安吉四賢(アンジーしけん)の悲劇的な死をきっかけに、溫客行(ウェン・コーシン)と周子舒(ジョウ・ズーシュー)の関係に深刻な亀裂が生じます。互いの過去と正義がぶつかり合い、二人はそれぞれ孤独に苦しむことに。その一方で、琉璃甲を巡る江湖の混乱はさらに激化し、五湖盟の内部でも不協和音が鳴り響きます。岳陽派に身を寄せる張成嶺(ジャン・チョンリン) の周りでも、高崇(ガオ・チョン)の思惑が動き出していました。そんな中、溫客行(ウェン・コーシン)はついに鬼谷の谷主として、江湖全体を揺るがすための恐ろしい計画を実行に移すことを決意します。

「山河令」あらすじネタバレ10話

今回は、今まで築き上げてきた溫客行(ウェン・コーシン)と周子舒(ジョウ・ズーシュー)の関係に、深くて冷たい亀裂が入る、胸が締め付けられる回でした。

無垢な人々の死、引き裂かれる知己の絆

物語は、安吉四賢(アンジーしけん)が惨殺された現場から始まります。溫客行(ウェン・コーシン)は、自らがまいた偽の琉璃甲のせいで罪なき人々が命を落としたことに、深い後悔と自責の念に駆られていました。凍てつく固い地面を、剣が折れるのも構わずに掘り起こし、彼らを弔おうとする溫客行。その姿は痛々しいにもほどがある…。

そこへ現れたのが、知己であるはずの周子舒(ジョウ・ズーシュー)。しかし、彼の口から出たのは慰めの言葉ではありませんでした。これが、お前が望んだ結果か?と、冷たく溫客行を責め立てます。周子舒の正義感からすれば当然の言葉。でも、溫客行だって、こんな結末を望んでいたわけじゃない!

売り言葉に買い言葉、ついに溫客行の堪忍袋の緒が切れます。じゃあ、天窗の首領だったお前が殺してきたのは、悪人だけだったのか?と、周子舒の最も触れられたくない過去を突きつけました。この一言はあまりにも重く、周子舒はぐうの音も出ません。こうして、互いの正義と過去の罪がぶつかり合い、二人の間には決定的な溝が生まれてしまったのです。

それぞれの孤独、それぞれの決意

知己を失った(と、この時は思っている)二人は、それぞれ別の場所で酒に溺れます。溫客行は妓楼で、偽の琉璃甲を妓女たちに気前よく配りながら自棄酒をあおり、周子舒は一人酒場で意識を失うまで飲み明かす…。この対照的ながらも、同じ孤独を抱える二人の姿が、見ていて本当につらい。

一方、五湖盟サイドも不穏な空気に包まれています。高崇(ガオ・チョン)、趙敬(ジャオ・ジン) 、沈慎(シェン・シェン)は安吉四賢(アンジーしけん)の死を巡って互いを牽制しあい、責任のなすりつけ合い。一枚岩であるべき同盟の脆さが露呈します。

そんな中、周子舒は天窗時代の部下・韓英(ハン・イン)と再会。自分の命が残り少ないことを告げ、本物の琉璃甲を彼に託します。もう江湖の争いに関わるなという、周子舒なりの優しさなのでしょうか。

そして、物語は大きく動きます。顧湘(グー・シアン)から、岳陽派で孤立する張成嶺(ジャン・チョンリン)の様子と、高崇(ガオ・チョン)が娘の高小怜(ガオ・シャオリエン)を彼に嫁がせようとしている企みを聞いた溫客行。彼は、この腐った江湖を根底からひっくり返すため、ついに鬼谷の谷主として本格的に動き出すことを決意します。

鬼谷に潜む十大悪鬼を招集した溫客行の顔は、周子舒といた時の柔和な表情とはまるで別人。裏切りの心を持つ白無常(はくむじょう)を容赦なく処刑し、その冷酷さで他の悪鬼たちを震え上がらせます。そして、英雄大会で高崇の化けの皮を剥がし、江湖を大混乱に陥れる計画を高らかに宣言するのでした。

『山河令』第10話の感想

今回は、溫客行と周子舒の間に生じた亀裂が物語の核心でした。互いを唯一無二の知己と認め合っていたからこそ、そのすれ違いは深く、見ているこちらの胸を強く打ちました。特に、周子舒に過去の罪を突きつけられた溫客行の表情と、それを言われて何も返せない周子舒の痛みが、画面越しにひしひしと伝わってきます。また、孤独に苛まれながらも、ついに鬼谷の谷主としての冷徹な顔を全面に押し出すことを決意した溫客行の変貌ぶりには、彼の背負う宿命の重さを感じずにはいられません。彼の行動は、果たして単なる復讐なのか、それとも彼なりの正義の執行なのか。物語は個々のキャラクターの感情を超え、江湖全体の大きなうねりへと発展していく様相を呈してきました。各々の思惑が複雑に絡み合い、誰が敵で誰が味方なのか、その境界線がますます曖昧になっていく展開から目が離せません。

つづく