陸繹(りくえき) との突然の別れに、袁今夏(えんきんか)は深く傷つき、仕事にも身が入らない日々を送っていました。そんな彼女に、さらなる追い打ちをかける事件が発生します。この世にただ一人の肉親である叔母の林菱(りんりょう)が、何者かによって連れ去られてしまったのです。手がかりを追う今夏は、叔母を救出するため、危険な屋敷への潜入を決意。そこで彼女を待ち受けていたのは、予期せぬ人物との再会と、心をえぐるような厳しい現実でした。
「花様衛士~ロイヤル・ミッション~」あらすじネタバレ49話
そっと腕から外された赤い手繩を、袁今夏(えんきんか)はただ黙って見つめていました。陸繹(りくえき) との思い出が詰まったこの手繩が、今はひどく重たい…。六扇門(りくせんもん)に戻っても心ここにあらずで、仕事のミスを連発。幼なじみの楊岳(ようがく) は、すっかり元気をなくしてしまった彼女を心配しますが、かける言葉も見つかりません。
それぞれの胸に刺さる棘
一方、陸繹(りくえき) もまた苦悩の中にいました。父・陸廷(りくてい)親子を追い詰めるための策を練りながらも、彼の脳裏に浮かぶのは今夏の笑顔ばかり。懐から取り出した、彼女が刺繍してくれた歪な「夏」の字が入った手巾を握りしめ、胸の痛みに耐える日々。
今夏も同じでした。家に帰れば、陸繹(りくえき) を忘れようとしまい込んだはずの手繩の箱を、無意識に開けてしまうのです。忘れようとすればするほど、想いは募るばかり。二人の心は、見えない糸で固く結ばれたまま、引き裂かれようとしていました。
忍び寄る厳世蕃(げんせいはん)の魔の手
そんな中、宮中では不吉な事件が起こり、陸繹は厳党打倒の好機と捉えます。しかし、それよりもっと恐ろしい危機が今夏に迫っていました。なんと、叔母の林菱(りんりょう)の手下に連れ去られてしまったのです!
部屋に残された争いの跡を見て、今夏は血の気が引きます。叔母が厳府に囚われていると直感した彼女。楊程万(ようせいばん)は危険すぎると止めますが、今夏にとって林菱(りんりょう)は、この世にたった一人の大切な家族。じっとなんてしていられません。
涙の再会と冷たい刃
今夏は危険を顧みず、宴の準備で慌ただしい厳府に下働きとして潜入します。叔母の居場所を探して屋敷を奔走する彼女の前に、突如現れたのは、陸繹の姿でした。
思わぬ再会に、今夏は凍りつきます。しかし、彼に気づかれそうになり、慌てて顔を伏せるのが精一杯。危うく正体を見破られそうになったところを陸繹に助けられますが、二人きりになった途端、彼は冷たい言葉を投げつけました。
「お前は罪人の娘だ。誰もが災いを恐れて寄りつかなくなるだろう」
その言葉は、刃のように今夏の心を突き刺します。これ以上危険な真似はするな、自分がすべて片付ける、と彼は言いますが、今の今夏には届きません。「私から離れて」と突き放し、その場を去ることしかできませんでした。
孤独な決意と希望の光
傷ついた今夏が向かったのは、今は廃墟となった夏家の屋敷跡。ここで家族と過ごした幸せな日々の幻影が、彼女の孤独を一層際立たせます。「叔母さんだけは、絶対に失うわけにはいかない…!」彼女は唇を噛みしめ、改めて固く決意するのでした。
その頃、都に到着した謝霄(しゃしょう) からすべての事情を聞き、激怒します。袁家を訪れた謝霄(しゃしょう) は、落ち込む今夏を元気づけようと煙花(日本の線香花火のようなもの)に火を灯します。揺れる光の中、今夏はかつて陸繹と共に煙花を見た夜を思い出し、堪えきれず涙を流しました。
「たった一人の家族なのに…守れないなんて…」
嗚咽する彼女の肩を、謝霄(しゃしょう) は力強く抱き寄せます。「俺が必ず助ける」と。その言葉と、手のひらに灯る小さな光が、暗闇に沈む今夏の心を、わずかに照らすのでした。
『花様衛士~ロイヤル・ミッション~』第49話の感想
今回は、愛する人を守るためにあえて突き放すという、陸繹の悲しい決断が胸に迫る回でした。彼の口から放たれる冷たい言葉の一つひとつが、実は今夏を危険から遠ざけたいという必死の想いの裏返しであることが痛いほど伝わってきます。その不器用で深い愛情表現は、まさにこの物語の真骨頂と言えるでしょう。一方で、唯一の家族である叔母を奪われ、信じていた人にまで突き放された今夏の絶望は計り知れません。それでもなお、たった一人で立ち向かおうとする彼女の強靭な精神力には心を打たれます。二人の心が最も 가까く、そして最も遠い場所にあるというこの状況が、物語に一層の深みと切なさをもたらしていました。
つづく