簪花大会を目前に控えた夜、陸繹(りくえき) と今夏の間に甘い時間が流れる。翌日の大会当日、今夏は普段とは違う華やかな姿で皆を驚かせ、才芸比べでは見事な箜篌の腕前を披露する。陸繹もまた、彼女の姿とその琴の音に心を奪われていた。しかし、祭りが最高潮に達したその時、会場は倭寇の襲撃を受け、大混乱に陥る。敵の狙いは金品だけでなく、今夏の身柄にもある様子。混乱の中、仲間である上官曦(じょうかんぎ) が人質として連れ去られてしまい、陸繹と今夏は過酷な救出作戦に挑むことを決意する。
「花様衛士~ロイヤル・ミッション~」あらすじネタバレ33話
屋根の上の甘い時間、そして深まる謎
物語は簪花大会(しんかたいかい)の前夜、屋根の上で語らう陸繹(りくえき) のシーンから始まります。
今夏は、かつて楓林で意識のない陸繹(りくえき) に口移しで薬を飲ませたことを、ふと思い出したように切り出します。「あの時、あなたに口づけしたのよ」と。陸繹(りくえき) は彼女の唇にあった傷を思い出し、静かに微笑みます。
彼が覚えていないと思った今夏は「感謝なんていらないからね!」と強がりますが、陸繹は彼女の隣に座り、「あの時、どう感じた?」とまさかの質問。うろたえる今夏に、彼は「もう一度試してみるか?」とさらに迫ります。
身分の差を盾にされ、ためらいながらも顔を近づける今夏。しかし、寸前で思いとどまった彼女を、陸繹はぐっと引き寄せ、あの時と同じように口づけを交わすのでした。この一部始終を敏児(びんじ)が目撃し、嫉妬の炎を燃やして走り去ります。その後、陸繹の肩にもたれて眠ってしまった今夏の髪に、彼はそっと「夏」という文字が刻まれた簪(かんざし)を挿してあげるのでした。
翌朝、昨夜の記憶がおぼろげな今夏は、髪に挿された見慣れぬ簪に気づきます。陸繹に尋ねると、彼は「岑福(しんふく)が贈ったものだ」とまさかの嘘を!岑福は主人の意を汲んで話を合わせますが、今夏は「誰にでもあげている簪」だと思い込み、がっかりしてしまいます。陸繹の不器用な優しさが、またしてもすれ違いを生んでしまいました。
簪花大会の波乱と倭寇の襲撃
簪花大会当日。今夏は淳于(じゅんう)夫人が用意してくれた青い衣をまとい、普段の捕快(ほかい)姿とは打って変わった美しい姿で登場します。その変貌ぶりに陸繹は思わず見とれ、楊岳(ようがく) も驚きを隠せません。
才芸比べでは、刺繍で指を刺したり、書道で出遅れたりと、相変わらずの不器用さを見せる今夏。しかし最後の種目で、彼女は箜篌(くご)を見事に演奏し、上官曦(じょうかんぎ)の剣舞と見事な共演を果たして会場を魅了します。陸繹はその琴の音に、かつて都で聴いた彼女の演奏を思い出し、じっと見つめていました。
見事、才芸比べで一位に輝いたのは上官曦(じょうかんぎ)。皆が七夕の願い事をする中、今夏は陸繹に「誰に投票したの?」と尋ねます。彼は「上官曦(じょうかんぎ)の剣舞は見事だった」とそっけなく答えますが、がっかりして立ち去ろうとする今夏の耳元で、こう囁くのでした。
「だが、琴の音だけが私の心に響いた」
その直後、会場に突如として迷煙が焚かれ、人々は大混乱に陥ります。薬の効果は強力で、上官曦のような手練れでさえも力を失ってしまうほど。そこに現れたのは董斉盛(とうせいせい)率いる倭寇の一団でした。彼らは金品を要求し、抵抗する者を容赦なく斬り捨てます。さらに、董斉盛は部下に「袁今夏(えんきんか)を探し出せ」と命じ、彼らの真の狙いが別にあることをうかがわせます。
今夏が倭寇に追い詰められたその時、陸繹が駆けつけ彼女を救出。一方、体力が少し回復した上官曦は董斉盛を捕らえようとしますが、楊岳(ようがく) が彼女をかばい、二人は人質として連れ去られてしまいます。
親友と想い人が攫われ、怒りに燃える謝霄(しゃしょう) は一人で飛び出していき、今夏も絶望に打ちひしがれます。そんな彼女に、陸繹は「必ず二人を救い出す」と力強く約束するのでした。
一方、都では厳嵩(げんすう)が百花酒の一件で皇帝の信頼を失いかけ、厳世蕃(げんせいはん)の行方がつかめないことに苛立ちを募らせていました。甘い恋模様から一転、物語は危険な救出劇へと突入していきます。
『花様衛士~ロイヤル・ミッション~』第33話の感想
前半の甘美な雰囲気と、後半の緊迫した展開との落差が鮮やかな回でした。陸繹と今夏の屋根の上での口づけは、二人の想いが通じ合ったことを示す象徴的な場面でありながら、その後の簪をめぐる陸繹の嘘が、彼の素直になれない性格と深い愛情を同時に描き出していて、非常にもどかしい気持ちにさせられます。わざと突き放すような態度をとりながら、耳元で本心を囁く彼の姿は、まさに陸繹という人物の真骨頂と言えるでしょう。
一方で、簪花大会での事件は物語の空気を一変させました。華やかな祭りから一転、倭寇の襲撃による阿鼻叫喚の地獄絵図となり、上官曦と楊岳(ようがく) が人質に取られるという衝撃的な結末を迎えます。これまで脇で二人を支えてきた仲間が危機に陥ることで、物語は新たな局面へと突入しました。陸繹と今夏がこの困難にどう立ち向かい、仲間を救い出すのか。登場人物それぞれの思惑が複雑に絡み合い、物語が大きく動き出す予感に満ちており、今後の展開から目が離せません。
つづく