最大の敵である汪遠(ワン・ユエン)の信頼を得るため、羅慎遠(ルオ・シェンユエン) は危険な賭けに出る。汪遠は慎遠の忠誠心を試すため、彼の店を差し押さえ、さらに英国公(えいこくこう)を暗殺せよという非情な命令を下す。絶体絶命の窮地に立たされた慎遠は、愛する羅宜寧(ルオ・イーニン)や英国公を守るため、ある計画を実行に移す。それは、自らが憎まれ役となり、彼らとの絆を断ち切るという、あまりにも悲しい決断だった。彼の真意を知らない者たちの想いが交錯し、物語は大きく動き出す。

「安寧録~海棠に降る光~」あらすじネタバレ36話

今回も息をのむ展開だった第36話、さっそく振り返っていこうか。前回、楊凌(ヤン・リン)の一件で大きな打撃を受けた汪遠(ワン・ユエン)と陸嘉学(ルー・ジアシュエ)。汪遠は、陸嘉学(ルー・ジアシュエ)から見せられた楊凌の供述書に満足し、ひとまず危機は去ったと安堵するんだ。でも、腹に一物抱える陸嘉学(ルー・ジアシュエ)は、この機に乗じて汪遠に茶馬事件の証拠を燃やさせることに成功。汪遠はしぶしぶ証拠を火にくべたけど、彼の心には陸嘉学への疑念が芽生え始めていたんだよね。

汪遠の罠と羅慎遠(ルオ・シェンユエン) の覚悟

一方、英国公(えいこくこう)は今回の事件を見て、羅慎遠(ルオ・シェンユエン) の冷徹さを危険視する。同門の楊凌や恩師まで見捨てた彼を、娘の羅宜寧(ルオ・イーニン)から引き離そうと決意するんだ。宜寧は慎遠の真意を理解しているからこそ、父の前では何も言わず、ただ彼の計画がうまくいくことを願うしかなかった。

船隊を失い、新たな駒を探していた汪遠は、疑わしい陸嘉学ではなく、羅慎遠(ルオ・シェンユエン) に目をつけた。そして、彼を試すための非情な罠を仕掛ける。汪遠の手下は慎遠の酒店を差し押さえ、船からは禁制品である異国の宝石や香料を発見。これは完全に汪遠が仕組んだことだった。

すべてを察した慎遠は、すぐさま汪遠の屋敷へ向かい、まるで落ちぶれた犬のようにひれ伏して許しを請う。この姿に満足した汪遠は、彼の素性…つまり、かつて敵対した陳九衡(チェン・ジウヘン)の弟子であることを突きつけるんだ。慎遠はこれを待っていたかのように認め、師への恩返しのために動いていたと、筋の通った嘘で切り抜ける。

愛する人へ向けられた刃

しかし、汪遠の試練はこれで終わりじゃなかった。彼が突きつけた次なる命令は、なんと「英国公(えいこくこう)の暗殺」。英国公側と完全に手を切ることで、忠誠心を示せというわけだ。断れば殺される、まさに絶体絶命の状況で、慎遠はこの命令を受け入れるしかなかった。

そして運命の日。英国公は急な公務で、娘の宜寧だけがお参りへ向かうことになる。この情報を掴んでいた汪遠。そして、慎遠もまた、覚悟を決めていた。

宜寧の乗る輿(こし)が、突如刺客に襲われる。黒い覆面をしたその男が剣を突き入れた瞬間、宜寧は絶体絶命の危機に瀕する。しかし、彼女はその刺客の瞳に見覚えがあった。そう、それは愛する羅慎遠の瞳だったんだ。

時が止まったかのような一瞬の後、陸嘉学が馬を飛ばして駆けつける。彼の姿を確認した慎遠は、ためらうことなく、さらに宜寧へと斬りかかった。もちろん、これはすべて芝居。愛する宜寧や英国公を自らの復讐に巻き込まないため、あえて彼らに憎まれ、縁を切るための苦渋の決断だったんだ。

激怒した陸嘉学は、宜寧を守るために慎遠に重傷を負わせる。この騒ぎの中、慎遠を監視するために汪遠が放っていた手下たちも、陸嘉学によって一掃された。結果として、慎遠の計画は完璧に成功した。彼は英国公と宜寧から憎まれ、完全に孤立した。そしてその代償に、汪遠からの絶対的な信頼を手に入れたんだ。

陸嘉学は、これが慎遠の描いた「一石二鳥の計」であることを見抜き、彼に警告する。だが、慎遠はすでに次の一手を見据えていた。汪遠が用意した大理寺少卿という新たな地位を手に入れ、彼の懐で牙を研ぎ続けることを選んだんだ。

『安寧録~海棠に降る光~』第36話の感想

今回のエピソードは、羅慎遠の壮絶な自己犠牲が胸に突き刺さる回でした。愛する人を守るために、自ら悪役となり、その愛する人から刃を向けられる道を選ぶとは…。彼の知略の深さもさることながら、その裏にある孤独と痛みを思うと、言葉を失います。特に、羅宜寧(ルオ・イーニン)を斬りつけなければならない瞬間の彼の瞳には、どれほどの覚悟と悲しみが込められていたのでしょうか。一方で、何も知らずに宜寧を守ろうと必死になる陸嘉学の行動が、結果的に慎遠の計画を手助けしてしまったという皮肉な構図も、この物語の深みを感じさせます。登場人物それぞれの正義と想いが複雑に絡み合い、誰か一人が悪とは断じられない。そんな重厚な人間ドラマが、見る者の心を強く揺さぶります。

つづく