ナノ科学者の汪淼(ワン・ミャオ)の眼前に突如現れた謎のカウントダウン。その現象は彼を精神的に追い詰めていく。型破りな刑事・史強(シー・チアン)は、汪淼を保護しつつ、共に謎の解明に乗り出すことを決意。彼は、汪淼を「科学フロンティア」へ潜入させ、真相に迫ろうと試みる。一方、相次ぐ科学者の不審死の鍵を握るとされる老物理学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)(青年期)。彼女の落ち着き払った態度の裏には、文化大革命時代に経験した壮絶な過去が隠されていた。科学を揺るがす超常現象と、複雑な人間ドラマが交錯し、物語は新たな局面を迎える。
「三体」あらすじネタバレ6話
目の前に現れた謎のカウントダウンに精神をすり減らすナノマテリアル研究者の汪淼(ワン・ミャオ)。彼を案じる史強(シー・チアン)刑事は、作戦司令センターの責任者である常偉思(チャン・ウェイスー)に、汪淼(ワン・ミャオ)の写真を見せます。そこには、はっきりと汪淼(ワン・ミャオ)の網膜に浮かび上がるカウントダウンが写っていました。
「怪奇現象の裏には必ず何かある」が持論の史強(シー・チアン)ですが、今回の「何か」はあまりに規格外。常偉思(チャン・ウェイスー)も、このカウントダウンが何を意味し、ゼロになった時何が起こるのか、その解明こそが最重要任務だと史強(シー・チアン)に告げます。申玉菲(シェン・ユーフェイ)が執拗に汪淼に接触する以上、彼こそが真相への突破口なのです。
科学への絶望と、刑事の覚悟
作戦会議で、史強は汪淼に「科学フロンティア」への潜入捜査を命じます。しかし、すでに科学では説明のつかない現象に心を蝕まれていた汪淼は、「科学フロンティアは単なる学術組織じゃない」「我々は感謝祭を待つ七面鳥にすぎない」と、その恐怖を訴え、協力を拒否します。
そんな汪淼に対し、史強は驚きの行動に出ます。おもむろに服のジッパーを開けると、その胸には汪淼と同じカウントダウンが!もちろんこれは史強が友人に頼んで描かせた偽物ですが、「お前がゼロになるなら、俺も一緒だ」という、彼の覚悟を示すものでした。二人は腕時計を合わせ、タイマーを完全に同期させます。史強の型破りながらも人間味あふれる説得に、汪淼の心も少しずつ動かされていくのでした。
鍵を握る人物、葉文潔(イエ・ウェンジエ)(青年期)の壮絶な過去
「科学フロンティア」と接触して、まともな精神で生きている人間はいるのか。汪淼の問いに、史強は一人の人物の名を挙げます。それが、老齢の物理学者、葉文潔(イエ・ウェンジエ)(青年期)でした。
汪淼はアドバイスを求め、葉文潔(イエ・ウェンジエ)(青年期)の自宅を訪れます。彼女は、科学の歴史において、このようなパニックは何度もあったことだと、冷静に汪淼を諭します。その落ち着き払った態度に、汪淼は少しだけ平穏を取り戻します。
しかし、史強はその冷静さにこそ違和感を抱いていました。新たに設置された作戦室で、部下の徐冰冰(シュー・ビンビン)と共に葉文潔(イエ・ウェンジエ)(青年期)の過去のファイルを洗い直します。そこには、文化大革命時代の壮絶な記録が記されていました。
彼女の父、葉哲泰(イエ・ジョータイ)は、将来を嘱望された物理学者でした。しかし、反革命分子として吊し上げられ、実の妹である葉文雪(イエ・ウェンシュエ)と妻の紹琳(シャオ・リン)にまで告発され、精神的に追い詰められた末に自ら命を絶ったのです。若き日の葉文潔(イエ・ウェンジエ)(青年期)は、父の亡骸を前に、ただ無力に涙することしかできませんでした。娘である楊冬(ヤン・ドン)の死にも異常なほど冷静だった彼女の態度は、この悲劇的な過去に根差しているのかもしれない。史強は、彼女の心の奥底には、さらに深い何かがあると確信するのです。
一方、申玉菲(シェン・ユーフェイ)のもとには、「主」からの非情な指令が届いていました。「汪淼がナノマテリアルの研究を止めないのなら、排除せよ」。しかし、申玉菲(シェン・ユーフェイ)は汪淼を仲間に引き入れることを諦めていませんでした。
『三体』第6話の感想
科学的な謎が深まる一方で、登場人物たちの人間性が色濃く描かれた、非常に密度の濃いエピソードでした。汪淼を襲う超常的な恐怖と、史強のどこまでも人間臭いアプローチの対比が、この物語の大きな魅力だと改めて感じさせられます。特に、史強が自らの胸に偽のカウントダウンを刻んでみせる場面は、彼の不器用な優しさと覚悟が伝わってきて、胸が熱くなりました。
そして、ついに明かされた葉文潔の過去。文化大革命という時代の狂気が、一人の優秀な科学者とその家族をいかに打ちのめしたか。彼女が抱える深い絶望と、人類に対する複雑な感情が、物語全体に重厚な奥行きを与えています。彼女の行動原理が少しずつ見えてきたことで、今後の展開から目が離せなくなりました。壮大なSFの世界観と、個人の魂の物語が、見事に融合していると感じます。
つづく