薛紫夜(シュエ・ズーイエ) の弟・瞳(トン)は、ついに彼女との決別を選び、薬師谷に不穏な影を落とします。一方、霍展白(フオ・ジャンバイ)は愛する人の子の病を治すため、谷を去る決意を固め、紫夜に別れを告げに来ました。別れを目前にした二人は、最後の思い出を作るかのように、共に極光を見るため山へと向かいます。そこで過ごす穏やかな時間は、8年にわたる二人の関係を象徴するかのようでした。しかし、その裏で紫夜は長年抱え続けてきた秘密と罪悪感に苛まれていました。そして訪れる出発の朝、二人は静かに互いの想いと向き合うことになります。

「七夜雪(しちやせつ)」あらすじネタバレ23話

物語が大きく動いた第23話。登場人物たちの想いが交錯し、すれ違い、そして一つの別れへと向かっていく、息もつかせぬ展開でした。今回は、そんな第23話の出来事を、胸に迫るシーンの裏側までじっくりと振り返っていきます。

瞳の決別と龍血珠の行方

もはや薛紫夜(シュエ・ズーイエ) の言葉を信じようとしない瞳。彼は自ら経脈を傷つけるという荒業で、紫夜が施した封印を破ってしまいます。薬廬に戻った紫夜が見たのは、憎しみと絶望に満ちた瞳の姿でした。彼は紫夜に剣を突きつけ、ただ一言「龍血珠を渡せ」と迫ります。

しかし、紫夜は少しも怯みません。「殺せるものなら殺すがいい」とでも言うように、瞳の剣先に自ら首を近づけるのです。彼女にはわかっていました。どんなに憎しみを口にしても、この弟が自分を殺すことはないと。紫夜の覚悟を前に、瞳は怒りのままに剣を振り下ろしますが、それは彼女の首筋をわずかに切り裂くだけ。彼は龍血珠を奪い、谷を去っていきました。去り際に、かつての親友・雪懐(シュエホワイ)が眠る氷を割り、「摩家村の明介(ミンジエ)は死んだ」と過去の自分に完全に別れを告げて。

その頃、霍展白(フオ・ジャンバイ)は徐沫(シュー・モー)の病状が待ったなしであることを告げ、別れの挨拶のために紫夜を訪れていました。彼は瞳の危険性を案じ、万が一の時に彼を守れるようにと、鼎剣閣の手令を紫夜に託します。このどこまでも深い優しさが、後の展開を思うと本当に切ない…。

案の定、瞳の気配が消えたことに気づいた霍展白(フオ・ジャンバイ)が駆けつけると、そこには血を流して倒れている紫夜の姿が。瞳が記憶を取り戻しながらも、憎しみを抱いて去ったこと、そして紫夜がそれを止められなかったことに、霍展白は静かな怒りを滲ませます。紫夜は、瞳の中にまだ良心が残っていると信じていますが、その瞳が選んだのは、妙火(ミアオフォ)たちと合流し、復讐の道を進むことでした。

星空の下の約束と、言えなかった真実

霍展白にすべてを打ち明け、龍血珠を奪われたことを謝罪する紫夜。彼女は、彼を騙していた罪悪感に苛まれます。そんな彼女を、霍展白はただ黙って受け入れ、冷たい泉で凍えてしまった彼女を抱きかかえて運ぶのでした。

「もし、8年前の薬方が全くの無意味だったと知ったら、それでもあなたは私に優しくしてくれるだろうか?」

心の中でそう呟く紫夜の姿は、見ているこちらの胸も締め付けます。

徐沫(シュー・モー)の薬が完成し、翌々日には谷を発つという霍展白。別れを目前にして、紫夜は一つの願いを口にします。「極光を一緒に見に行きたい」。霍展白はもちろん快諾します。

二人は共に山を登り、極光を待ちます。あいにくの天気で極光は見えませんでしたが、満天の星空が二人を包みました。焚き火を囲み、酒を酌み交わしながら、霍展白は8年間の思い出を語ります。紫夜と過ごした日々、彼女が作る酒の味、そのすべてを彼は覚えていました。来年また一緒に極光を見に来ようと約束を交わし、体調が優れない紫夜を背負って、霍展白は山を下りるのでした。

そして、別れの朝。紫夜はついに8年間隠し続けた真実――徐沫を救う薬など最初からなかったこと――を告げようと決意します。しかし、彼女が口を開く前に、霍展白がそれを遮りました。

「8年間、徐沫のために尽くしてくれて感謝している。…実は、ずっと前から気づいていた」

彼の口から語られたのは、感謝の言葉でした。すべてを知った上で、彼は紫夜を責めず、ただその努力に感謝していたのです。徐沫が回復したら薬師谷に戻り、雑用係として働くと言う霍展白に、紫夜は「飲み慣れた酒もいいけれど、たまには新しい酒を試すべきよ」と静かに告げ、二人の長い関係に、一つの区切りがつけられたのでした。

『七夜雪(しちやせつ)』第23話の感想

今回のエピソードは、登場人物それぞれの覚悟と、どうにもならない運命の切なさが深く胸に突き刺さる回でした。特に印象的だったのは、霍展白の底知れない優しさと愛情の深さです。彼は、薛紫夜(シュエ・ズーイエ) が8年間も自分を欺いていたことに気づきながら、それを一切表に出さず、ただひたすらに彼女を支え、守ろうとしました。最後の別れの場面で、真実を告げようとする紫夜を遮り、感謝を述べたシーンは、彼の器の大きさと、紫夜への揺るぎない想いの表れでしょう。彼の行動すべてが、愛する人を守るための静かで強い覚悟に満ちており、涙なしには見られませんでした。

一方で、過去に決別し、復讐の道を選んだ瞳の悲しみも痛いほど伝わってきます。彼の行動は許されるものではありませんが、その根底にある絶望を思うと、単純に断罪できない複雑な気持ちになります。紫夜と霍展白、二人が過ごした星空の下での穏やかな時間は、この先の過酷な運命を予感させるからこそ、より一層美しく、そして儚く映りました。静かに、しかし確実に終わりへと向かっていく物語から、目が離せません。

つづく