燃え盛る屋敷で、明蘭(みんらん)は命からがら男の子を出産する。夫の顧廷燁(こていよう)と共に喜びを分かち合うも束の間、予期せぬ人物の襲撃を受け、顧府は再び混乱に陥る。一方、宮中では皇帝が顧廷燁への不信感を募らせ、姑の小秦氏(しょうしんし)は復讐のための新たな策略を巡らせていた。王家や斉家など、多くの人々の思惑が複雑に絡み合い、顧廷燁と明蘭は夫婦となって以来、最大の試練に直面することになる。内外に渦巻く陰謀が、二人をじわじわと追い詰めていく。
「明蘭~才媛の春~」あらすじネタバレ70話
燃え盛る澄園(ちょうえん)の炎の中、明蘭はまさに命がけの出産に挑んでいました。幾多の困難の末、ついに元気な男の子を産み落とした明蘭。疲れ果てた体で我が子を抱きしめ、喜びの涙に濡れます。しかし、その安堵も束の間、物陰に潜んでいた康姨母(こうおば)が、鋭いハサミを手に猛然と襲いかかってきました。明蘭が身を挺して我が子を守ろうとしたその瞬間、夫である顧廷燁(こていよう)が駆けつけ、一剣のもとに康姨母を斬り捨てます。悪夢のような出来事に、明蘭は夫の胸で泣き崩れるしかありませんでした。その一部始終を、駆けつけた斉衡(せいこう)が静かに見つめ、そして黙ってその場を去るのでした。
父子の対面と、静まらぬ波紋
生まれたばかりの息子を抱き、顧廷燁(こていよう)は父親になった喜びを噛みしめます。一方、火事の広がりを心配した明蘭でしたが、幸いにも蓉姐児(ようじょじ)によって無事に救い出されていました。悪夢のような一夜を過ごした明蘭は、夫が二度と自分のもとを離れてしまうのではないかという恐怖に駆られ、強く抱きしめます。
時を同じくして、顧廷燁(こていよう)の屋敷も火に包まれていました。焼け落ちた我が家を前に、顧廷煒は母である小秦氏(しょうしんし)を激しく非難します。兄弟仲良く暮らしたいという自分の願いを踏みにじり、無理やり爵位を継がせようとする母の執念がこの事態を招いたと悟ったのです。彼はこの火事を顧廷燁の仕業だと信じ込み(実際は顧廷燁の部下・石頭(せきとう)の働きでしたが)、この争いの絶えない家を出ることを決意します。
宮廷の嵐と、母の不安
宮中では、皇帝・趙宗全(ちょうそうぜん)が、塩務の報告にすぐさま参内しなかった顧廷燁に対して激怒していました。皇后が必死に顧廷燁を庇おうとしますが、それはかえって皇帝の猜疑心を煽る結果に。早く自分が死に、息子の趙策英(ちょうさくえい)を即位させたいのかとまで言われ、皇后は深く傷つきます。そこへ劉貴妃(りゅうきひ)が現れ、皇后を嘲笑うかのように言葉を重ね、皇帝は皇后をその場から追い出してしまいました。
一方、顧府では、出産と襲撃の恐怖から、明蘭が悪夢にうなされる日々が続いていました。夢の中で我が子を探し求めて叫び声をあげて目覚めて以来、彼女は片時も息子を腕から離さず、眠ることさえできなくなっていたのです。
小秦氏(しょうしんし)の逆襲と王家の悲劇
小秦氏(しょうしんし)は、顧廷燁が屋敷に火をつけたと決めつけ、御所に訴え出ると息巻いて乗り込んできます。しかし、顧廷燁と石頭(せきとう)はしらを切り、康姨母と直接対決すればよいと迫ります。そして、顧廷燁が冷ややかに康姨母はすでに自分が殺したと告げると、小秦氏(しょうしんし)は言葉を失い、恐怖に震えました。
その夜、小秦氏は康姨母の亡骸を王家に送り届けます。娘の無残な姿を見た王家の当主は怒りに燃え、その母である王お婆様(おうろうたいたい)は衝撃のあまり気を失ってしまいました。小秦氏は王家と手を組んで顧廷燁を追い詰めようと画策しますが、王お婆様はこれを毅然と拒絶。お前は自分が手を汚すのが怖いだけだと小秦氏を追い返します。王お婆様は、娘を救えなかった息子夫婦を叱責しつつも、康姨母の死が王家にとって一つの解放であったことも理解していました。しかし、それでも娘のために正義を貫くことを決意し、小秦氏の狙いが借刀殺人であることを見抜いていたのです。
