岳陽城では、伝説の秘宝琉璃甲を巡る噂が広まり、不穏な空気が漂い始めていた。周子舒(ジョウ・ズーシュー)は自身の体調の異変を感じつつも、溫客行(ウェン・コーシン)との絆を深めていく。二人は街で、江湖の喧騒から離れて暮らす賢人安吉四賢(アンジーしけん)の穏やかな姿を目にし、心を和ませる。一方、岳陽派に身を寄せる張成嶺(ジャン・チョンリン) は、慣れない環境で苦悩していた。そんな中、琉璃甲を求める者たちの欲望が暴走し、岳陽の街は一夜にして血で血を洗う争いの舞台と化す。その騒乱は、ついに罪なき人々をも巻き込み、悲劇へと発展していく。

「山河令」あらすじネタバレ9話

第9話は、束の間の平穏と、血で血を洗う江湖の醜さが、強烈なコントラストとなって胸に突き刺さりました。さっそく、その詳細を振り返っていきましょう!

物語は、岳陽派に運び込まれた方不知(ファン・ブージー)の遺体から始まります。周子舒(ジョウ・ズーシュー)は、彼が溫客行(ウェン・コーシン)の琉璃甲を盗んだ男だと気づき、複雑な表情を浮かべます。さらに高崇(ガオ・チョン)が遺体の喉から発見したのは、なんと天窗の暗器雨打芭蕉針。これを見た周子舒(ジョウ・ズーシュー)は、かつての部下・韓英(ハン・イン)が琉璃甲を奪ったと確信し、面倒事を避けるようにその場を立ち去ろうとします。

その頃、街では曹蔚寧(ツァオ・ウェイニン) を食事に誘い、不器用ながらも一生懸命な姿で彼女を笑わせています。食屍鬼の話で怖がらせる顧湘(グー・シアン)と、彼女を守ると誓う純粋な曹蔚寧(ツァオ・ウェイニン) 。この二人の微笑ましいやり取りは、殺伐とした物語の中の貴重な癒やしですよね。

一方、宿に戻った周子舒(ジョウ・ズーシュー)は、五感が衰え始めていることを自覚し、味気ない食事を前に一人で酒を煽ります。張成嶺(ジャン・チョンリン)を五湖盟に預けたことへの後悔も募るばかり。そんな彼を、溫客行(ウェン・コーシン)は自身が昔飼っていた犬の話をしながら慰めます。その夜、周子舒は内傷の悪化による耳鳴りに苦しみますが、どこからともなく聞こえてくる溫客行(ウェン・コーシン)の簫の音が、彼の気を鎮め、回復を助けるのでした。この二人の、言葉にしなくても通じ合う関係がたまらないんですよね。

翌日、二人は樊悦楼へと足を運びます。そこで目にしたのは、俗世を捨て悠々自適に暮らす安吉四賢(アンジーしけん)の姿でした。琴を奏で、笛を吹き、剣を舞う彼らの姿は、まるで一幅の絵のよう。江湖のしがらみから解放された彼らの姿に、周子舒は溫客行と過ごしてきた日々を重ね、感慨にふけるのでした。

しかし、平穏は長くは続きません。岳陽派で修行に励む張成嶺(ジャン・チョンリン)は、兄弟子からいびられ、辛い日々を送っていました。そんな彼の前に現れたのが、溫客行の命で彼を守るためにやってきた顧湘(グー・シアン)。彼女の顔を見た瞬間、張成嶺(ジャン・チョンリン)の堪えていた涙が溢れ出します。

そして、運命の月夜。屋根の上で酒を酌み交わす周子舒と溫客行の耳に、剣戟の音が響きます。彼らが見たのは、たった一枚の琉璃甲のために命を落とした独目侠・蒋徹(ジャン・チョー)と狂風刀客・李衡(リー・ヘン)の姿でした。周子舒は、それが方不知(ファン・ブージー)から盗まれた琉璃甲だと思い込みますが、溫客行は冷笑を浮かべます。その態度から、周子舒はすべてを悟ってしまうのです。溫客行が偽の琉璃甲を大量にばら撒き、江湖の猛者たちを殺し合わせているという恐ろしい計画を。彼のやり方に心底失望した周子舒は、怒りと共に背を向けます。

溫客行の計画通り、岳陽の街は偽の琉璃甲を巡る殺し合いで地獄絵図と化します。そしてその毒牙は、ついに安吉四賢(アンジーしけん)にも向けられました。彼らが琉璃甲を持っているという噂が広まり、丐幇や華山派などが大挙して押し寄せたのです。江湖の権力争いとは無縁だったはずの賢人たちは、欲望に狂った者たちの手によって次々と惨殺されてしまいます。

目の前で繰り広げられる悲劇に、さすがの溫客行も言葉を失い、その顔には深い後悔の色が浮かびます。自らの計画が、守りたかったはずの良き人々の命を奪ってしまったのですから。駆けつけた高崇(ガオ・チョン)は、懐からさらに二つの琉璃甲を投げつけ、英雄大会での真相解明を約束しますが、時すでに遅し。残されたのは、無残な亡骸と、江湖の深い闇だけでした。

『山河令』第9話の感想

この第9話は、物語の雰囲気を一変させる重要なエピソードでした。特に印象的だったのは、溫客行の計画が招いた予期せぬ結末です。彼は、悪人たちを同士討ちさせることで世の理を正そうとしたのかもしれませんが、その結果、何の罪もない安吉四賢が犠牲になってしまいました。理想と現実の乖離、そして計画の綻びが、彼の人間的な未熟さや脆さを浮き彫りにしています。自らの行いが招いた悲劇を目の当たりにし、後悔に苛まれる溫客行の姿は非常に心を打ちました。また、彼の非情な計画を知った周子舒の失望も、二人の関係に深い亀裂を生じさせました。これまで築き上げてきた絆が、価値観の対立によって崩れ去っていく様は、今後の物語に大きな影響を与えるでしょう。ただの復讐譚ではない、人間の業や正義の意味を問う、深遠なテーマが提示された回でした。

つづく