戾気に完全に支配された趙遠舟(ちょうえんしゅう) を止めるため、卓翼宸(たくよくしん)たちは命がけで立ち向かいます。絶望的な状況の中、ある人物の大きな犠牲によって、最悪の事態は回避されます。しかし、正気を取り戻した趙遠舟の前には、自らが犯した罪という過酷な現実が突きつけられました。悲しみに沈む仲間たちでしたが、壊された白澤令を修復するという新たな希望が見出されます。悲劇を乗り越え、それぞれの使命を胸に、彼らは新たな道を歩み始めるのでした。

「大夢帰離~明かせぬ想い、宿命の朱~」あらすじネタバレ17話

英招、魂を懸けた究極の選択

物語は、戾気(れいき)に完全に体を乗っ取られた趙遠舟(ちょうえんしゅう) の暴走から始まります。裴思婧(はいしせい)の矢も全く歯が立たず、彼女はあっけなく投げ飛ばされてしまいます。

その時、趙遠舟(ちょうえんしゅう) の背後から雲光剣が!刺したのは、なんと卓翼宸(たくよくしん)でした。実はこれ、前日に趙遠舟(ちょうえんしゅう) 自身が仕組んだ計画だったんです。自分が暴走することを見越して、卓翼宸(たくよくしん)に一字咒という技への対抗策を授けていたんですね。

雲光剣の一撃で趙遠舟の力は弱まり、一瞬だけ意識が戻ります。彼は苦悶の表情で、そばにいた英招(えいしょう)に俺を殺してくれと懇願します。

しかし、英招は首を横に振りました。彼は、趙遠舟を殺しても、戾気の器がまた別の誰かに移るだけだと悟っていたのです。そして、彼は究極の選択をします。自らの魂をすべて趙遠舟の体内に注ぎ込み、その身を犠牲にして戾気を完全に封じ込めたのです。英招の体が力なく崩れ落ち、趙遠舟はついに正気を取り戻しました。

明かされる罪と、背負い続けた十字架

目の前で起きた出来事に、趙遠舟は愕然とします。そして、自分が操られていた間に、愛する趙婉児(ちょう えんじ)をその手で殺めてしまったという残酷な事実を知るのです。

文瀟(ぶんしょう)は、趙遠舟が操られていたと頭では理解していても、憎しみを完全に消し去ることはできません。そんな彼女に、裴思恒(はいしこう)は、趙遠舟が文瀟(ぶんしょう)の魂魄(こんぱく)を守るために、千年もの功力を費やしていたという事実を告げます。

一人、昆侖山の門外で英招との思い出に浸り、悲しみにくれる趙遠舟。そこへ卓翼宸(たくよくしん)がやってきて、彼の服を破ります。すると、趙遠舟の背中には、八条もの深い傷跡が刻まれていました。それは、血月の夜に罪を犯すたび、彼が自らを罰し、悔い改めるために刻み続けた苦悩の証だったのです。

殺してくれと再び懇願する趙遠舟に、卓翼宸は死ぬのは簡単だ。だが、それでは英招や文瀟(ぶんしょう)、そしてお前の戾気で死んでいった者たちに顔向けできないだろうと一喝。そして、英招が遺した希望を伝えます。それは、壊された白澤令(はくたくれい)を修復する方法でした。大荒(たいこう)へ赴き、瑶水(ようすい)と神木(しんぼく)を見つけ出すこと。それが、彼らに残された唯一の道だったのです。

それぞれの決意と、新たなる旅立ち

祖父である英招を失った英磊(えいらい)は、悲しみに打ちひしがれていました。かつては人間界に憧れ、大荒を守る祖父の信念を理解できなかった彼も、今はその偉大さを痛感しています。

仲間たちが彼を慰める中、一行は旅立ちの準備を進めます。しかし、昆侖山の門の前には、見慣れぬ装束に身を包んだ英磊の姿が。彼は、この地に残り、祖父の未完の志を継ぐことを決意したのです。文瀟をはじめ、仲間たちは涙ながらに英磊を抱きしめ、それぞれの未来へと歩み出すのでした。

『大夢帰離~明かせぬ想い、宿命の朱~』第17話の感想

今回は、あまりにも重く、そして深い犠牲と贖罪が描かれた回でした。特に、英招が自らの魂を捧げて趙遠舟を救う場面は、彼の深い愛情と覚悟が伝わってきて、胸が締め付けられました。単に戾気を倒すのではなく、その連鎖を断ち切るために自己を犠牲にするという選択は、物語に一層の深みを与えています。

また、これまでただ恐ろしい存在として描かれていた趙遠舟の苦悩が、背中の傷跡という形で明かされたシーンも印象的でした。彼は加害者であると同時に、戾気の器という運命に苦しみ続ける被害者でもあったのです。悲劇の中で、英磊が祖父の意志を継ぐと決意した場面には、世代を超えて受け継がれる希望の光を感じました。登場人物たちの感情が複雑に絡み合い、非常に見ごたえのあるエピソードでした。

つづく