怪物に囲まれ絶体絶命の褚思鏡(ちょ・しきょう)は、援軍を連れて帰還した伯顔(バヤン)によって九死に一生を得る。しかし、彼らが連れてきた新たな協力者・唐安(とう・あん)の冷酷なやり方は、島に新たな火種を生むことに。一方、伯顔がもたらした情報から、怪異の元凶「横公」の巣窟の在り処が少しずつ見えてくる。そんな中、褚思鏡たちのすぐそばにいた人物の驚くべき正体が発覚し、物語は核心へと大きく動き出す。謎と裏切りが交錯し、一瞬たりとも目が離せない展開が続く。
「天啓異聞録」あらすじネタバレ11話
夜明けの光は、希望の光でした!怪物に囲まれ、絶望の淵にいた褚思鏡(ちょ・しきょう)とアンジェリカ。もはやこれまでかと思われたその時、外から銃声が鳴り響き、聞き覚えのある声が!そう、あの伯顔(バヤン)が援軍を連れて帰ってきてくれたのです!約束を違えなかった友の姿に、褚思鏡(ちょ・しきょう)は安堵の表情を浮かべます。
しかし、安堵したのも束の間、庭には怪物の餌食となった村人たちの無残な亡骸が転がっていました。そしてその中には、怪物と化しながらも息絶えている沈譲(しん・じょう)と、彼のそばで気を失っている賀子礁(が・ししょう)の姿が。どうやら沈譲(しん・じょう)は、自らの命と引き換えに賀子礁(が・ししょう)を止めたようです。数日を共にした彼の無言の覚悟に、褚思鏡(ちょ・しきょう)はそっとその目を閉じさせ、島民すべての安全を必ず守ると心に誓うのでした。
伯顔(バヤン)が連れてきた援軍は、北鎮撫司の百戸である唐安(とう・あん)。同じ百戸でも権力は絶大で、楊公公(ようこうこう)にも臆することなく、追及されかけていた褚思鏡を庇います。楊公公(ようこうこう)は、怪物を捕らえて国境防衛の兵器に使うことを提案しますが、唐安は、人を操る力を持つ沈淙(しん・そう)がやすやすと利用されるはずがないと、その提案を鼻で笑うのでした。
唐安は冷酷非情な男でした。意識のない賀子礁(が・ししょう)を拷問にかけ、黒幕の居場所を吐かせようとします。賀子礁の口から出たのは「冬月十五日(旧暦11月15日)、横公の力を見せる」という不吉な言葉…。決戦の日が近いと知った唐安は、なんと病気の島民を皆殺しにして感染拡大を防ごうとするのです。
一方、伯顔(バヤン)は島を離れた際に見た奇妙な光景を褚思鏡に伝えます。寧海堡の南東の海底が青く光り、まるで呼吸するかのように波打っていたというのです。その場所が20年前に隕石が落下した場所だと気づいた褚思鏡は、そこが「横公」の巣窟に違いないと確信します。
そんな中、事態は思わぬ方向へ急展開します。唐安が沈淙(しん・そう)の部屋から押収した手紙の束。そこには、褚思鏡が島に上陸してからの行動が、一日も漏らさず詳細に記録されていました。鳥を使って手紙をやり取りしていた形跡から、褚思鏡の脳裏に、いつも鳥のさえずりが聞こえる時に限って近くにいた、あの無邪気な少年の姿が浮かびます…。
まさか!褚思鏡と伯顔が急いで部屋に向かうと、そこはもぬけの殻。少年は沈淙(しん・そう)を連れて姿を消した後でした。
ついに海辺で二人を見つけ出した褚思鏡たち。そこにいたのは、もはや狂気を装うことのない、冷徹な表情の賀六宏(が・ろくこう)でした。彼は自分が賀子礁の弟であること、そして自分と沈淙こそが「横公に選ばれた者」であると告白します。そう言って見せた胸には、不気味な灰色の鱗がびっしりと生えていました。
「天に選ばれた者は、自ずと横公の居場所を感じるだろう」
そう言い残し、賀六宏は沈淙を抱いて荒れ狂う海へと身を投げてしまいます。
これ以上の犠牲は出せない。褚思鏡は、一人で横公の巣窟へ向かうことを唐安に申し出ます。その覚悟を認めた唐安は、しかし一人では行かせないと、部下とアンジェリカを率いて褚思鏡に同行することを決めるのでした。
『天啓(てんけい)異聞録』第11話の感想
今回は、これまで散りばめられてきた謎が一気に動き出す、情報量の非常に多い回でした。息つく暇もない展開の中で、特に衝撃的だったのはやはり賀六宏の正体です。純粋で少し変わった少年という仮面の下に、これほどまでの秘密を隠していたとは…。彼が褚思鏡のそばにいた時間のすべてが伏線だったと気づいた瞬間、物語の緻密さに鳥肌が立ちました。
また、新たに登場した唐安というキャラクターが、物語に新たな緊張感と深みを与えています。島民の命さえ駒としか見ない彼の冷酷な合理性と、命を賭してでも民を守ろうとする褚思鏡の人間性の対比は、今後の物語の大きな軸となりそうです。沈譲(しん・じょう)の悲しい自己犠牲も胸に迫るものがあり、褚思鏡が背負うものの重さを改めて感じさせられました。パズルのピースが一気にはまるような快感と衝撃が同居する、まさに物語の転換点となる見事なエピソードでした。
つづく