太后の沈黙と、それぞれの道
小秦氏は四房、五房の親族に泣きつきますが、逆に顧家の将来を盾に脅され、孤立を深めます。もはや後戻りできないと悟った彼女は、息子の顧廷煒を守るため、顧廷燁と徹底的に戦うことを決意し、密かに揚州の白(はく)家を呼び寄せます。
一方、王お婆様は夜更けに太后を訪ね、涙ながらに訴えますが、太后の反応は冷たいものでした。太后は顧廷燁には勅命に背いた(屋敷に残り明蘭を守った)疑いがあるとだけ匂わせ、早々に下がらせます。絶望した王お婆様は、王家がもはや風前の灯火であることを悟り、息子に最後の決断を迫るのでした。
雪解けと新たな亀裂
翌日、王お婆様親子が再び参内すると、太后は皇帝に対し、顧廷燁のような佞臣に惑わされていると暗に告げます。
その頃、顧廷燁は斉国公(せいこくこう)府を訪れていました。初めは警戒していた斉衡(せいこう)ですが、顧廷燁が明蘭を見舞った礼を言いに来たと知り、長年のわだかまりが解けていくのを感じます。そしてついに、斉衡(せいこう)は顧廷燁を二叔(叔父上)と呼び、二人は和解を果たしました。別れ際、顧廷燁は斉衡に、太后の出す命令に固執しすぎないよう、身を滅ぼさぬよう忠告を残します。
顧廷燁が去った後、屏風の陰から妻の申氏(しんし)が短剣を手に現れます。夫の身を案じていたのです。斉衡は妻の想いに感謝しつつ、盛明蘭(みんらん)こそがかつて自分が娶ろうとした相手だと、ついに打ち明けました。申氏の表情は複雑に変わり、夫婦の間に新たな溝が生まれてしまいます。
渦巻く陰謀
小秦氏は、塩商の白大郎(はくだいろう)を都に呼び寄せます。彼は以前、都で命を落としかけた経験から一度は断りますが、顧廷燁が官吏の身内を殺したと聞き、すぐさま都へ向かうことを決意しました。
時を同じくして、宮中では太后が劉貴妃の幼い息子を自分の元で育てたいと申し出ます。劉貴妃は苦悩の末、我が子を宮中に送りました。小秦氏は、この白大郎を使い、太后と劉貴妃の繋がりを探らせます。その結果、劉貴妃が皇太子の座を狙っていると確信するのです。
夫婦の駆け引きと深まる危機
顧府では、明蘭が、顧廷燁が側室である錢鳳仙(せんほうせん)のために焼けた屋敷を修繕していると聞き、静かな嫉妬の炎を燃やしていました。顧廷燁が息子に近づこうとすると、明蘭はわざと錢鳳仙を母屋に住まわせたらどうかと提案。彼がうっかり同意すると、明蘭はぴしゃりと彼を拒絶します。そこでようやく妻の嫉妬に気づいた顧廷燁は、錢鳳仙を追い出す口実を探していたのだと笑って弁明します。夫が自分のことでやきもきするのを見て、明蘭の心も少し和らぐのでした。
しかし、顧家を取り巻く状況は刻一刻と悪化していきます。朝廷では、皇太子の趙策英が辺境の奪還を提案したことで、皇帝はこれも顧廷燁の差し金かと疑いを深めます。
その夜、顧廷燁は趙策英に、自分が康姨母を殺したことを打ち明けました。王家がまだ訴え出ていないことに、二人は不気味な静けさを感じ、これが嵐の前の静けさであることを予感するのでした。
『明蘭~才媛の春~』第70話の感想
出産という最大の喜びに満ちた瞬間から、一転して命を狙われるという恐怖のどん底へ突き落とされる明蘭の姿は、見ていて胸が締め付けられました。この一話に、誕生の祝福、殺人、家族の決裂、宮廷の陰謀、そして夫婦の絆の再確認と、あまりにも多くの要素が凝縮されています。特に印象的だったのは、これまで様々な策略を巡らせてきた小秦氏が、康姨母の死を目の当たりにして初めて見せた素の恐怖です。彼女の行動が、いよいよ破滅への道へと突き進んでいることを感じさせました。また、長年の確執を乗り越えた顧廷燁と斉衡の和解は、本作における一つの救いであり、斉衡の人間的な成長が光る場面でした。しかし、その裏で彼の妻・申氏との間に新たな亀裂が生じるなど、一筋縄ではいかない人間模様が巧みに描かれています。静かながらも、全ての登場人物が大きな渦の中心へと引き寄せられていくような、濃密な一話でした。
つづく