物理学者・楊冬(ヤン・ドン)の自殺の謎を追う汪淼(ワン・ミャオ)と史強(シー・チアン)は、彼女が生前、科学を捨てて穏やかな生活を望んでいたかのような行動を取っていたことを知る。しかし、その矢先の自殺という不可解な事実に、捜査はさらに混迷を深めていく。一方、汪淼は、物語の鍵を握る老科学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)(青年期)から、これまで固く閉ざされてきた彼女の過去について話を聞く機会を得る。文化大革命の時代、若き日の彼女が経験したある出来事とは…。現代の謎と過去の出来事が、静かに繋がり始める。
「三体」あらすじネタバレ10話
科学者の連続自殺から始まったこの物語、回を追うごとに謎が深まっていきますね。第10話では、楊冬(ヤン・ドン)の死の真相に迫る捜査と、ついに物語の核心人物である葉文潔(イエ・ウェンジエ)(青年期)の過去が語られ始めました。今回は、その二つの軸が交錯する重要な回です。
楊冬(ヤン・ドン)の死に残された新たな謎
史強(シー・チアン)刑事、今回もキレッキレでしたね。彼は申玉菲(シェン・ユーフェイ)の言動を「まるでカルト組織だ」と一刀両断。そして、楊冬の死について、一つの大きな矛盾を指摘します。
楊冬は、婚約者である丁儀(ディン・イー)と買い物に出かけ、普段は着ないような赤いドレスを買うなど、明らかに「科学を捨てて、普通の女性として生きよう」としていた時期がありました。史強(シー・チアン)の言葉を借りれば、「心配事のない七面鳥になろうとしていた」わけです。でも、それならなぜ自殺したのか?人生を楽しもうとしていたはずの彼女が、なぜ突然命を絶ったのか。この矛盾が、捜査をさらに混乱させます。
史強は、申玉菲(シェン・ユーフェイ)が宇宙人なのではないか、なんて突拍子もないことまで言い出す始末。汪淼(ワン・ミャオ)は呆れつつも、真相を突き止めたい一心で、史強の捜査に付き合います。
葉文潔(イエ・ウェンジエ)(青年期)、重い口を開く
そんな中、汪淼(ワン・ミャオ)は葉文潔(イエ・ウェンジエ)(青年期)の依頼で母校の清華大学で講演をすることに。講演後、汪淼は彼女の経歴の一部が、いまだに機密扱いになっていることについて尋ねます。すると葉文潔は、静かに自身の過去…文化大革命の時代にまで遡る、壮絶な体験を語り始めました。
舞台は1960年代、知識青年として大興安嶺の生産建設兵団に送られた若き日の葉文潔。そこで彼女は、進歩的な考えを持つ新聞記者、白沐霖(バイ・ムーリン)と出会います。彼は、森林伐採による環境破壊を憂い、レイチェル・カーソンの名著『沈黙の春』を葉文潔に渡します。
そして白沐霖は、この状況を中央に訴えるための手紙を書いたと打ち明けます。しかし、彼は油圧ノコギリの扱いで手を痛め、字が書けない状態でした。そこで葉文潔は、彼の代わりにその手紙を清書するという、ほんの小さな親切心を見せます。
この時、彼女はまだ知りませんでした。この「代筆」という行為が、彼女のその後の人生を、そして人類の運命さえも、大きく揺るがす引き金になるということを…。物語の原点が、ついに明かされ始めた瞬間でした。
『三体』第10話の感想
これまで現代パートで張り巡らされてきた謎解きの糸が、少しずつ過去へと手繰り寄せられていく、そんな静かながらも重大な転換点を迎えた回でした。楊冬の不可解な死の真相を追うサスペンスフルな展開と、葉文潔が語り始める歴史の重みが、見事な対比を生み出しています。特に、若き日の葉文潔が純粋な善意から行った行為が、彼女をどのような運命に導くのか。その片鱗が見えた時、物語の深さに改めて気づかされます。派手なアクションや衝撃的な展開がなくとも、じっくりと、しかし確実に物語の核心へと迫っていく脚本の巧みさには感服するばかりです。これから明かされるであろう彼女の過去が、現在の事件にどう繋がっていくのか、片時も目が離せません。
つづく