蘭坊を覆う謎の核心、「黒焔」の正体に迫る狄仁傑(てき じんけつ)。ついに迎えた対面の時、彼は自身の過去と深く関わる衝撃の真実を知ります。避けられぬ対決は、彼の心に深い傷を残し、婚約者である曹安(そう あん)との関係にも影を落とすことに。二人の未来を願い、旅に出ますが、その道のりは決して平穏なものではありませんでした。

「大唐狄公案 神探、王朝の謎を斬る」あらすじネタバレ29話

今回の『大唐狄公案』第29話は、息つく暇もないほどの衝撃展開でしたね…。ついに、蘭坊を影で操っていた「黒焔」の正体、そして狄仁傑(てき じんけつ)の過去にまつわる、あまりにも悲しい真実が明かされました。早速、怒涛の展開を振り返っていきましょう!

ついに明かされる「黒焔」の正体と、悲しき兄弟の因縁

夜の静寂の中、狄仁傑(てき じんけつ)はついに黒焔との対面の時を迎えます。しかし、その前に彼は同行する林藩(りん はん)に、ある物語を語り始めます。それは、表向きは死んだはずの楚磊(そ らい)の、誰も知らないもう一つの物語でした。

「年若い頃から悪党とつるみ、人の心の醜さの底を見てきた男がいた。終わらない殺し合いの中で心をすり減らし、生きるために非情になり、世界への怒りだけを募らせていった…」

狄仁傑(てき じんけつ)が語るその物語は、あまりにもリアル。そう、彼が語っていたのは楚磊の話ではなく、目の前にいる林藩自身の物語だったのです!

狄仁傑の言葉に、林藩の表情が凍りつきます。彼の正体は、なんと長年行方不明だった狄仁傑の兄、狄英(てき えい)だったのです!

驚きの真相はこうでした。狄英は、父・狄知遜(てきちそん)と決別してまで憧れた「黒焔」に裏切られ、屈辱と暴力の中で歪んでしまったのです。そして、本物の林藩が死んだことを利用して彼になりすまし、自らを傷つけて曹安(そう あん)の前で「黒焔に罰せられた」と芝居を打つことで、自分への疑いを巧みに逸らしていたのでした。

「弱肉強食」の兄 vs 「法治」の弟…悲劇の対決へ

「なぜ今まで正体を隠していた?」と問う狄仁傑に、兄・狄英は自らの歪んだ思想を語り始めます。「俺は“強者がすべてを支配し、弱者はひれ伏す”この蘭坊が好きだ」と。

法の下の秩序と、弱者が安心して暮らせる世を望む狄仁傑。

力と暴力こそが真理だと信じる狄英。

同じ父を持ちながら、光と影のようにあまりにも違う道を選んだ兄弟。狄仁傑は、変わり果てた兄の姿に「父上があなたを家から追い出したのは正しかった。今のあなたは、あまりにも哀れだ」と悲痛な言葉をぶつけます。

その一言が、最後の引き金となりました。激昂した狄英は狄仁傑に襲いかかり、兄弟は死闘を繰り広げます。互角の戦いの末、狄仁傑の剣が、ついに兄の胸を貫きました。

「狄家が俺の始まりであり、終わりでもあったか…」

そう自嘲しながら息絶える兄…。この世で最後の肉親を、自らの手で殺めてしまった狄仁傑。幼い頃の思い出の木剣も壊れ、彼の心は深い闇に沈んでいくのでした。

兄の死が落とす影…狄仁傑と曹安(そう あん)に生まれる溝

兄の死から立ち直れない狄仁傑。そんな中、馬栄(ば・えい)や洪亮(こうりょう)(こうりょう)(こうりょう)(こうりょう)は、重陽節も近いことから狄仁傑と曹安(そう あん)の結婚を後押しします。しかし、狄仁傑は投げやりに日取りを決めるだけ。しかも、その日は不吉とされる日食の日でした。

兄を殺したという重い十字架が、狄仁傑と曹安の間に見えない壁を作っていました。彼の心を閉ざした様子に、洪亮(こうりょう)(こうりょう)(こうりょう)も心配を隠せません。

そんな中、曹安がある提案をします。

「南にある月牙泉へ旅に出ませんか? 憂いを晴らすと言われる泉です。二人の未来のために、祈りを捧げましょう」

健気な曹安の申し出に、狄仁傑は静かに同意します。

しかし、旅立つ二人の雰囲気は、どこかぎこちなく重苦しいまま。洪亮(こうりょう)は、狄仁傑が愛剣「雨龍剣」をわざと屋敷に忘れていったことに気づきます。それは、彼の心の迷いの表れなのでしょうか…。

旅の途中、林の中で火をおこし、黙々と食事をする二人。そこには温かい会話もなく、ただ沈黙が流れるばかり…。

いやー、切ない!悲しすぎる兄弟の結末に、胸が張り裂けそうでしたね。そして、ようやく結ばれるかと思った狄仁傑と曹安の関係にも暗雲が…。この旅は、二人の心を再び結びつけることができるのでしょうか? それとも…?

『大唐狄公案 神探、王朝の謎を斬る』第29話の感想

第29話は、物語の核心に迫る非常に重厚な回でした。蘭坊を支配する「黒焔」の正体が、まさか狄仁傑の兄・狄英であったとは、想像を絶する展開です。理想と信念の違いから避けられなかった兄弟の対決は、あまりにも悲痛でした。兄を手にかけた狄仁傑の心の痛み、そして彼と曹安の間に生じた距離感が丁寧に描かれており、物語に一層の深みを与えています。アクションだけでなく、登場人物たちの内面の葛藤が光る、大変見応えのある内容でした。

つづく