで煽り、地獄を作り出したのです。その動機は、この村の郎家の息子が、かつて黒焰が関わった事件の被害者・蕭純玉(しょう じゅんぎょく)と結婚したことへの、歪んだ復讐でした。黒焰の正体が、染物屋の事件で名前が挙がった楚磊(そ らい)であることも、ほぼ確定となります。
新たな脅迫…蘭坊全土が人質に!
事件の真相を掴んだ狄仁傑は、黒焰と直接対決するため、保護下に置いた林藩(りん はん)を通じて接触を試みます。しかし、黒焰は常に一枚上手。
街のあちこちに、新たな貼り紙が張り出されます。
「五日後までに、体に黒焰の印がない者を皆殺しにする」
ついに、黒焰の魔の手は蘭坊の民すべてに及ぼうとしています。狄仁傑はこの未曾有の脅迫にどう立ち向かうのか?そして、曹安との関係はどうなってしまうのか?
『大唐狄公案 神探、王朝の謎を斬る』第27話の感想
黒焰の悪意が人間の心理を巧みに操り、桐康村を地獄絵図に変えた様は、ただただ恐ろしい。武力ではなく、人の心の脆さや欲望を利用する手口に戦慄を覚えました。また、狄仁傑と曹安の間に生じた亀裂も痛ましく、信頼が揺らぐ中で狄仁傑がどう真相に迫るのか、その過程から目が離せません。物語の核心に迫る、非常に重厚な回でした。
つづく