愛する者を失った悲しみが、霍展白(フオ・ジャンバイ)と秋水音(チウシュイ・イン)の関係に重い影を落とす。一方、薬師谷を目指す薛紫夜(シュエ・ズーイエ) と妙風(ミアオフォン)の旅は、道中の出会いを通じて二人の距離を少しずつ縮めていく。しかし、そんな彼らに元一宮から放たれた刺客の魔の手が迫る。極限の状況下で、二人は互いを守るために命を懸けた戦いに身を投じることになる。それぞれの場所で、キャラクターたちの運命が大きく動き出す、緊迫と感動のエピソード。
「七夜雪(しちやせつ)」あらすじネタバレ26話
それぞれの場所、それぞれの悲しみ
物語は、雪に覆われた地から始まります。薛紫夜(シュエ・ズーイエ) は、亡くなった雪懐(シュエホワイ)を埋葬するため、妙風(ミアオフォン)に手伝ってもらい、静かに彼を弔います。一方、霍展白(フオ・ジャンバイ)もまた、愛する徐沫(シュー・モー)のためにささやかな塚を作り、彼が好きだったおもちゃを燃やして供養していました。
そこへ現れたのが、心を病んだ秋水音(チウシュイ・イン)。彼女は燃やされるおもちゃを取り返そうと泣き叫び、その姿は痛々しくて見ていられません。この一連の出来事を遠くから見ていたのが、徐重華(シュー・チョンホワ)。彼の心には、霍展白(フオ・ジャンバイ)への憎しみがさらに深く刻み込まれていきます。長年、鼎剣閣の主の座を争ってきた結果が、家族を失い、家も滅びるという結末…。彼の怒りと絶望が、不気味な影を落とします。
薬師谷への道中、凍てついた心に灯る小さな火
場面は変わり、薬師谷へと向かう薛紫夜(シュエ・ズーイエ) と妙風(ミアオフォン)の旅路へ。寒さを避けて馬車にこもる薛紫夜(シュエ・ズーイエ) の耳に、妙風(ミアオフォン)が奏でる物悲しい笛の音が届きます。その音色に惹かれ、思わず顔を出す薛紫夜。妙風が吹いていたのは笛ではなく、「筚篥(ひちりき)」という故郷の楽器でした。この楽器をくれた人に、この一曲だけを教わったのだと、彼は静かに語ります。
旅の途中、立ち寄った宿で重傷を負った老人に出会う二人。薛紫夜は迷わず駆け寄り治療を始めますが、妙風は相変わらずの無関心。しかし、薛紫夜の言葉に促され、しぶしぶ老人を宿へ運びます。薛紫夜は自身の鍼治療と妙風の内力を合わせることで、見事に老人の命を救いました。意識を取り戻した老人に心から感謝され、妙風の表情にも珍しく人間らしい感情が浮かびます。
何があっても表情一つ変えない妙風を見て、薛紫夜は思います。一体、元一宮とはどんな場所なのか。どうすれば、これほどまでに人の心を失わせることができるのかと…。
霍展白(フオ・ジャンバイ)の決意と、未来への微かな光
その頃、霍展白のもとには、元一宮が反乱を起こしたという知らせが届きます。彼らを討伐するには「七剣」の力を集結させる必要があり、霍展白は廖谷主(リャオこくしゅ)の協力を仰ぎます。しかし、廖谷主(リャオこくしゅ)は衛風行(ウェイ・フォンシン)自身の意思を尊重する構え。
そんな中、衝撃的な事件が。秋水音(チウシュイ・イン)が毒を飲んで自ら命を絶とうとしたのです。幸いにも廖谷主の治療で一命は取り留めましたが、彼女は生きる気力を完全に失っていました。「なぜ助けたのか」と廖谷主を責める秋水音。彼女から目を離せない状況となり、霍展白はしばらく彼女のそばにいることを決意します。
廖谷主は霍展白に、薛紫夜の寒疾は時間をかければ治る見込みがあると伝えます。それを聞いた霍展白の心に、安堵と共に新たな希望が芽生えました。いつか、この辛い日々が終わり、薛紫夜と共に美しい山河を見て回れる日が来るかもしれない、と。
迫る刺客、試される絆
薛紫夜と妙風の旅は続きますが、薛紫夜はついに寒疾の発作で意識を失ってしまいます。妙風は必死に彼女を介抱しますが、その胸には罪悪感が渦巻いていました。彼女がこれほど苦しんでいるのは、元はと言えば自分のせいだからです。
薛紫夜が目を覚ますと、今度は妙風の「冰蚕毒」が発作を起こしていました。彼女は慌てて薬を渡しますが、妙風は頑なにそれを拒否します。この毒は、師である長無絶(チャン・ウージュエ)から与えられた「至高の栄誉の証」なのだと。
その裏で、元一宮の瞳(トン)は、妙風を殺し、薛紫夜は生かすよう暗殺者に命じていました。二人の前に現れたのは、修羅場をくぐり抜けてきた「八駿」と呼ばれる手練れの刺客たち。妙風は、彼らが瞳の手の者だと気づき、薛紫夜を先に逃がすため、一人で立ち向かいます。
毒矢を受けながらも、妙風は奥義を繰り出して八駿を全滅させます。しかし、激闘の中で、彼は大切な筚篥を落としてしまったことに気づきません。
逃げる薛紫夜に、死んだふりをしていた刺客の一人が襲いかかります。絶体絶命のその時、重傷の妙風が駆けつけ、自らの弱点を晒すことも厭わずに彼女を守ります。最後は薛紫夜が持っていた唐門の暗器によって、二人はなんとか危機を脱しました。
雪の中で流した一筋の涙
妙風もまた、血を吐くほどの重傷でした。薛紫夜は自分の身を顧みず、雪の中で彼に鍼を打ち、治療を施します。その傍らで、彼女は妙風が落とした筚篥をそっと拾い上げ、大切に懐にしまいました。「親しい人からの贈り物」だと聞いていたから、彼にとってどれほど大事なものか分かっていたのです。
しかし、寒疾と疲労が限界に達し、薛紫夜はついに意識を失って倒れてしまいます。彼女の姿を見つめる妙風の心に、今まで感じたことのない奇妙な感情が込み上げ、その瞳から一筋の涙がこぼれ落ちました。「沐春風」を修めて以来、決して感じることのなかったはずの感情。これは、一体…?
『七夜雪(しちやせつ)』第26話の感想
今回のエピソードは、静と動の対比が胸に迫る回でした。霍展白の側では、秋水音の自害未遂という衝撃的な出来事がありながらも、物語は内面の葛藤や静かな悲しみを深く描いています。一方で、薛紫夜と妙風の旅路は、刺客の襲来という「動」の展開を迎え、二人の関係性が極限状況下で一気に深まりました。特に印象的だったのは、感情を失くしたはずの妙風が、薛紫夜のために命を懸け、ついには涙を流すシーンです。彼の凍てついた心に、薛紫夜という存在が確かな変化をもたらしていることが示され、今後の彼の心の動きから目が離せません。重厚な人間ドラマと緊迫感のあるアクションが見事に融合し、物語の深みを一層増したように感じます。
つづく