紫禁城での生活は食糧難で厳しさを増していた。そんな中、宮中で幽霊が出るとの噂が広まり、特に栄恵太妃(えいけいたいひ)は夜な夜な現れる人影に怯え、心身ともに衰弱していく。料理番の栄児(えいじ)と元侍衛の李琪(り・き)は、この怪奇現象が何者かによる巧妙な罠だと見抜く。二人は太妃たちを守り、宮中に隠された秘密を暴くため、危険を顧みずに調査を開始。果たして、暗い宮殿に渦巻く陰謀の正体とは何なのか。サスペンスフルな展開が加速する。

「溥儀の料理番」あらすじネタバレ32話

紫禁城に残された人々の食糧事情は、日を追うごとに厳しくなっていました。李琪(り・き)が苦労して持ち帰った食材も、両宮の妃たちを賄うには到底足りず、料理番であるはずの栄児(えいじ)自身が空腹を抱える始末。その姿を見た李琪(り・き)は、自分の無力さを噛みしめながらも、栄児にだけは無理をしないでほしいと心から願うのでした。

そんな中、青児(せいじ)が咳の止まらない太妃のための梨スープを取りにやってきます。太妃の体調を心配した栄児は、かつて暮らした重華宮に栄養のある食材や燕の巣が残っているはずだと考え、取りに戻ることを決意。青児の助言もあり、李琪(り・き)が護衛として付き添うことになりました。

しかし、二人が重華宮に忍び込んだことは、すぐに裕(ゆう)公公の耳に入ります。彼の差し金で、栄児と李琪は重華宮に閉じ込められてしまいました。さらに、裕公公(ゆうこうこう)は部下に命じて「重華宮に泥棒が入った」と兵士たちに嘘の情報を流させ、二人を捕らえさせようと画策します。万事休すかと思われたその時、偶然通りかかった彩碧(さいへき)が閉じ込められた二人を発見し、間一髪で救出。命拾いした栄児と李琪は、この一件が単なる偶然ではなく、宮中の宝を狙う盗賊によるものだと確信し、より一層警戒を強めるのでした。

一方、宝の隠し場所である地下室の浸水を恐れる裕公公(ゆうこうこう)は、さらなる卑劣な計画を進めます。彼は、夜な夜な人影に怯える栄恵(えいけい)太妃の不安を煽り、「ここはかつて太妃と親しかった珍妃(ちんぴ)が住んでいた場所。きっと会いに来ているのですよ」と囁き、恐怖心を植え付けます。すっかり怯えた栄恵太妃(えいけいたいひ)は、亡き端康(たんこう)太妃を祀ることで難を逃れようと考え、栄児に故人が好んだ桂花餡のお菓子を用意するよう命じました。

しかし、亡霊が眠ると噂される慈寧宮(じねいきゅう)へのお参りを、侍女たちは気味悪がって誰も行きたがりません。結局、青児が皆を無理やり引き連れて向かうことに。案の定、そこには裕公公が仕込んだ偽の幽霊が待ち構えていました。白い人影に遭遇し、一行はパニックに陥ります。

幽霊騒動の報告を受けた栄恵太妃(えいけいたいひ)は恐怖のあまり錯乱し、裕公公にそそのかされるまま、敬懿(けいい)太妃の住まいに身を寄せることを決めてしまいます。

この一連の出来事を、李琪は冷静に分析していました。「幽霊などいるものか。これは誰かが太妃様たちを追い出すために仕組んだ罠だ」。栄児もまた、裕公公の怪しい動きに気づいていました。二人は真相を突き止めるため、夜の景仁宮(けいじんきゅう)に忍び込んだ謎の人物を追います。しかし、殿舎の中に入るとその姿は忽然と消えていました。何か仕掛けがあると睨んだ栄児は、床に香炉の灰をそっと撒き、次なる一手に備えるのでした。

追い詰められた栄恵太妃と敬懿太妃(けいい たいひ)は、紹英(しょうえい)に窮状を訴えますが、彼がもたらしたのは更なる絶望でした。民国政府から下された命令――それは、「三日以内に紫禁城から退去せよ」という、あまりにも無慈悲な最後通告だったのです。

『溥儀(ふぎ)の料理番』第32話の感想

今回は、宮中に渦巻く陰謀が「幽霊騒動」という形で一気に表面化した、非常に見ごたえのある回でした。食糧難という物理的な苦境に加え、精神的にじわじわと追い詰められていく太妃たちの姿が痛々しく、演じる役者さんたちの表情の一つ一つから、彼女たちの恐怖と絶望がひしひしと伝わってきます。一方で、その怪奇現象の裏にある人間の悪意を冷静に見抜く栄児と李琪のコンビネーションは、この暗い物語の中の唯一の光のようです。特に、二人が協力して真相究明に乗り出すシーンは、サスペンスとしての面白さを加速させています。ただ怖いだけでなく、その恐怖が誰かの手によって巧妙に作り出されているという構図が、物語に深い奥行きを与えていました。静かな宮殿を舞台に繰り広げられる心理戦は、派手なアクションがなくとも、息をのむような緊張感を生み出しています。

つづく