民国政府による退去命令が下り、紫禁城が最後の時を迎えようとする中、宮殿の宝物が何者かに狙われていた。料理人の栄児(えいじ)と侍衛の李琪(り・き)は、その犯人が宮殿内の意外な人物、裕得福(ゆう とくふく)であることを突き止める。裕得福は端康太妃(たんこうたいひ)の葬儀の混乱に乗じて、宝物を運び出そうと画策。栄児と李琪は真相を訴えるが、皇室の体面を重んじる上層部に阻まれてしまう。果たして二人は宝物を守り、犯人の悪事を暴けるのか。そして紫禁城を追われた栄児を待ち受ける新たな運命とは…。

「溥儀の料理番」あらすじネタバレ33話

時代の大きなうねりが、ついに紫禁城の高い壁の内側にも押し寄せてきました。民国政府から太妃たちに突きつけられたのは、紫禁城からの退去命令。必要な身の回りのものは持ち出せても、宮殿の貴重な品々はすべて政府のもの。そんな騒然とした雰囲気の中、多羅媽(どらま)は李琪(り・き)の頼みで、栄児(えいじ)の父・劉守貴(りゅう しゅき)にそっとお金を届けるのでした。

城内には民国の兵士たちが進駐し、各宮門は厳重な警備下に置かれます。そんな中、溥儀(ふぎ)の命で端康太妃(たんこうたいひ)の葬儀を取り仕切ることになったのが、紹英(しょうえい)とあの裕得福(ゆう とくふく)。溥儀は皇太后にふさわしい盛大な葬儀を望みますが、民国政府は「簡素に」と釘を刺します。皇室の権威が失われていく現実に、二人は唇を噛むしかありませんでした。

一方、栄恵太妃(えいけいたいひ)は、亡き端康太妃のために心を込めて写経した仏経を、副葬品に加えてほしいと願います。そのお使いを頼まれた青児(せいじ)は、景仁宮で衝撃的な光景を目撃! なんと、裕得福が地下道から小太監たちと現れたのです。裕得福は青児に気づくと、「栄児の動向を見張り続けろ」と脅しをかけます。その直後、李琪(り・き)が栄児に優しい言葉と共に手袋を贈る姿を見てしまった青児の心には、寂しさと嫉妬の影が落ちるのでした。

裕得福の狙いは、端康太妃の葬儀の混乱に乗じて、かねてより集めていた宝物を運び出すこと。そうとは知らない栄児は、栄恵太妃から預かった刺繍品を副葬品に加えようとしますが、裕得福に「余計なことをするな、不浄なものを見るぞ」と追い払われてしまいます。

不審に思った栄児から話を聞いた李琪(り・き)は、彼女と共に調査を開始。そして、以前まいた香灰を手がかりに、ついに宮殿内の地下道と、そこに隠された二つの宝箱を発見します! これまでの怪奇現象も、すべては宝を盗み出すための裕得福の自作自演だったのです。

真相を掴んだものの、葬儀の時間は刻一刻と迫ります。李琪は溥儀に直訴するため醇親王府へ走り、栄児は危険を承知で宝物の見張りを買って出ます。しかし、李琪は溥儀に会えず、やむなく紹英に真相を打ち明けますが、紹英は「皇室の体面に関わる」と取り合いません。

ついに端康太妃の葬列が宮殿を出ていこうとするその時、李琪が「待った!」と立ちはだかります。しかし、紹英の命令で兵に取り押さえられ、なすすべもありません。裕得福はまんまと宝物を持ち出し、紫禁城を後にしてしまいました。皇室の宝が盗まれても、誰も本気で気にかける者はいないのか…。あまりの無力さに、李琪と栄児は立ち尽くすしかありませんでした。

やがて、栄児も栄恵太妃と共に紫禁城を去る日がやってきます。入宮してから今日までの様々な出来事が、走馬灯のように頭をよぎります。新たな住まいとなった大公主府では、大皇子が食事を用意しますが、太妃たちの口には合いません。

そこで栄児の前に現れた大皇子は、彼女がかつて醜い娘を装って自分との縁談を断った劉守貴(りゅう しゅき)の娘・劉栄児(えいじ)であることを見抜いていました。再び求婚する大皇子に対し、栄児は「私の結婚は太妃様がお決めになります」と毅然と拒絶。プライドを傷つけられた大皇子は、栄児に恨みを抱き、力ずくで彼女を手に入れようと画策を始めるのでした…。

『溥儀の料理番』第33話の感想

時代の終わりという抗えない流れの中で、個人の正義がいかに無力であるかを突きつけられた回でした。李琪と栄児が命がけで突き止めた真実も、「皇室の体面」という古く、もはや中身のない権威の前ではいとも簡単に握りつぶされてしまいます。宝物が白昼堂々と盗まれていく様は、まさに清王朝そのものの終焉を象徴しているかのようでした。紫禁城という絶対的な舞台を失った登場人物たちが、これからどう生きていくのか。特に、宮殿の外で新たな敵意に晒されることになった栄児の運命が気になります。物語は静かに、しかし確実に新しい局面へと移行し、登場人物たちの人間ドラマがより一層深まっていくことを予感させました。

つづく