斉国公(せいこくこう)家の若様・斉衡(せいこう)は、突如として人生最大の岐路に立たされます。邕王(ようおう)家からの非情な脅迫により、彼の純粋な想いは踏みにじられ、一族の運命を背負う苦渋の決断を迫られることに。一方、何も知らない盛家の明蘭(みんらん)のもとには、心を打ち砕くような知らせが届きます。友の苦境を知った顧廷燁(こていよう)は、彼を救うため大胆な行動に出ようとしますが…。それぞれの運命が、権力という大きな渦に飲み込まれ、大きく動き出す回です。
「明蘭~才媛の春~」あらすじネタバレ28話
今回の28話は、純粋な若者の恋が、権力という巨大な壁に無残にも打ち砕かれる、あまりにも切なく、そして残酷な回でした。物語の中心にいた斉衡(せいこう)の悲痛な決断には、胸が締め付けられます。
絶望の淵に立つ斉衡(せいこう)、断ち切られた未来
物語は、斉衡が腹心の部下・不為(ふい)の亡骸を目の当たりにし、あまりの衝撃に気を失う場面から始まります。目を覚ました彼の前にいたのは母・平寧郡主(へいねいぐんしゅ)。彼女の口から語られたのは、衝撃の事実でした。
斉衡と明蘭の縁談を断ったことで邕王家の恨みを買い、彼らはなんと栄飛燕(えいひえん)を死に追いやり、その妹である嘉成県主(かせい・けんしゅ)を斉衡に嫁がせようと画策していたのです。皇帝の寵愛も薄れ、後ろ盾のない斉家にとって、皇位継承の有力候補である邕王に逆らうことは、一族の破滅を意味していました。
さらに邕王家は、斉衡の父・斉国公(せいこくこう)を酒宴と称して呼び出し、事実上の人質に取ります。頼みの綱である皇后も、病に倒れた皇帝のことで手一杯。万策尽きた郡主は泣き崩れ、斉衡は自らの命と引き換えに一族を救おうとまで思い詰めます。
しかし、邕王妃(ようおうひ)はそんな斉衡の覚悟をあざ笑うかのように、彼の最後の逃げ道を断ちます。それは、盛家を潰すことなど造作もないという、明蘭を人質にした非情な脅しでした。愛する女性、そして一族の命を天秤にかけさせられた斉衡。彼は、震える手で嘉成県主(かせい・けんしゅ)との婚儀を承諾する証書に署名するしかありませんでした。涙を流しながら署名する彼の姿は、観ていて本当に辛いものがありました。
明蘭に届いた悲報と、こらえきれない涙
一方、盛家では呉大娘子(ごだいじょうし)が馬球の誘いに訪れ、その場で何気なく斉衡と嘉成県主の婚約を口にします。それを聞いた明蘭は、必死に平静を装いますが、屋敷に戻る道で思わず転んでしまうほど動揺していました。
部屋に戻り、気丈に振る舞おうとする明蘭でしたが、心配してやってきた祖母の優しい言葉に、ついに堪えきれず泣き崩れてしまいます。人にはどうにもできぬことがあるという祖母の慰めが、かえって彼女の悲しみを深く突き刺しました。
友のために動く顧廷燁(こていよう)、そして最後の別れ
この一件を知った顧廷燁(こていよう)は、斉衡の不甲斐なさと彼の置かれた苦境に憤りを感じます。彼は斉衡に会いに行き、嘉成県主を誘拐してしまえと、彼らしい大胆な策を提案します。しかし、家族全員の命が懸かっている斉衡は、その提案を首を縦に振ることはできませんでした。斉衡は、もはや明蘭に顔向けできないと、思い出の品である泥人形を顧廷燁に託します。
顧廷燁は斉衡に代わり、明蘭のもとを訪れます。そして、斉衡からの泥人形を手渡し、彼がどれほど苦悩の末に決断したかを伝えました。明蘭は斉衡に裏切られたわけではないと理解しつつも、涙が止まりません。彼女もまた、対となる泥人形を顧廷燁に託し、二人の恋に静かに終止符を打ったのです。
私たちは愚かだったと自嘲する明蘭に対し、これから戦地へ向かう顧廷燁は、俺が戻るまで、心ない噂など気にするな。戻ったら、お前のためにそいつらを黙らせてやると力強く約束するのでした。この言葉が、傷ついた明蘭の心に、そして今後の二人の関係に、どのような影響を与えていくのでしょうか。
『明蘭~才媛の春~』第28話の感想
今回は、これまで描かれてきた淡く美しい初恋が、権力という抗いがたい力によって無慈悲に踏みにじられる、非常に重いエピソードでした。斉衡が経験した無力感と絶望は、観る者の胸に深く突き刺さります。彼はただの温室育ちの若様ではなく、家族を守るという重責を背負い、愛する人を犠牲にするという苦渋の決断を迫られました。彼の涙は、自身の甘さへの後悔だけでなく、非情な世の中への悲痛な叫びだったのでしょう。
一方で、この悲劇は明蘭と顧廷燁の関係性を新たなステージへと進めるきっかけとなりました。友のために怒り、行動しようとする顧廷燁の情の厚さ。そして、明蘭の深い悲しみに寄り添い、未来の守護を約束する彼の姿は、まさに騎士(ナイト)そのものでした。斉衡との純愛の終わりは、明蘭がより現実的で強かな女性へと成長するための、避けられない試練だったのかもしれません。個人の純粋な想いが、いかに社会の大きな力学の前で脆いものであるかを痛感させられる回でした。
つづく