いやはや、今回の『溥儀(ふぎ)の料理番』第35話は、胸が締め付けられるような展開でしたね…。さっそく、涙なしには語れないあらすじとネタバレを見ていきましょう。

親友か、脅迫か…追い詰められた青児の決断

物語は、悪徳宦官・裕得福(ゆう とくふく)に捕らえられた青児(せいじ)のシーンから始まります。裕得福は、李琪(り・き)と栄児(えいじ)を取り逃がしたことを青児のせいだと激しく問い詰めます。「警察が突然来たのよ!」と弁明する青児ですが、もはや裕得福の耳には届きません。

一方、李琪(り・き)は職が見つからず、生活のために人力車を引く日々。それでも愛する栄児に会うため、毎日彼女の元を訪れます。「皇帝陛下はいつ裕得福を捕らえてくださるの?」と尋ねる栄児に、李琪(り・き)は皇帝がすでに王府を去り、行方が分からないと告げます。不安な状況の中、二人は互いを支え合うのでした。

そんな中、裕得福は青児にとんでもない命令を下します。それは、一包の毒薬を渡し、栄児を毒殺しろというものでした。「やらなければ、お前がこれを飲め」。あまりの非道な脅迫に、青児は抗うことができず、ついに頷いてしまうのです…。

最後の晩餐と、あまりにも悲しい結末

青児は、父の体調が悪いと嘘をつき、太妃(たいひ)に別れを告げます。そして、最後の場所として栄児の元へ。事情を知らない栄児は、青児を心から気遣い、「これからは自分のために幸せに生きるのよ」と、けなげにも貯めていた銀元と、母親の形見である簪(かんざし)まで渡してしまいます。

「最後に、あなたの手料理が食べたいな」。青児の願いを聞き入れ、喜んで厨房に立つ栄児。その隙に、青児は用意されたスープに毒を盛ってしまうのでした…。

食卓を囲みながら、宮廷に入ったばかりの頃の思い出を語り合う二人。「あなたには何度も迷惑をかけた。どう恩返しをすればいいか…」と語る栄児に、青児の心は張り裂けそうになります。「私たちは姉妹じゃない。恩返しなんていらないわ」。

そして、青児は自ら毒の入ったスープを飲み干します。苦しみだす青児を見て、慌てて医者を呼ぼうとする栄児。しかし、青児はそれを止め、すべての罪を告白します。「あなたたちを殺そうとした。心に魔が巣食って、自分が自分でなくなったの。今の私を殺すことでしか、昔の私には戻れない…」。そう言い残し、青児は栄児の腕の中で静かに息絶えました。あまりの衝撃に、栄児はその場で倒れてしまいます。

復讐の炎、裕得福を追い詰めろ!

親友の死を知った李琪は、必ず裕得福を捕らえ、青児の仇を討つと固く誓います。陸秋桐(りく しゅうどう)と共に裕得福の隠れ家を探しますが、なかなか手がかりは掴めません。李琪は、元太監たちが集まる「燕翅楼(えんしろう)」に情報があるかもしれないと考えます。

その頃、燕翅楼には、家族を皆殺しにされた武天(ぶてん)もまた、裕得福への復讐を誓い、仲間を訪ねていました。李琪と武天(ぶてん)はニアミスするも、武天(ぶてん)は自分の事情を李琪たちに知られぬよう、そっと身を隠します。

李琪は、元太監の王公公(おうこうこう)から、かつて寿喜(じゅき)が殺された事件の真相や、裕得福の残忍な手口について聞かされます。そしてついに、裕得福の隠れ家を突き止めることに成功!

李琪、劉爾(りゅう じ)、陸秋桐の三人は、裕得福が近々宝物を運び出すという情報を得て、ひとまずは静観し、裕府の動きを厳しく監視することを決めるのでした。青児の死を乗り越え、復讐の炎を燃やす彼らの戦いが、今、始まろうとしています。

『溥儀(ふぎ)の料理番』第35話の感想

今回のエピソードは、青児の悲劇的な結末に終始胸が痛みました。裕得福という絶対的な悪に脅され、親友を裏切るか自らの命を絶つかという究極の選択を迫られた彼女の葛藤は、察するに余りあります。彼女の行動は決して許されるものではありませんが、そうするしかなかった状況を思うと、ただ責めることはできません。特に、何も知らない栄児が青児に優しく接し、未来への希望を語る場面は、その後の悲劇を知っているだけに非常につらく感じられました。栄児の純粋な善意が、結果的に青児をさらに追い詰めてしまったという皮肉な構図が、物語に深い陰影を与えています。青児が自らの命で罪を償い、本来の自分を取り戻そうとした姿は、哀れでありながらも、彼女なりの最後の矜持だったのかもしれません。

つづく