顧廷燁(こていよう)と明蘭(みんらん)の夫婦仲が深まる一方で、朝廷では塩の専売を巡る調査が始まり、不穏な空気が漂う。調査団の主要メンバーである沈従興(しんじゅうこう)が突然弾劾され、さらには顧廷燁の盟友・小段将軍(しょうだんしょうぐん)が、妓楼で卑劣な罠にはめられてしまう。それは、新皇帝を支える者たちを一人ずつ失脚させようとする、巨大な陰謀の始まりだった。次々と襲いかかる黒い影に、顧廷燁と明蘭はどう立ち向かうのか。政変の嵐が、すぐそこまで迫っていた。

「明蘭~才媛の春~」あらすじネタバレ61話

いやはや、夫婦の日常って本当に面白いものですよね。顧廷燁(こていよう)のやり取りを見ていると、つくづくそう感じさせられます。

冒頭、顧廷燁(こていよう)は明蘭が侍女の小桃(しょうとう)に作らせた刺繍入りの座布団を見るなり、不機嫌そうな顔。なんだこれはとばかりに、ポイっと護衛の石頭(せきとう)に投げてしまうんです。でも、輿が進み始めると、さっと石頭からその座布団を奪い返す!もう、このツンデレっぷりがたまりません。本当は明蘭が自分のために用意してくれたことが、嬉しくて仕方ないくせに。

そんな微笑ましい夫婦の時間とは裏腹に、朝廷では暗雲が立ち込めていました。皇帝・趙宗全(ちょうそうぜん)は塩の専売を巡る不正を正そうとしますが、重臣たちは非協力的。怒った皇帝は自ら調査に乗り出すと宣言し、皇太子の趙策英(ちょうさくえい)が調査団の責任者に名乗りを上げます。そして、その副手には沈従興(しんじゅうこう)、補佐役には明蘭の兄・盛長柏(せいちょうはく) が任命されるのでした。

その夜、顧廷燁(こていよう)はわざと明蘭の前で、斉衡(せいこう)を賢妻だなんて褒めそやして、明蘭の反応を楽しみます。案の定、むっとした明蘭が怒って部屋を出て行こうとすると、顧廷燁は慌ててその腕を掴んで引き留めるのです。侯爵夫人として完璧に振る舞う明蘭ではなく、素直に嫉妬したり怒ったりする本当の明蘭が見たい。彼のそんな切ない願いが伝わってくるシーンでした。

しかし、平穏な日々は長くは続きません。塩務調査の出発を翌日に控えた夜、副手の沈従興が突然不正蓄財や縁故びいきといった数々の罪で弾劾されてしまうのです。彼の妻・小沈氏(しょうしんし)は真っ青になって明蘭の元へ駆け込み、罪はすべて濡れ衣だと涙ながらに訴えます。

時を同じくして、顧廷燁燁は小段将軍(しょうだんしょうぐん)たちに無理やり妓楼広雲台(こううんだい)へと連れ出されていました。表向きは、落ち込む沈従興を慰めるため。そこで顧廷燁は、店の看板妓女・魏行首(ぎぎょうしゅ)を相手に、明蘭への想いをぽつりぽつりと語り始めます。彼がどれだけ明蘭を深く愛しているかが分かる、胸に染みる場面でした。

ところが、その宴席で事件は起こります。酔って別室で休んでいたはずの小段将軍が、目を覚ますと隣に見知らぬ女性が寝ていたのです!

翌日、事態は最悪の方向へ。一人の漁師の娘が役所へ駆け込み、小段将軍に乱暴されたと涙で訴え出ます。しかも、彼女は小段将軍の背中にある刀傷のことまで正確に言い当て、言い逃れのできない状況に。もちろん、これは巧妙に仕掛けられた罠。しかし、無実を証明する術はありません。

その報告を受けた顧廷燁と沈従興が、明蘭と張氏(ちょうし)と食卓を囲んでいると、明蘭が鋭く指摘します。もし、あの漁師の娘が自ら命を絶ってしまったら…?。その言葉に一同は凍り付きます。顧廷燁が急いで石頭を向かわせますが、時すでに遅く、娘は首を吊って無言の抗議を遂げていたのでした。

敵の狙いは、小段将軍の社会的抹殺。そして、それは彼ら新皇帝派の重臣たちを一人、また一人と潰していくための、周到な計画の始まりに過ぎなかったのです。帰り道、この事件のショックで耿将軍(こうしょうぐん)も病に倒れたという知らせが入り、顧廷燁と明蘭は、底知れぬ巨大な陰謀の渦に巻き込まれていくことを確信するしかありませんでした。

『明蘭~才媛の春~』第61話の感想

今回は、顧廷燁と明蘭の微笑ましい夫婦の日常と、宮廷に渦巻く権力闘争の非情さが見事な対比で描かれた回でした。特に印象的だったのは、顧廷燁が明蘭に求めるものが、完璧な侯爵夫人という役割ではなく、感情をありのままに表す一人の女性であるという点です。彼の不器用ながらも深い愛情が、物語に温かみを与えています。

しかし、その温かな世界は、小段将軍を襲った卑劣な罠によって無残にも引き裂かれます。個人の幸せや正義など、巨大な権力の前ではいとも簡単に踏みにじられてしまうのだという現実を突きつけられました。計算され尽くした罠の巧妙さと、その裏にあるであろう黒幕の存在に、静かな恐怖を感じずにはいられません。これは単なる一個人の失脚劇ではなく、新皇帝派そのものを揺るがす大きな陰謀の序章。登場人物たちの運命が、否応なく時代の大きなうねりに飲み込まれていく様を、息をのんで見守りました。

つづく